秋の寺の庭などで見かける晩秋の花ホトトギス。花に斑点があり、あまり花のない季節だけに、こんなところに、と見かけることが多い。鳥の名がついているが、花の斑点が時鳥と似ているためだ。鳥のホトトギスは、渡り鳥で5月の半ばに、卯の花が咲くころにやってきて、秋には暖かい南の国へ行っていなくなる。俳句や和歌に多く詠まれているが、その姿を愛でるのではなく、その鳴き声が初夏を告げるためであるようだ。この花が咲く頃には、鳥のホトトギスはもう鳴くのを止め、静かに海を渡っている。
この花は茶花として人気も高い。風流を好む人たちが、いなくなったホトトギスの淋しさを癒すため、この花を部屋に飾って楽しんだのかも知れない。次第に公園や庭の葉が紅葉してくる季節に、この花を見つけるとやはりどこか心楽しい思いがする。風流とはかけ離れた暮らしだが、霜が下りようとする季節の貴重な野草である。原産は東アジア、日本。因みに中国名は油点草。