8月 某日 ①
暑い日が続いていても、無性にラーメンが食べたくなる。
丁度、コーヒー豆も切れる頃だったので、
「室蘭のスタバまで行くついでに」
と、元祖室蘭ラーメンと称する『清洋軒』へ行くことにした。
「そこの塩ラーメンが大好き!」。
家内を誘い、猛暑の昼下がり、
室蘭の市街地からはやや離れた、
町外れの一角にあるその店に行った。
当地も室蘭も、ラーメン店は家族経営が多い。
ここも老夫婦と息子で切り盛りしているが、
最近はご主人の姿がなく、老いた母と息子だけ。
駐車場は2台がやっとのスペースで、
私はいつも路駐である。
店の近くまで行くと、
珍しく、道の両側に路駐が5台もあった。
店内は,カウンター7席とテーブル席1つで、
11人で満席になる。
案の定、店に入れない客が6人も、
暖簾の外に並んでいた。
驚いて、路駐の車を見ると、
3台がレンタカーだと分かった。
きっと旅行ガイドなどで紹介されたのだと思った。
待ち時間30分を覚悟し、列に並ぶことにした。
話し声と雰囲気で、前に立っている方々が、
アジア系の外国人だと分かった。
そして、店内で食べている人も同じ仲間だと推測できた。
町外れのこの店で、外国人と一緒になるのは初めてだった。
インバウンドがここまで広がっていることにも驚いた。
さて、予想通り30分後、
テーブル席に座った私たちにやっとラーメンが届いた。
カウンター席では、アジア系の方が7人、
自国語で会話しながら、のんびりとラーメンを食べていた。
待ちに待った塩ラーメンを食べながら、
彼らの様子が気になった。
すぐそばの女性は、箸が進まないようだった。
少し食べては、コショウをふったり、
ニンニクを加えたりしていた。
その隣りも、少し食べては箸を止め、
また少しといった具合だった。
きっと口に合わないのだと思った。
どこの国かは分からないが、
濃い味に慣れているのなら、
このラーメンの薄味は物足りないのかも知れない。
そう思いながら、私は「相変わらず美味しい!」と、
音を立てながらラーメンをすすった。
ふっと、気づくと向かい席の家内も、
美味しそうに音を立てながらラーメンを食べていた。
でも、カウンター席の7人からは、
すする音が聞こえてこなかった。
ゆっくりゆっくりしか食べていないことに納得した。
それにしても、市街地から離れたラーメン店まで、
レンタカーで乗り付け、食べたラーメンの味は、
どうだったのだろう。
あの様子から推測すると、
「ううーん! 残念!」と言うところだろうか・・・。
8月 某日 ②
芦別で、家内の両親が眠るお墓参りを済ませた翌日、
W市で大学時代の友人とパークゴルフをした。
昨年、彼とは私の街で一緒にパークゴルフを楽しんだ。
そのお返しで、今回は彼の住まいがある地でとなったのだ。
昨年は、地の利で私たち2人が勝ったが、
今回は彼のリベンジであった。
さて、ラウンド後は市内のホテルでランチを予定していた。
ところが、行ってみるとレストランはお盆休み。
そこで、車をホテルの駐車場に置いたまま、
市街を散策し、適当な食事処を探すことにした。
ここは大学4年間を過ごした街である。
家内は同窓会で何度か来ていたが、
私がここを歩くのは大学卒業以来であった。
歩いてみると、街は長い時間が流れて、
大きく変化していた。
友人に、デパートのあった場所を尋ねた。
よくお酒を飲んで盛り上がった炉端焼きの居酒屋の場所も訊いた。
冬のバイト先だった郵便局も・・・。
もやしと味噌の味が大好きだったラーメン屋も・・・。
次々と知りたかった。
そして、歩きながらふっと思い出したのが、
新入生歓迎コンパや卒業コンパで使った店だった。
大学卒業後も彼は、マイホームをこの地に構えていた。
時には異動で離れた時期もあったが、多くをここで過ごしている。
私の問いに、懐かしさを込めながら応じてくれた。
そして、
「そうだ! コンパで使ったあの店だけど、
今は,別の場所でレストランをやっているんだ。
あの頃と同じCという名前でね。
そこで、ランチにしようよ!」。
もう半世紀以上も忘れていた『C』の名前だった。
「今度のコンパも、Cで5時からです」
そんな連絡が、50年ぶりに脳裏に蘇った。
早速、そのレストランへ向かった。
私が知っているコンパ会場『C』は、
通りから直接2階へ行くことができた。
そして、現在の『C』は3階建ての小洒落たビルの2階にあった。
まったく様変わりしていたが、
ここも通りから直接階段で2階へ行けた。
そんな共通項に気づいただけで嬉しくなった。
お盆休みも手伝ってと閑散とした街中だったが、
それに反して店内は混み合っていた。
私たちの3人席だけが空いていた。
豊富なメニューから3人ともカレーライスをオーダーした。
やや時間をおいて届いたその盛りの多さに、
3人で目を丸くした。
毎日、空腹感で過ごした学生時代、
『C』で出された盛りのいいコンパ料理を思い出した。
あの頃と同じで、味も良かった。
だけど、明らかに私の方が違っていた。
食後のコーヒーを持ってきた店員さんに、正直に言った。
「若い頃に食べた『C』と同じで、すごく美味しかったです。
でも、もうあの頃のようには食べられなくなりました。
残してごめんね」。
店員さんは笑顔で、私と同じように食べ残した
家内のものも一緒にさげてくれた。
懐かしい時間が流れていた。
秋 空
※次回のブログ更新予定は9月28日(土)です
暑い日が続いていても、無性にラーメンが食べたくなる。
