菊花
2021年10月29日 | 花
先日、天童道の駅で菊花展の準備中であった。手塩にかけて咲かせた菊が競い、優秀な菊に市長賞などが贈られるにであろう。上山城では菊花展に加えて、菊人形も作られていたが、コロナのせいかこの催はなくなったそうだ。近い所では南陽の菊祭り、二本松の菊人形などが、人を集めるイベントになっている。
そもそも歌舞伎の役者が衣装に菊花をつけたことが初めらしいが、東京千駄木の団子坂の菊人形が始まりであった。役者に似せた面をつけ、衣装はすべて菊花。漱石の『三四郎』小屋掛けした舞台に、曽我の討ち入り場面で、十郎、五郎の兄弟の人形が飾られていた。三四郎と美根子が、この小屋で菊人形を見るシーンが出ている。こんな時代から、菊づくりの趣向は全国に広がり、色々な場所で見ることができる。コロナの感染も落ち着きを見せ、この秋は菊を観賞する菊花展が盛況を見せるのであろうか。
有る程の菊投げ入れよ棺の中 漱石
将来を嘱望された女性文人大塚楠緒子が35歳の若さで亡くなったことへの哀悼の句である。「投げ入れ入れよ」命令形を入れることで、その無念さを表現している。漱石は楠緒子の才能を惜しむと同時に、この女性に淡い恋心を抱いていたという噂話も流されていた。