そういえば、行定勲監督は第二高校の出身だったなぁと思っていると、ふと黒川滉二先生のことを思い出した。黒川先生とは僕が熊大附中の時に教わった美術の先生で、担任ではなかったが忘れられないエピソードがある。それは1年か2年の時だったと思うが、当時、全国的な生活画コンクールというのが行われていた。生活の中の一風景を絵にするというもので、全校生徒が描いて応募していた。美術の時間と放課後を使って描いていたと思うが、クラスのみんなは美術の時間は一斉に外に出て画題を探していた。僕はテーマが思いつかず、教室でじっと考えていたが、時間もどんどん過ぎてしまい、しようがなくなって自分の席から窓越しに見える風景を描き始めた。(上の写真のようなイメージ)しばらくすると黒川先生が見廻りに来た。そして僕の描きかけの絵を見て「これは面白い!」と言われた。わけがわからなかったが、どうやらそのポイントは二つあって、一つは僕が毎日教室で見慣れた風景であること。そして二つ目は外の木々や建物を直接的に描くのではなく、一歩引いた窓越しの風景であること、この二つを言われたように記憶している。ほめられて乗っかった僕は俄然やる気が出て、精魂込めて仕上げた。そして後日、黒川先生がニコニコ笑いながら「入選したよ!」と報告に来られた時の喜びは未だに忘れられない。僕らが卒業した後、黒川先生は創立間もない第二高校に転任されたと聞いた。結局、それ以来先生とは一度もお会いすることはなかった。ところでその絵はしばらく附中のどこかの部屋に飾ってあったらしいが、その後どうなったのだろう。
当時の熊大附中の校舎
当時の熊大附中の校舎