ジューンベリーに忘れ物

シンボルツリーはジューンベリー
どこかに沢山の忘れ物をしてきた気がして

早 朝 、 夢 見 る

2024-08-17 12:20:01 | つぶやき
 3ヶ月前からになるだろうか、
就寝前にカモミールの入ったハーブティーを飲み始めた。 
 安眠効果があると聞き、半信半疑で試してみた。
「効果てきめん!」と言い切れないが、
グッスリと眠れているようで続けてきた。

 そのためかどうか、
最近、早朝によく夢を見るようになった。
 昔を思い出すような懐かしいものもあれば、
時には、切なくなるようなものもある。
 目覚めた後に思い出せるのは、
決まって後者である。
 2つ記す。

  ① 熱中症!
 先週土曜日に自治会主催の『夏まつり』があった。
朝から快晴で、今夏一番の暑さの日だった。

 夕方開催のイベントだが、
午前10時半から準備を始めた。
 役員や有志など約40人で、
強い日差しの下、櫓や子供縁日、販売所の設営、
そして、串焼きや焼きそばの調理にと頑張った。

 準備前の打ち合わせ会冒頭に、
自治会長の私は挨拶で、こう訴えた。

 「今、一番危惧しているのは熱中症です。
是非小まめに水分補給をお願いします。
 そして、特に屋外での準備の方は、
定期的に会館内に入って、
エアコンの効いた所で休憩をとってください」。
 祈るような想いであった。

 その後、どの人も黙々と準備を始めた。 
私は、様々な指示や相談に応じながら、
時間を見ては、カゴに冷えたペットボトルを入れ、
水分補給を勧めて回った。

 串焼きや焼きそばで、炭火の前に立つ人たちは、
次々と手を伸ばし、カゴからペットボトルを取った。
 
 会場にブルーシートを敷き、長テーブルを置く人たちも、
同様に水分を求めた。

 エアコンのある会館内で、焼きそばのパック詰めをする女性陣も
冷えた飲み物に手を伸ばした。

 どんどん水分消費が進んだ。
何度も、急いで追加を買いに行って貰った。
 やがて、「塩飴」で塩分補給をした方がいいと声が上がった。
それもコンビニへと車を走らせた。

 全ての準備に見通しが付いた4時過ぎ、
暑さも一区切りがついた。
 気がかりだった「熱中症」も、やっと脳裏から消えた。

 「夏まつり」は、昨年同様4百人近い参加者で賑わい、
楽しく進み、予定通り7時過ぎに終えることができた。
 その後、後始末と役員の簡単な慰労会を終え、
9時前にはみんな帰宅した。
 できなかった後片付けは、翌日8時からと決めた。

 さて、カモミール入りのお茶と疲労で、
グッスリ眠った翌朝だった。
 早々と「夏まつり」会場の後片付けをしている夢を見た。

 毎年、翌朝の片付けに集まる面々で、
手際よく盆踊りの櫓から太鼓やスピーカーを降ろし、
会館の物置きに仕舞い込んだりしていた。
    
 昨日同様、猛烈な暑さの朝だった。
そこへ、散歩途中の若いパパがベビーカーを押してやって来た。
 男性は、夏まつりに参加し、「楽しかった」とお礼を言った。

 そして、私たちが片付けに動き回っているのを見て、
「手伝います!」と、
会場の片隅にベビーカーを置いて一緒に動き始めた。

 若い男性の仕事ぶりは、私たちとは違った。
キビキビしていて俊敏、その上力強かった。
 30分、いや1時間が過ぎただろうか。
若い力が1人加わったおかげで、
思いの外作業は早く終了した。

 男性は、ベビーカーへ戻った。
「どうしたの? Uちゃん! どうしたの?」
 男性の声は、異変を伝えていた。

 すぐにピンときた。
「誰か、救急車を!」
 炎天下のベビーカーの中で、グッタリとしている幼子を見た。
『昨日は、あんなに熱中症を警戒したのに・・』
 暗くつぶやきながら、私の至らなさをしきりに悔やんだ。

 夢は、そこで醒めた。
パジャマは全身の汗でグッショリ濡れていた。
 夢とは言え、詰めの甘い私の姿に気持ちは沈んでいた。
しばらくして、やっと夢でよかったと思えた。


  ② 「一歩一歩進めば!」 
 槍ヶ岳山荘に大きなリュックを置き、
水とヤッケ、タオルを入れたナップザックを背負い、登り始めた。
 アタックしているのは、槍ヶ岳の頂上だ。
  
 30代の頃、登頂経験があった。
しかし、年齢が年齢である。
 山荘まででもハードな山登りだった。
早朝、上高地を出発し、やっとここまでたどり着いたのだ。
 パートナーは、なぜか先日孫と一緒に伊達に来た二男。 

 ここから山頂まで30分程度の行程だ。
もう少しである。
 しかし、全ての経路は鉄梯子と鎖を握ってのもの・・・。
急登の連続、その上滑落の危険も伴った。 

 鉄梯子にしがみつきながら進んだ。
途中でふと足元を見た。
 真下は、全身が凍えるような急斜面の崖だった。

 足が止まった。
次の梯子へ足が動こうとしなかった。
 膝がガクガクと小刻みに震えた。

 先導の二男との間が離れた。
反対に、後ろからの登山者がもう足元に迫っていた。
 追い越しなどできない急登路である。

 「登るしかない」と分かっていた。
でも、あまりにもすごい高所なのだ。
 若い頃の景色とは全然違った。
恐怖心を押さえることができず、
私は立ちすくんでしまった。

 突然、入学前の二男も一緒に家族登山をした日が蘇った。  
中々目的地に着かず、泣き出した二男を
「一歩一歩進めば、必ず着くから!」
と私は励ましていた。 

 「そうだ。こんな時こそ一歩一歩だ!」
大きく深呼吸し、鉄梯子を握った手に力を入れ、
梯子の足を一段上へかけた。
 その時、先を行く二男から声が降ってきた。
「一歩一歩進めば、必ず着くから!」
 
 夢は、そこで醒めた。
目覚めると、確かに高齢の私がベッドに寝ていた。
 「もう、そんな歳か!」
小さくつぶやいた。 




     夏草茂る 気門別川

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