
ツタヤに行ったら、映画「おくりびと」のオリジナルシナリオが平積みされているのが目に入った。映画化された最終シナリオとどう違うのか興味が湧いたので、買って帰り、さっそく読んでみた。小山薫堂さんの後書きによると6回書き直したそうだが、正直なところ、やはり映画化されたシナリオの方が全体的によく練り上げられているような気がした。映画化されたシナリオと異なる点をいくつか上げてみると、登場人物では、NKエージェントの佐々木社長の若い妻が登場する。逆に大悟の同級生である、銭湯のツヤ子さんの息子は登場しない。エピソードもいくつか異なっている。大悟が故郷の山形に帰るきっかけは楽団の解散ではなく、大悟自身が音楽家として才能の限界を感じたからとなっている。たしかにこんな内面的な挫折というのは映像化しにくいので、楽団の解散という分かりやすい話に変えたのだろう。大悟の初仕事となる独居老婆の納棺も火災事故ということになっているが、これなども黒焦げの死体はさすがに映像化しにくかったのだろう。映画でも納棺の時間に遅れて到着するエピソードがあるが、オリジナルシナリオでは途上で雪道でスリップし脱輪するという、エピソードが描かれているが、映画ではそこは削除され、大した遅れでもないのに怒るという遺族の微妙な心情を描いている。その他の納棺の場面も設定が変わっているようだ。その他、大悟と妻・良子(映画では美香)のラブシーンなどは滝田監督のたっての希望で入れたらしい。ともあれ、シナリオが映画化されていく段階で、どう変わっていくかが少し分かったようで面白かった。