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昭和10年に寺田寅彦は、随筆「物売りの声」の中で、
「今のうちにこれらの滅び行く物売りの声を音譜にとるなり蓄音機のレコードにとるなりなんらかの方法で記録し保存しておいて百年後の民俗学者や好事家に聞かせてやるのは、天然物や史跡などの保存と同様にかなり有意義な仕事ではないかという気がする。」
と書いている。昭和10年当時、物売りが滅び行く運命にあることを既に認識していたようだ。
今では聞くこともできなくなった江戸の物売りの声を芸として演じているのが漫談家の宮田章司さんである。物売りの声は、もはや古典芸能になってしまうのかも。
※右の浮世絵は奥村政信の「草花売り」
▼「え~ かつお かつお かつお かつお~い!」
▼春は霞の彼方から 在所なまりの愛嬌に 「え~苗はいらんか~」