今日は24節季の寒露にあたる。朝の冷気が一
段と増して、朝露が凍るかと思えるような気
候という意味である。ところが実際は、朝か
ら日がさし、畑の野菜たちへも溢れるような
暖気がそそがれている。寒露と呼ぶにふさわ
しい寒気がやってくるのは一週間ほどあとの
ことらしい。庭の柘榴にも光がいっぱい、色
づいてきた実がさらに大きくなって、裂ける
のを待っている。
話は変わるが、元気な旧友たちが、故郷でク
ラス会や同窓会を開いて、秋の故郷を思い出
す機会も増えてきた。
ラインなどのSNSが普及して、住んでいる場
所の距離間がどんどん無くなっていくような
気がする。ふと、昔歌った唱歌を思い出し、
日本人が共有していた距離感に懐かしさを感
じた。
更け行く秋の夜、旅の空の、
わびしき思いにひとりなやむ。
恋しやふるさと、なつかし父母、
夢じにたどるは、さとの家路。
更け行く秋の夜、旅の空の、
わびしき思いにひとりなやむ。
故郷を離れ、異郷の地で果てていった若い命。
夢を果たせないで失意のうちに果てていった多
くの失敗者。この唱歌はそれらの命への鎮魂の
歌である。技術革新で想像もできないほど近く
なった距離感。しかし心のなかに今も残る唱歌
の時代の距離感を失いたくない。