徒然なか話

誰も聞いてくれないおやじのしょうもない話

香川京子さんと「近松物語」

2011-10-24 21:36:45 | 映画
 香川京子さんがFIAF賞受賞!と聞いても、この賞が何だかよくわからなかったのだが、なんでもFIAF(国際フィルム・アーカイブ連盟)という国際的な映画保存機関が、その活動に貢献した人を表彰しているらしい。香川京子さんは自らが出演した映画の撮影スナップを多数寄贈したことが評価されたのだという。その評価のポイントは彼女が出演した映画というのが、溝口健二、成瀬巳喜男、黒澤明、小津安二郎といった世界に名だたる巨匠たちの映画だったかららしい。そのこと自体はあらためて驚くようなニュースではなかったが、僕が興味深かったのは受賞した香川さんがインタビューで「あなたにとって一番の映画は?」と聞かれて、「近松物語」と答えたという話だ。「近松物語」は溝口健二監督の1954年の作品で、近松門左衛門の「大経師昔暦(おさん茂兵衛)」を原作に川口松太郎が戯曲化した不義密通ものだ。この映画に出演した時、香川さんはまだ22歳だが、やがて80歳を迎える今なお、女優として矍鑠たる香川さんのアイデンティティは実にこの作品によって確立されたのであろう。


「近松物語」の香川京子さん(右)と南田洋子さん