温泉逍遥

思いつきで巡った各地の温泉(主に日帰り温泉)を写真と共に紹介します。取り上げるのは原則的に源泉掛け流しの温泉です。

温湯温泉 佐藤旅館 後編(お風呂)

2023年01月07日 | 宮城県
前回記事の続編です。


さて今度は温泉のお風呂へと参りましょう。
前回記事で紹介した小さな売店や自由に使える大広間の前を歩いてお風呂へと向かいます。大広間の先からお風呂までの間は建物が新しくなっており、真新しい緩やかなスロープを下った先がお風呂です。以前は混浴内湯だったためか、男湯の出入口は2つあり、脱衣室も二手に分かれていますが、浴室でつながっているので、どちらの脱衣室を利用しても同じお風呂に入れます。なお脱衣室と浴場は以前の建物のまま使われています。


男湯の暖簾の前で後ろを振り返ると、新しい洗面台が設けられていました。ここにはドライヤーが備え付けられており、明るくて使い勝手が良いので、私が宿泊中は、洗顔や歯磨きなどをここで済ませました。なお男湯入口の先にロッカーがあり、その更に奥が女湯です。


正面向こう側に積み上げられた岩が武骨なイメージを与える男湯の内部。なかなか広いお風呂です。古いお風呂をそのまま使っていますが、浴槽の縁は新しい木材に張り替えられていました。
浴槽の手前側はw字のような形状を描いており、左右幅や約9メートル、奥行き約5メートル、というかなり大きな浴槽です。15人は余裕で入れるのではないでしょうか。なお中程で半分に仕切られていますが、完全に分かれているわけではなく、湯面下2センチほどは仕切りがありません。それでも仕切りを挟んだ左右で湯加減に多少の差があり、湯尻に当たる右側の方が若干ぬるく感じられました。


洗い場では塀を挟んで2つのシャワーが向かい合うように並んでいます。


おそらく男湯と女湯を隔てていると思しき岩組みの壁から温泉が落とされており、その音は浴室中に木霊していました。言わずもがな循環や加水・加温などの無い掛け流しの湯使いです。ぬるゆという名前の割りには、源泉湧出温度が64.4℃もあり、上から落とされる温泉も直に触るのが躊躇われるほどの熱さがありました。
湯舟のお湯はほぼ無色透明ですが微かに褐色を帯びているように見えます。
温泉成分の析出がサンゴのように付着している湯口のお湯を口に含んでみますと、弱い塩味の他、ほのかにお煎餅を焦がしたような香ばしい匂いが鼻へ抜けていきました。湯船に浸かるとツルスベの滑らかで優しい浴感が肌に伝わってきます。実に良いお湯です。


営業を再開するにあたって、温泉利用許可を取り直したんですね。


以前は露天風呂にも入れましたが、現在は使われていないようでした。またかつて利用できた貸切風呂も現在は使用できません。


露天風呂のまわりは広いお庭のようになっていますから、私はお風呂上がりにこの庭をぐるっと回って、お風呂で火照った体をクールダウンさせつつ、当地の爽やかな空気を胸いっぱい吸い込んで、身も心も清浄化させました。

お食事佳し、お風呂も佳し。
名湯が復活するのが実に嬉しく喜ばしいことですね。
皆さんも機会があれば、是非足を運んでみてはいかがでしょうか。


よしの湯
ナトリウム-塩化物温泉 64.4℃ pH7.5 溶存物質1248.8mg/kg 蒸発残留物1085mg/kg
Na+:358.2mg(87.48mval%), Ca++:33.5mg(9.38mval%),
Cl-:472.8mg(76.01mval%), SO4--:61.8mg(7.35mval%), HCO3-:171.3mg(16.01mval%),
H2SiO3:86.1mg, HBO2:49.0mg, CO2:30.8mg,
(令和2年1月30日)
加水・加温・循環なし
消毒あり(浴槽衛生管理のため塩素系薬剤を使用)

宮城県栗原市花山字本沢温湯8-1
0228-56-2251
ホームページ

日帰り入浴10:00~19:39 火曜・木曜定休(祝日は営業)
500円
宿泊利用については宿へお問い合わせください。

私の好み:★★★
コメント (4)
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温湯温泉 佐藤旅館 前編(お部屋・お食事)

