孫たち一家がやってきたので、食後のデザー
して山形の果物を準備した。ブドウ(シャイ
ンマスカットとピオーネ)、桃、そして柿。
気をつかって彼らの好物を集めた。結果は皆
大喜びで準備していたものをすっかり平らげ
た。ギリシャの歴史家プルタークに、『食卓
歓談集』というのがある。あの『英雄伝』を
書いた著述家だ。当時の貴族たちは、頻繁に
宴会を開き、その席でウィットに富んだ談話
を楽しんでいた。そのため、宴会に参加する
人の数まで気にかけられた。あまり大人数に
なると話が全体にいきわたらなくなってしま
うからだ。
ある宴会で「なぜ秋には空腹になりやすいか」
ということが話題になった。真っ先にあげら
れた原因が果物であった。そして、その理由
づけが人によって異なった。ある人は、果実
が便通をよくして、腹が空になり、結果とし
て新鮮な食欲が起こる。また別の人は、果実
の味に口に快い酸味を帯びているために食欲
が起こる。食欲のない病人に果物を食べさせ
ると食欲がでるのはそのため。いやいや、そ
うではなく、人間の体内にある熱が原因して
いる、などなど議論百出である。話題は、そ
のときに百種千別、酒、恋、学問など実に幅
広い。こうして弾んだ会話が、当時の国の活
力のもとであったのかも知れない。