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古典和歌をメインにブログを書いてます。歌題ごとに和歌を四季に分類。

「根差(ねざし)」用例

2015年12月20日 | 日本国語大辞典-な行

 「根差(ねざし)」という単語には「ねざすこと。地中に根をのばすこと。また、その根。」という語釈があり、日本国語大辞典・第二版では、『源氏物語』(1001-14年頃)の例が早いのですが、100年ほどさかのぼる用例があります。

為君(キミガタメ)根刺将求砥(ネザシモトムト)雪深杵(ユキフカキ)竹之園生緒(タケノソノフヲ)別迷鉋(ワケマドフカナ)
(新撰万葉集・巻之上・冬歌二十一首・191)
『新編国歌大観 第二巻 私撰集編 歌集』角川書店、1984年、182ページ


古典の季節表現 冬の恋

2015年12月19日 | 日本古典文学-冬

春宮より御つかひまいりぬときき給へれは、れいの心やましうて、いそきまいりてみ給へは、はは宮もこの御かたにて、御ふみこらんす。御つかひ宮のすけなるへし。女房の袖くちともよのつねなれて、いつつ物いいなとすめり。御ふみにはこほりかさねのうすやうにて、ゆきいたくつもりて、しこみこほりたるくれたけのゑたにつけさせ給へり。(略)
 たのめつついく夜へぬらんたけのはにふるしらゆきのきえかへるまて
御すすりの水いたうこほりけりとみえて、すみかれしたるいとあてにおかしけなり、(略)
(狭衣物語~諸本集成第二巻伝為家筆本)

十二月、つとめての歌とて、男のよませし
うちはへて涙にしきし片敷きの袖の氷ぞけふはとけたる
(和泉式部集~岩波文庫)

雪のいたう降りたる暁に、人の出で行く跡あるに、つとめていひやる
留めたる心はなくていつしかと雪の上なる跡を見しかな
(和泉式部続集~岩波文庫)

男の、雪の降る日出でけるを、隠るるまで見送りてよめる うき波の藤中納言女
頼め置くほどをいつともしら雪の待たで消(け)ぬべき今日の暮れかな
(風葉和歌集~岩波文庫「王朝物語秀歌選」)

女四のみこの常盤にまかれりけるに、はるばると見えわたれる池の面(おもて)に降り入る雪は、やがて氷に閉ぢ重なるも思ひよそへられければ 水無瀬川の新中納言
水の面にかつ氷りゆく白雪のいつまでとけぬ物を思はん
(風葉和歌集~岩波文庫「王朝物語秀歌選」)

初冬恋と云事を 権中納言俊忠
たまさかにあふことのはもかれぬれは冬こそ恋の恨なりけれ
(新続古今和歌集~国文学研究資料館HPより)

永仁五年閏十月後宇多院歌合に、冬恋 六条内大臣
水茎の岡の草ねのかり枕霜こそむすへ妹とねぬよは
(新千載和歌集~国文学研究資料館HPより)

こぬよのみとこにかさねてからころもしもさえあかすひとりねのそて
(西行・聞書集~日文研HPより)

女のもとより雪ふり侍ける日かへりてつかはしける 藤原道信朝臣
かへるさのみちやはかはるかはらねととくるにまとふ今朝の淡雪
明ぬれはくるゝものとはしりなから猶うらめしきあさほらけかな
(後拾遺和歌集~国文学研究資料館HPより)

内侍のかみに通ひ初めてのころ、心ならず夜がれして朝に 玉鬘の右大臣
心さへ空に乱れし雪もよにひとり冴えつる片敷きの袖
(物語二百番歌合~岩波文庫「王朝物語秀歌選」)

ひとり寝て恋ひあかしつる今宵しもいとど降りつむ雪のわびしさ
(天慶二年二月二十八日貫之歌合~日文研HPより)

女を親の取り込めて侍りけるに、忍びてまかりながら歎き明かして 笹分けし朝の関白
いかにせむ片敷きわぶる冬の夜の解くる間もなき袖のつららを
(風葉和歌集~岩波文庫「王朝物語秀歌選」)

冬恋 藤原基綱
袖こほる霜夜の床のさむしろに思ひ絶てもあかす比哉
(続古今和歌集~国文学研究資料館HPより)

かたしきのそてのこほりもむすほほれとけてねぬよのゆめそみしかき
(正治二年初度百首~日文研HPより)

冬の夜の恋をよめる 藤原国房
思ひ侘かへす衣のたもとよりちるやなみたのこほりなるらん
(後拾遺和歌集~国文学研究資料館HPより)

