今日は24節気の啓蟄にあたる。ちょっと難しい漢語だが、蟄というのは冬虫が寒さを避けて土のなかに身を隠している状態。それが啓かれて虫が地中を這い出して来る。体内に持った温度計で、一定の暖かさになるとこうした虫の動きがあるのだろう。この日に、松に巻いた菰を外して焼却すことが行われる。これは、松の幹に巻いた菰が土のような役割を果たしここの集まって越冬する。菰ごと焼却することで病害虫の退治ができる。
ひきがへる啓蟄の身を水に置き 木津 柳芽
啓蟄は春の初めの象徴として俳人に好まれ、よく使われる季語である。村上鬼城は「己が影慕うて這える地虫かな」と詠んで、啓蟄の虫を描写したが、同時に晩年耳が遠くなり孤独であった自身のおもかげを、この句に影絵のように写しこんでいる。今日の天気はうす曇り、陽ざしが通って暖かい。地中の虫が動き出すには絶好の陽気である。午後になって啓蟄にふさわしい写真を探しに戸外に出た。路傍の空き地の日当たりのよいところに、可憐なオオイヌノフグリがかたまって咲いていた。