徒然なか話

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ハーンの見た風景

2019-11-16 17:35:36 | 文芸
 久しぶりに立田山山麓の小峰墓地に登ってみた。ラフカディオ・ハーンが愛した石仏(鼻欠け地蔵)や偉人たちの墓に参った後、墓地の北端に立って立田山をしばし眺めた。

 次の文は、ラフカディオ・ハーンの「石仏」の冒頭の一節である。

 第五高等中学校(五高)の背後にある立田山の一角は――なだらかな丘陵となっていて、小さな段々畑が連なっている――そこに村の小峯という古い墓地がある。けれど、そこはもう使われておらず、このあたりの黒髪村の人たちは今ではもっと離れた区域を墓地としている。村人の畑は、この古い墓地の区域にまでもう迫ってきているように見えた。

 おそらくハーンは、下の写真のように小峰墓地の上に立って立田山の方向を眺めたであろう。今では住宅が建て込んでいるが、当時は段々畑が連なっていたのだろう。写真の右側のアパートの向こう側に細川家の菩提寺・泰勝寺があり、その少し手前に父が生まれたわが家の本籍である黒髪村の家があった。それはハーンの目にもとらえられていたはずだ。当時この辺り一帯は数百㍍隔てて、彼処に一戸、此処に二戸と人家の点在する寂しい山里だったが、自然の眺めは四季を通じて素晴らしく、ことに春の風情はこの地を訪れる人に「柳暗花明又一村」の感懐を抱かせたのでは、と父は書き遺している。


小峰墓地から立田山を望む


ハーンが愛した石仏(鼻欠け地蔵)


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