冬恋 定家朝臣
床の霜枕の氷きえわひぬむすひもをかぬ人のちきりに
(新古今和歌集~国文学研究資料館HPより)

冬恋といへる事を 藤原成通朝臣
水のうへにふる白雪のあともなく消やしなまし人のつらさに
(金葉和歌集~国文学研究資料館HPより)

女の行方知らずなりて侍りける古里に、雪の降る日、ひぐらしながめて帰るとてよめる かはほりの少将
尋ぬべき方もなくてぞ帰りぬる雪ふるさとに跡も見えねば
(風葉和歌集~岩波文庫「王朝物語秀歌選」)

忍びたる男の、しはすばかりに、こと女に定まるべしと聞きて遣はしける 露の宿りの修理大夫女
ひま漏りしことだに絶えて忘れ水氷閉ぢめむほどぞ悲しき
(風葉和歌集~岩波文庫「王朝物語秀歌選」)

大将心変れるさまに侍りければ、ほかに移ろひ給ふに、懸樋(かけひ)の水の氷り閉ぢたりければ 葎の宿の女院
住みわびて宿の主(あるじ)もあくがれぬ懸樋の水も絶えざらめやは
(風葉和歌集~岩波文庫「王朝物語秀歌選」)


「冬の日」用例

2015年12月18日 | 日本国語大辞典-は行

 「冬の日」という用語には「冬の、鈍く弱々しくさす太陽。」という語釈があり、日本国語大辞典・第二版では、俳諧『笈の小文』(1690-91年頃)からの例が添えられていますが、さらに、300~400年ほどさかのぼる用例が複数あります。以下新しい順にあげます。

時雨れ行く雲まによはき冬の日のかげろひあへずくるゝ空哉(巻第八・冬、734、藤原為相)
岩佐美代子『風雅和歌集全注釈・上巻(笠間注釈叢刊34)』笠間書院、2002年、513ページ

文保百首歌奉りける時 //芬陀利花院前関白内大臣 //はれくもり/まなくしくるゝ/冬の日の/影さたまらて/くるゝ空かな //
(続後拾遺和歌集巻第六・00414)~国文学研究資料館HPの二十一代集データベースより
(ちなみに同一作者の文保百首和歌には、かなりの異同があり、日文研の和歌データベースでは「はれくもり-あかすしくるる-ふゆのひの-ひかりすくなく-くるるそらかな 」となっています。)

冬の日の影ともばかりかつきえてかたへこほれる庭の白雪(38・文保百首、法印定為、冬十五首、3063)
『新編国歌大観 4 私家集編2、定数歌編 歌集』角川書店、1986年、536ページ

はれくもり雲間にうつる冬の日のはやく過ぎぬる村時雨かな(37・嘉元百首、権大納言局/藤原為世女、2650)
『新編国歌大観 4 私家集編2、定数歌編 歌集』角川書店、1986年、504ページ


「笹竹」用例

2015年12月17日 | 日本国語大辞典-さ行

 「笹竹」という単語の用例は、日本国語大辞典・第二版では、俳諧『虚栗』(1683年)からの例が早いのですが、かなりさかのぼる用例が複数あります。

海原や波まにみゆるささ竹の一葉ばかりのあまの釣舟
(34・洞院摂政家百首、雑、眺望五首、1685)
『新編国歌大観 第四巻 私家集編2、定数歌編 歌集』角川書店、1986年、368ページ

ささたけの野べのふるみちまよふとも雪ふみならしとふ人もがな
(228・院御歌合 宝治元年、野外雪、144)
『新編国歌大観 第五巻 歌合編 歌集』角川書店、1987年、611ページ

冬衣
宮人の衣にすれるさゝ竹は雪にやさやくおみのうら風
(50・正徹4・草根集、5255)
和歌史研究会編〔『私家集大成 5巻(中世3)』明治書院、1983年、683ページ


「たまはやす〔枕詞〕」用例

2015年12月16日 | 日本国語大辞典-た行

 「たまはやす」という単語は枕詞で、地名「武庫(むこ)」にかかります。日本国語大辞典・第二版では「用例は、『万葉集』一七・三八九五「多麻波夜須(タマハヤス)武庫の渡りに天伝(あまづた)ふ日の暮れゆけば家をしそ思ふ〈作者未詳〉」一例のみ」とありますが、別の用例もあります。

さえさえてちるや霰の玉はやすむこの浦風波にしくめり
(巻第四百二・大永六年内裏御屏風和歌、下帖、堯空、冬)
『続群書類従・第十五輯上(訂正三版)』続群書類従完成会、1979年、21ページ