2023年01月03日 | 宮城県
(2022年4月訪問)
あけましておめでとうございます。本年(2023年)も宜しくお願い申し上げます。

さて新年第1回目の記事は、私が大好きなみちのくの温泉から始めてまいりましょう。宮城県大崎市の「温湯温泉 佐藤旅館」は、2008年の岩手宮城内陸地震で被災した温泉のひとつ。しばらくは営業できずに休業が続いていましたが、2020年11月にまず日帰り入浴営業を再開させ、2021年4月からは宿泊営業も復活しています。復活の報を耳にしていた私は、機会があれば是非宿泊利用したいと考えていたので、久しぶりに東北縦断の旅へ出た2022年4月下旬の某日、一晩お世話になりました。


栗原市から国道398号線を北上し、仙台藩花山村寒湯番所跡を過ぎた辺りで右折します。国道398号線はこの番所跡の前から秋田県側が4月下旬まで冬期通行止となりますが、佐藤旅館へ向かう場合はこのバリケードの直前を右折することになりますので、冬季通行止とは関係なく走行が可能です。


細い道をしばらく走ると、やがてお宿に到着です。


玄関入って右側には、ブリキのおもちゃやホーロー看板など、昭和レトロなグッズで飾り付け。


鉄ちゃんとしては、京浜東北線と初代の京成スカイライナーのおもちゃに心が惹かれます。
子供の頃はこんなおもちゃでよく遊んだなぁ。


さて今回の客室は帳場の右側の奥へ進んだ突き当たりにある「松の間」です。川に面した8畳の和室で、清掃が綺麗に行き届いており、テレビや冷蔵庫、空気清浄機、ストーブなどが備え付けつけられていて、快適に過ごすことができました。クーラーは無いのですが、夏でもエアコン不要なほど冷涼な環境なのでしょう。
私が入室した時には既にお布団が敷かれていました。すぐにでも横になりたい気持ちを堪え、浴衣に着替えてお風呂へ向かう準備をしなければ・・・。なお室内には洗面台がありましたが使用中止となっていたため、共用の洗面台を使いました。建物は少々草臥れていますが、飛んでいるwifiは新規格のwifi6なので、建物の見た目によらずネット環境は頗る良好です。


市街地から遠く離れた立地ゆえか、あるいは長期滞在する湯治客のためか、館内にはこのような小さい売店も設けられていました。お金を節約するため素泊まりするならば、ここでカップそばを購入して空腹を凌ぐのも一つの手かもしれません。


大広間は休憩室として使われており・・・


レコードから音楽が奏でられていました。
実にいい雰囲気なんです。


お食事は夕餉も朝食もお部屋出しでした。しかも夕食はとっても豪華。
順不同で列挙してゆくと、一迫産せりと三つ葉のおひたし、自家製ばっけ味噌豆腐、旬の山菜二種盛り、温泉育ちクレソンと海老のサラダ、たたききゅうりの白キムチ。


栗駒産漢方和牛サーロインと牛タンの陶板焼き、栗駒産漢方和牛すじの赤ワイン煮込み、花山産イワナのカルパッチョ、鴨ロースのハーブロースト、トリュフ香チーズガレット風、旬アスパラと栗駒椎茸のマッシュルームソース掛け。


花山産イワナの塩焼き、天ぷら盛り合わせ、ふわふわパンケーキ(バナナ乗せ)。そして白いご飯は栗原産ひとめぼれ。
ご当地の食材をふんだんに使ったお料理で、そのすべてが実においしく、食事が進むにつれてお腹が膨れても、おいしさのあまりに箸がさらに進み、食後は心の底から幸せになれました。


朝食も山の幸を中心にした彩り豊かな献立で、その日の旅で費やすエネルギーをしっかり蓄えることができました。
おいしかった! ごちそうさまでした。

さて次回記事ではお風呂についてご紹介してまいります。

次回記事へ続く。
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古川温泉 ルートイン古川駅前

2019年12月18日 | 宮城県
ビジネスホテルを選ぶ際に決め手となる要素は人それぞれ好みに依るかと思いますが、このブログをご覧になるような方でしたら「やっぱり温泉大浴場がないとね」と仰る方が多いのではないかと推察いたします。
温泉浴場を擁するチェーン系のホテルといえばドーミーインが有名ですね。私も全国各地でお世話になっており、チェーンならではの安定したサービスゆえに、どこを旅しても安心して利用できます。また徹底的なコストカットで廉価な料金を実現しているスーパーホテルも温泉浴場を付帯するところが多いかと思います。

