
先週土曜日の深夜、映画「ショコラ」を放送していたので久しぶりに見た。スウェーデン人のラッセ・ハルストレム監督の作品はどれも好きなのだが、中でも「ギルバート・グレイプ」とこの「ショコラ」が特に好きだ。「ギルバート・グレイプ」は1993年の映画だが、現代アメリカ中西部の田舎町で閉塞感に苛まれながら暮らす人々を描いていたのに対し、この「ショコラ」は1950年代のフランスのある小さな村に風変わりな母娘がやって来て、チョコで村人の閉ざされた心を開いていくというメルヘンチックな物語。これまで食べ物をモチーフとした作品は沢山あるが、僕はこの「ショコラ」と「バベットの晩餐会」が出色だと思う。それはさておき、この「ショコラ」の出演俳優たちが素晴らしい。ヒロインのジュリエット・ビノシュとジョニー・デップはもちろんのこと、大家の老女役のジュディ・デンチ、村長役のアルフレッド・モリーナ、夫のDVに悩む女のレナ・オリン(ハルストレム監督の奥さん)等々。そしてなんと、僕らの若い頃、アイドルの一人だったレスリー・キャロンが村人の一人として顔を見せてくれるのはちょっとしたサプライズだった。「ギルバート・グレイプ」から久しぶりにハルストレム作品に登場のジョニー・デップは船で移動するジプシーのリーダー役で、「船長さん」と呼ばれているシーンを見ると、この3年後に演じることになるジャック・スパロウ役は実は「ショコラ」から発想したのではないかと思わせる。映像が美しく印象的なシーンが多いが、中でも僕が好きなシーンは、赤いマントを着た母娘が雪まじりの北風に吹かれて川沿いの坂道を登って行く遠景のシーンだ。