季節が逆戻りしたような数日であったが、週
末から本格的な秋になるらしい。だが気温が
高いというだけで、足元を見ると秋はとっく
に始まっている。いや、もう深まりをみせて
いる。目をこらして、高い瀧山を見上げれば、
頂上付近は、樹々が色づいているのが分かる。
中国の洞庭湖は風光明媚で知られ、湘江と瀟
水が合わさって洞庭湖に流入するあたりは、
帝舜の死を追って二人の妃が入水して後を追
い、二人の女神となったことで有名。古来詩
人が好んで詩を詠む、格好の題材となった。
李白の詩に
洞庭湖西 秋月輝き
瀟湘江北 早鴻飛ぶ
酔客満船 白苧を歌う
知らず霜露の秋衣に入るを
早鴻は雁のこと。この詩を題材にして、後世
の画家は「瀟湘八景」を描いてきた。そのテ
ーマを記すと「平沙落雁」「遠甫帰帆」「山
市晴嵐」「江天暮雪」「洞庭秋月」「瀟湘夜
雨」「煙寺晩鐘」「漁村夕照」の八景である。
いかにも唐詩好みの組み合わせである。日本
に入ってきたこのテーマは「近江八景」など
日本の湖畔に移されて盛んに詠まれてきた。