全国展開しているビジネスホテルチェーンのひとつにルートインがありますね。ルートインといえば全国に300近いホテルを運営しており、その多くに大浴場が併設されていますが、ほとんどは人工温泉の大浴場であるため、残念ながら私のような天然温泉マニアは触手が伸びにくい・・・。でも300のうち25施設では天然温泉が引かれており、当ブログの記事にはしていないものの、私もいままで知床・帯広・諏訪・氷見などでルートインの温泉浴場を利用させていただいております。
さて今回はそんな温泉浴場を擁するルートインの中でも、掛け流しの温泉がある宮城県北部「ルートイン古川駅前」で宿泊することにしました。



みちのくの湯処として有名な鳴子温泉。その玄関口である東北新幹線古川駅前に立地するビジネスホテルです。外観はごく普通であり、全国各地にあるルートインと変わりありません。駐車場ではハイエースやバネット、ボンゴなどの商用車が目立ちます。



看板にも特に温泉を示すような文字はありません。
チェックインを済ませてお部屋へ。客室も至って普通で何の問題もなく、快適に過ごせます。
さて、部屋に備え付けてある浴衣に着替え、部屋のタオルを持って、フロントがある1階へ下ります。



フロントの横に構えているのが温泉大浴場の入口です。右が男で左が女。



いかにもビジネスホテルらしく、浴室入口の手前にはコインランドリーや自販機、アイスベンダー等が設置されていました。ドア横にある読み取り装置にルームキーを差し込むことにより、浴室のドアが開錠されます。
脱衣室もこれまたビジホらしく、至って実用本位な造りなのですが、さほど大きくない為、4人以上同時に利用すると窮屈かもしれません。室内には貴重品用(ルームキー用)ロッカーが用意されています。洗面台2つ、ドライヤーなども備え付けられています。



浴室も典型的なビジネスホテルのお風呂であり、温泉風情はあまり感じられず、旅や仕事で疲れた体の汗や垢を流すという、極めて実用的な目的のために造られたと言わんばかりの佇まいです。でもこのような雰囲気のお風呂を持つ温泉旅館も多いので、ルートインと言わずにこの浴室の画像を見れば、中小規模の温泉旅館と勘違いするかもしれませんね。
浴槽の上には大きな窓が設けられているのですが、目隠しの塀がすぐ目の前に立ちはだかっているため、景色を眺めることはできません(駅前の1階なので当たり前ですね)。窓の外に植えられた緑が、無機質な見た目にやさしいアクセントを加えています。

コンパクトな脱衣室から想像がつくように、お風呂自体もさほど大きくなくこぢんまりしています。尤も、こちらのお風呂は宿泊者以外利用しませんから、あまり大きさは必要ないのかもしれません。男湯浴室の洗い場にはシャワー付きカランが2+3=5基設置されているのですが、女湯は狭くて3基しかないらしく、男女で差をつけてしまうところは少々前時代的と言えるかもしれません(もっとも客層に即しているのでしょうけど)。



浴槽は小文字のbやqを手前に倒したような形状をしており、表面には石板やタイルが貼られていますが、温泉成分の付着により全体的に茶色っぽく染まっています。目測ですが容量はおおよそ6人といったところ。左奥の湯口からしっかりした量の源泉が吐出され、右側の溝へ全量オーバーフローしています。槽内吸引などは行われていません。



夜中に入った時、温度計は45℃を指していました。実際にはここまで高くなかったかと思いますが、それでも一般的なお風呂に比べれば熱い湯加減です。コスト重視のビジネスホテルがわざわざ燃料代を無駄にして湯加減を高温にするはずありませんから、これは高い温度で湧出した源泉のお湯をそのまま供給していると解釈すべきでしょう。
なお翌朝には湯船に水道のホースが突っ込まれ、適温に調整されていました。お客さんから「熱い!」と文句があったのかもしれませんね。



