農作物にイノシシの被害が出ている。市内で
も東の山側で多いようだ。以前はイノシシの
生息の南限は福島県とされてきたが、温暖化
の影響で、宮城県へ広がり、宮城県から山形
へ侵入しているらしい。原発で居住が許され
なかった浪江町などの荒廃した田畑では、す
ざましい勢いで、イノシシの繁殖が見られる。
日帰り温泉でも、老後の楽しみに野菜作りを
している人たちが、イノシシの害にあってい
る。農作物の害だけで、人が襲われた形跡が
ないことがせめてものことである。
ところで干支の亥(イノシシ)は北に位置し、
水を象徴している。そのために火に強く、古
来、防火のお呪いとして、用いられてきた。
江戸の遊郭、吉原ではよく火事が出たので、
予防のためにイノシシが飼われた。游客のま
わりをイノシシがうろついていたらしい。あ
まり気持ちのいいものではなかったであろう。
柳原の土手の辺りで放し飼いをしていたのだ
が、そのおまじない甲斐もなく、天保8年10
月18日、吉原の大火が起こり、その一郭が全
焼した。
だが、そのような前例があるのも関わらず、
商家では幕末まで、この風習が受け継がれた。
麹町の伊勢八、尾張町の布袋屋などの豪商で
もイノシシが飼われていたという。江戸でイ
ノシシの肉を食べさせる店が繁盛したのは、
この風習と関係があるらしい。
猪の来る黍が夜風にさわぐなり 藤原たかを