ジューンベリーに忘れ物

シンボルツリーはジューンベリー
どこかに沢山の忘れ物をしてきた気がして

DATE 語 録 (3)

2022-10-29 12:00:52 | 北の湘南・伊達
 当地で一番大きなイベント会場は、
『だて歴史の杜カルチャーセンター』大ホールである。
 座席数は約1000だ。

 人口3万少々の地方都市のその会場には、
年に数回、演劇や音楽の公演がやってくる。
 その公演を招致するのは、
主に私も会員になっている『伊達メセナ』である。

 会員の特典として、チケットの優先販売がある。
先日行われた小椋佳のコンサートも、
それを使って前列の席を確保した。

 それにしても、都会とは大違い・・。
その会場での公演の多くは、午後6時半に開演する。
 なので、私は、いつもよりやや早い夕食を摂り、
車で5分もかからず、会場近くの駐車j場へ。
 会場着席まで15分もあれば十分。

 電車と徒歩で会場入りまで、
1時間以上かかる都心のホールとは全く違う便利さだ。

 さて、久しぶりの小椋佳サウンドに、
心が揺れた。
 もうラブソングなんて無縁と思っていたが、
どうやら年齢の方が、無関係のようだ。

 会場で聴いた78歳になる声の『めまい』『揺れるまなざし』が
耳から離れない。
 「ときめき・・!」。
ちょっと面はゆいが、
まだしばらくは大事にしたいと感じた。

 そろそろ本題に入る。
伊達に移住して10年が過ぎた。
 数々の出会い、エピソードがあった。
それを思い出すまま、語録として綴る。
 その3回目である。


 4.超 高 齢 者

  ① 今 も 散 歩
 5年前まで、家内と一緒の朝ランは、
自宅前を6時半にスタートした。
 嘉右衛門坂通りを下りはじめて5分もしない辺りで、
反対側の歩道を散歩する女性と、よく出会った。

 見かけると私たちは、すぐに「おはようございます」と、
声をかける。
 すると、その方は、私たちを確認してから、
右手を高く挙げ、朝の挨拶を返してくれた。

 当初は、名前も住まいも分からなかった。
だから、家内とは「手を挙げるおばさん」と言っていた。

 私たちの朝ランも次第に不規則になった。
冬やコロナで、走る頻度も減った。
 だから、その方と出会うことが無くなってしまった。

 もう3年も会っていなかったろうか。
春先のことだ。
 お昼時に、家内と自宅前の歩道を掃除していた。
すると、似た歩き格好の方が、
嘉右衛門坂通りを進んできた。
 
 家内が手を振った。
私たちに気づくと、ゆっくりとその方は近づいてきた。
 「あら~、久しぶりですね」。
家内とは何回か言葉を交わしたことがあるらしい。
 でも、随分とフレンドリーな感じ・・。
 
 その方は、続けた。
「今も走っていらっしゃるのですか。
私は朝は止めて、昼間時々、こうしてゆっくり歩いているの」。
 「毎日ではないけれど、時々は走ってます。
お元気でしたか」。
 家内は訊いた。

 「一応、元気ですよ。
脳梗塞で病院に運ばれたこともありましたが、今はもう大丈夫。
 でも、私も歳だから・・、いつ、どうなるか・・」。

 「お幾つになられましたか?」。
私が口をはさんだ。
 「もう93ですよ」。

 ビックリした。
急いで逆算した。
 「手を挙げるおばさん」と言っていた頃には、
もう85歳を越えていたことになる。
 
 さて、その年齢になった私に、
『手を挙げる』あの元気があるだろうか。
 ただただ「あやかりたい!」と願った。


 ② 今 も 運 転 
 それはゴルフからの帰り、
その交差点を左折すると自宅に到着する所でのことだ。

 6,7名の人が集まっていた。
そして、交差点の先で1台の乗用車が、
歩道の縁石に車輪をのり上げて、停止していた。

 自宅に車を止め、その場へ急いだ。
反対側の車線に、高所作業車と同じカラーの車が駐車していた。
 その作業員らが、乗り上げた車からジャッキを取り出し、
縁石から車を移動させようとしていた。

 幸い人手は足りていた。
作業員らは、キビキビとタイヤの下に厚い板を挟んでいた。

 ハンドルを切り間違えての事故だと思った。
ドライバーを探した。
 忙しく動いている作業員のそばに、
腰の折れ曲がった男性が、前かがみのままでいた。
 まさかと思ったが、
車の後ろには色あせた『もみじマーク』が張ってあった。

 車を縁石から動かす準備ができた。
作業員がその老人に運転を促した。
 「いや、無理です。
もう91になる。車を動かすのも頼みます」。
 その老人は、小さく言った。

 作業員の1人が黙って運転席に座り、ハンドルを握った。
ゆっくりと縁石から車を移動させた。

 歩道から車道へ移った車には大きな傷もなかった。
その安堵とは別に、91歳のドライバーへの不安は膨らんだ。
 いつまで運転するのだろう・・?
誰か免許を返納させることはできないのか。


 5.「今朝も散歩ですか」
 夏から秋へ、季節の移ろいがやけに早い。
一日一日、山々には赤みが加わり、
街路樹の紅葉がどんどん進む。
 春とはおもむきを変えた秋ならではの美しさが目を惹く。
散歩する歩調も、つい緩んでしまう。
  
 そんな朝、アヤメ川自然公園入口の道路脇に立ち止まり、
散歩する私を見ている方がいた。
 真っ白な愛犬と一緒だが、顔に見覚えがなかった。

 近くまで行くと、挨拶を交わす間もなく声をかけられた。
「今朝も散歩ですか?」。
 突然の問いに、私はやや驚きながら、
「アッ、ハイ」と応じた。

 「いつも走ってましたよね?」
再び驚きながら、また、
「アッ、ハイ」と応じた。

 その方は明るい表情で会釈をすると、
すぐに愛犬と一緒に公園の木道へ消えていった。
 一方の私は、散歩を続けながら、
不思議な気分を引きずったまま・・。
 「見覚えのない顔だが」と、ブツブツ、ブツブツ・・・。




   街路樹の『山法師』が真っ赤っか

コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 初めての 頼まれごと | トップ | 学校の移り変わり ここにも »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

北の湘南・伊達」カテゴリの最新記事