ジューンベリーに忘れ物

シンボルツリーはジューンベリー
どこかに沢山の忘れ物をしてきた気がして

D I A R Y 24年8月

2024-09-14 12:15:40 | つぶやき
  8月 某日 ①

 暑い日が続いていても、無性にラーメンが食べたくなる。
丁度、コーヒー豆も切れる頃だったので、
「室蘭のスタバまで行くついでに」
と、元祖室蘭ラーメンと称する『清洋軒』へ行くことにした。
 「そこの塩ラーメンが大好き!」。

 家内を誘い、猛暑の昼下がり、
室蘭の市街地からはやや離れた、
町外れの一角にあるその店に行った。

 当地も室蘭も、ラーメン店は家族経営が多い。
ここも老夫婦と息子で切り盛りしているが、
最近はご主人の姿がなく、老いた母と息子だけ。

 駐車場は2台がやっとのスペースで、
私はいつも路駐である。

 店の近くまで行くと、
珍しく、道の両側に路駐が5台もあった。
 店内は,カウンター7席とテーブル席1つで、
11人で満席になる。
 案の定、店に入れない客が6人も、
暖簾の外に並んでいた。

 驚いて、路駐の車を見ると、
3台がレンタカーだと分かった。
 きっと旅行ガイドなどで紹介されたのだと思った。

 待ち時間30分を覚悟し、列に並ぶことにした。
話し声と雰囲気で、前に立っている方々が、
アジア系の外国人だと分かった。
 そして、店内で食べている人も同じ仲間だと推測できた。
町外れのこの店で、外国人と一緒になるのは初めてだった。
 インバウンドがここまで広がっていることにも驚いた。

 さて、予想通り30分後、
テーブル席に座った私たちにやっとラーメンが届いた。
 カウンター席では、アジア系の方が7人、
自国語で会話しながら、のんびりとラーメンを食べていた。

 待ちに待った塩ラーメンを食べながら、
彼らの様子が気になった。
 すぐそばの女性は、箸が進まないようだった。
少し食べては、コショウをふったり、
ニンニクを加えたりしていた。  

 その隣りも、少し食べては箸を止め、
また少しといった具合だった。
 きっと口に合わないのだと思った。

 どこの国かは分からないが、
濃い味に慣れているのなら、
このラーメンの薄味は物足りないのかも知れない。

 そう思いながら、私は「相変わらず美味しい!」と、
音を立てながらラーメンをすすった。
 ふっと、気づくと向かい席の家内も、
美味しそうに音を立てながらラーメンを食べていた。

 でも、カウンター席の7人からは、
すする音が聞こえてこなかった。
 ゆっくりゆっくりしか食べていないことに納得した。

 それにしても、市街地から離れたラーメン店まで、
レンタカーで乗り付け、食べたラーメンの味は、
どうだったのだろう。
 あの様子から推測すると、 
「ううーん! 残念!」と言うところだろうか・・・。 


  8月 某日 ②

 芦別で、家内の両親が眠るお墓参りを済ませた翌日、
W市で大学時代の友人とパークゴルフをした。

 昨年、彼とは私の街で一緒にパークゴルフを楽しんだ。
そのお返しで、今回は彼の住まいがある地でとなったのだ。

 昨年は、地の利で私たち2人が勝ったが、
今回は彼のリベンジであった。

 さて、ラウンド後は市内のホテルでランチを予定していた。
ところが、行ってみるとレストランはお盆休み。

 そこで、車をホテルの駐車場に置いたまま、
市街を散策し、適当な食事処を探すことにした。

 ここは大学4年間を過ごした街である。
家内は同窓会で何度か来ていたが、
私がここを歩くのは大学卒業以来であった。

 歩いてみると、街は長い時間が流れて、
大きく変化していた。
 友人に、デパートのあった場所を尋ねた。
よくお酒を飲んで盛り上がった炉端焼きの居酒屋の場所も訊いた。
 冬のバイト先だった郵便局も・・・。
もやしと味噌の味が大好きだったラーメン屋も・・・。
 次々と知りたかった。

 そして、歩きながらふっと思い出したのが、
新入生歓迎コンパや卒業コンパで使った店だった。

 大学卒業後も彼は、マイホームをこの地に構えていた。
時には異動で離れた時期もあったが、多くをここで過ごしている。
 私の問いに、懐かしさを込めながら応じてくれた。

 そして、
「そうだ! コンパで使ったあの店だけど、
 今は,別の場所でレストランをやっているんだ。
あの頃と同じCという名前でね。
 そこで、ランチにしようよ!」。

 もう半世紀以上も忘れていた『C』の名前だった。
「今度のコンパも、Cで5時からです」
 そんな連絡が、50年ぶりに脳裏に蘇った。

 早速、そのレストランへ向かった。
私が知っているコンパ会場『C』は、
通りから直接2階へ行くことができた。
 そして、現在の『C』は3階建ての小洒落たビルの2階にあった。

 まったく様変わりしていたが、
ここも通りから直接階段で2階へ行けた。
 そんな共通項に気づいただけで嬉しくなった。

 お盆休みも手伝ってと閑散とした街中だったが、
それに反して店内は混み合っていた。
 私たちの3人席だけが空いていた。
豊富なメニューから3人ともカレーライスをオーダーした。

 やや時間をおいて届いたその盛りの多さに、
3人で目を丸くした。
 毎日、空腹感で過ごした学生時代、
『C』で出された盛りのいいコンパ料理を思い出した。

 あの頃と同じで、味も良かった。
だけど、明らかに私の方が違っていた。
 食後のコーヒーを持ってきた店員さんに、正直に言った。
「若い頃に食べた『C』と同じで、すごく美味しかったです。
でも、もうあの頃のようには食べられなくなりました。
 残してごめんね」。
店員さんは笑顔で、私と同じように食べ残した
家内のものも一緒にさげてくれた。 
 懐かしい時間が流れていた。




         秋   空
              ※次回のブログ更新予定は9月28日(土)です  

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