秋晴れになったが、少し気温が高い。台風が
暖かい空気を持ってきたためと思われる。知
人に庭になった柘榴をいただいた。落ち着い
た秋の色が懐かしい。妻は中から種を取り出
し、石榴酒をつくる準備を始めた。こんな秋
の色を見ると、山の紅葉を早く見たい。イン
スタグラムで山の写真を見てみると、月山や
蔵王の高いところでは紅葉が始まっているら
しい。
秋光に驚き裂けし柘榴かな 杉山 飛雨
井本農一の『良寛』を読了して、本棚にある
良寛の関連本を探してみた。瀬戸内寂聴『手
毬』、伊藤宏見『斎藤茂吉と良寛』、中野孝
次『良寛心のうた』、相馬御風『一茶と良寛
と芭蕉』、柳田聖山『良寛 漢詩で読む生涯
』など5冊の本が見つかった。長い年月の間
に買い集めたものだが、良寛はどこか、心に
ひっかかるものがあったらしい。とりあえず
次に読むものは『斎藤茂吉と良寛』だ。少し
ページを開いただけで、興味を引くところが
山ほどある。
秋の日に光りかがやくすすきの穂
これの高屋にのぼりてみれば 良寛
斎藤茂吉は、三句の終りを「ほ」という名詞
どめにして、どんなおおげさなことをいうか
と思えば、「これの高屋にのぼりてみれば」
というだけ。この辻褄の合わない子供らしい
言いぶりが、この歌を偉大ならしめた。と激
賞している。実作をしながら、良寛の歌に親
しんだ茂吉の解説である。
詩吟教室で良寛の歌を吟じている。
草枕夜ごとに変る宿りにも
結ぶは同じふるさとの夢 良寛
良寛は名主の家に生まれたが、18歳で出家し
て、備中の円通寺の国仙和尚に師事。ここを
出て諸国を行脚して修行に務めた。歌はこの
行脚の間に詠まれたものである。修行僧にと
っての懐郷の念は、浮世に生きる人々とはま
た違ったものであろうか。
昨日読んでいた本で、良寛が柘榴を詠んだ歌
が二首でてきた。村の農家から柘榴を貰い、
食べる様子が見てとれる。ここに記しておく。
くれなゐの七のたからを両手もて
おし戴きぬ人のたまもの
欠きて食べつみ裂きて食べ割りて食べ
さてその後は口を放たず
七の宝の仏教の七宝。金銀、瑠璃などに匹敵
するものとして柘榴をとらえ、おしいただい
ている。こんにちでは、酸っぱく種が硬いの
で食べる人もいないが、生食で口もはなさず
食べた様子をみると、いかに貴重な食べもの
であったかが分かる。