丁度、コーヒー豆も切れる頃だったので、
「室蘭のスタバまで行くついでに」
と、元祖室蘭ラーメンと称する『清洋軒』へ行くことにした。
「そこの塩ラーメンが大好き!」。
家内を誘い、猛暑の昼下がり、
室蘭の市街地からはやや離れた、
町外れの一角にあるその店に行った。
当地も室蘭も、ラーメン店は家族経営が多い。
ここも老夫婦と息子で切り盛りしているが、
最近はご主人の姿がなく、老いた母と息子だけ。
駐車場は2台がやっとのスペースで、
私はいつも路駐である。
店の近くまで行くと、
珍しく、道の両側に路駐が5台もあった。
店内は,カウンター7席とテーブル席1つで、
11人で満席になる。
案の定、店に入れない客が6人も、
暖簾の外に並んでいた。
驚いて、路駐の車を見ると、
3台がレンタカーだと分かった。
きっと旅行ガイドなどで紹介されたのだと思った。
待ち時間30分を覚悟し、列に並ぶことにした。
話し声と雰囲気で、前に立っている方々が、
アジア系の外国人だと分かった。
そして、店内で食べている人も同じ仲間だと推測できた。
町外れのこの店で、外国人と一緒になるのは初めてだった。
インバウンドがここまで広がっていることにも驚いた。
さて、予想通り30分後、
テーブル席に座った私たちにやっとラーメンが届いた。
カウンター席では、アジア系の方が7人、
自国語で会話しながら、のんびりとラーメンを食べていた。
待ちに待った塩ラーメンを食べながら、
彼らの様子が気になった。
すぐそばの女性は、箸が進まないようだった。
少し食べては、コショウをふったり、
ニンニクを加えたりしていた。
その隣りも、少し食べては箸を止め、
また少しといった具合だった。
きっと口に合わないのだと思った。
どこの国かは分からないが、
濃い味に慣れているのなら、
このラーメンの薄味は物足りないのかも知れない。
そう思いながら、私は「相変わらず美味しい!」と、
音を立てながらラーメンをすすった。
ふっと、気づくと向かい席の家内も、
美味しそうに音を立てながらラーメンを食べていた。
でも、カウンター席の7人からは、
すする音が聞こえてこなかった。
ゆっくりゆっくりしか食べていないことに納得した。
それにしても、市街地から離れたラーメン店まで、
レンタカーで乗り付け、食べたラーメンの味は、
どうだったのだろう。
あの様子から推測すると、
「ううーん! 残念!」と言うところだろうか・・・。
8月 某日 ②
芦別で、家内の両親が眠るお墓参りを済ませた翌日、
W市で大学時代の友人とパークゴルフをした。
昨年、彼とは私の街で一緒にパークゴルフを楽しんだ。
そのお返しで、今回は彼の住まいがある地でとなったのだ。
昨年は、地の利で私たち2人が勝ったが、
今回は彼のリベンジであった。
さて、ラウンド後は市内のホテルでランチを予定していた。
ところが、行ってみるとレストランはお盆休み。
そこで、車をホテルの駐車場に置いたまま、
市街を散策し、適当な食事処を探すことにした。
ここは大学4年間を過ごした街である。
家内は同窓会で何度か来ていたが、
私がここを歩くのは大学卒業以来であった。
歩いてみると、街は長い時間が流れて、
大きく変化していた。
友人に、デパートのあった場所を尋ねた。
よくお酒を飲んで盛り上がった炉端焼きの居酒屋の場所も訊いた。
冬のバイト先だった郵便局も・・・。
もやしと味噌の味が大好きだったラーメン屋も・・・。
次々と知りたかった。
そして、歩きながらふっと思い出したのが、
新入生歓迎コンパや卒業コンパで使った店だった。
大学卒業後も彼は、マイホームをこの地に構えていた。
時には異動で離れた時期もあったが、多くをここで過ごしている。
私の問いに、懐かしさを込めながら応じてくれた。
そして、
「そうだ! コンパで使ったあの店だけど、
今は,別の場所でレストランをやっているんだ。
あの頃と同じCという名前でね。
そこで、ランチにしようよ!」。
もう半世紀以上も忘れていた『C』の名前だった。
「今度のコンパも、Cで5時からです」
そんな連絡が、50年ぶりに脳裏に蘇った。
早速、そのレストランへ向かった。
私が知っているコンパ会場『C』は、
通りから直接2階へ行くことができた。
そして、現在の『C』は3階建ての小洒落たビルの2階にあった。
まったく様変わりしていたが、
ここも通りから直接階段で2階へ行けた。
そんな共通項に気づいただけで嬉しくなった。
お盆休みも手伝ってと閑散とした街中だったが、
それに反して店内は混み合っていた。
私たちの3人席だけが空いていた。
豊富なメニューから3人ともカレーライスをオーダーした。
やや時間をおいて届いたその盛りの多さに、
3人で目を丸くした。
毎日、空腹感で過ごした学生時代、
『C』で出された盛りのいいコンパ料理を思い出した。
あの頃と同じで、味も良かった。
だけど、明らかに私の方が違っていた。
食後のコーヒーを持ってきた店員さんに、正直に言った。
「若い頃に食べた『C』と同じで、すごく美味しかったです。
でも、もうあの頃のようには食べられなくなりました。
残してごめんね」。
店員さんは笑顔で、私と同じように食べ残した
家内のものも一緒にさげてくれた。
懐かしい時間が流れていた。
秋 空
※次回のブログ更新予定は9月28日(土)です
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