湯口からは絶え間なくお湯が注がれていました。浴槽の容量に対して投入量が多いので、お湯のコンディションは良好。それゆえ湯加減も熱かったのかもしれません。私が利用したのは夜中だったため良くわかりませんが、お湯ほぼ透明ながら若干琥珀色を帯びているように見えました。

湯口のお湯を口に含んでみますと、弱い塩味と金気味、そしてほのかな金気の匂いが感じられました。塩素消毒しているので若干のカルキ臭も確認できましたが、ビジネスホテルの客が相手なので消毒は致し方ないでしょうし、その臭いもさほど気になりません。また消毒以外の加温加水循環ろ過は行われていません。れっきとした放流式(いわゆる掛け流し)の湯使いです。湯中では食塩泉らしいツルスベの滑らかな浴感がちゃんと得られますし、溶存物質量が多い食塩泉なので、体の芯までしっかり温まります。
たまたまこちらへ訪問した時期の私は不眠気味だったのですが、こちらのお風呂に肩まで浸かり、よく温まってからベッドに入ったところ、翌朝までしっかり熟睡することができました。これこそ天然温泉パワーですね。

湯どころ鳴子の玄関口に相応しい良質な温泉を有する利用価値の高いホテルでした。


古川温泉旅人の湯
ナトリウム-塩化物温泉 46.2℃ pH7.8 溶存物質1943.4mg/kg 蒸発残留物1863mg/kg
Na;:646.3mg(93.11mval%), Ca++:28.6mg,
Cl-:912.5mg(85.69mval%), Br-:2.6mg, SO4--:71.3mg, HCO3-:167.0mg(9.12mval%),
H2SiO3:74.6mg, HBO2:17.8mg,
(平成30年4月11日)
加水・加温・循環なし
消毒あり(衛生管理のため塩素系薬剤使用)

宮城県大崎市古川駅前大通1-4-18
0229-22-0095
ホームページ

宿泊客のみ入浴可。夜は深夜2:00まで。朝は5:00から。

私の好み:★★+0.5
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栗駒 駒の湯温泉 2019年期はまだまだ営業中

2019年11月07日 | 宮城県
※2019年度の営業は11月17日で終了致しました(冬季休業に入ります)。
来年春の営業再開までしばらくお待ちください。


みちのくの名峰・栗駒山の山腹に湧き出でる名湯・駒の湯温泉。
この歴史ある名湯が2015年に復活して以来、拙ブログでは定期的に取り上げて応援を続けておりますが、先日(2019年11月初旬の連休)も当地へ行ってまいりましたので、簡単にレポートさせていただきます。


宮城県道42号線を山に向かってひたすら上がり、栗駒山中腹の集落である耕英地区へとやってまいりました。
栗駒山といえば東北屈指の紅葉の名所。山全体が秋の色彩に染まり、その美しさに魅せられて全国から多くの方がいらしゃいます。今年(2019年)は秋になっても暑い日が続いたため紅葉の時季が遅れましたが、さすがに11月になると栗駒山頂付近はすっかり葉を落とし、紅葉前線はこの中腹付近まで下りていました。



前日に仕入れた情報によれば、耕英地区から近い栗駒山中腹に広がる湿原「世界谷地」付近の紅葉が見頃を迎えているとのことでしたので、駒の湯温泉へ行く前に、ちょっと寄り道してみることに。道中の路傍に立ち並ぶ木々が実に美しく、途中で何度も止まって、その美しさに見惚れてしまいました。



車道の突き当たりにある駐車場に車を停めて、湿原までの歩道を歩きます。




錦絵の世界に紛れ込んだかのよう。夢心地です。
心も足取りも軽く、とても幸せな気分で湿原を目指します。



「世界谷地」の湿原は既に紅葉の見頃が過ぎ、冬支度へと移行していましたが・・・



広々とした景色がこの上なく爽快。栗駒山の頂上も望めますね。
いつまでも眺めていたくなります。



さて、爽やかな秋の散歩を終えたところで、駒の湯温泉へ向かいましょう。
温泉のまわりも、ちょうど紅葉が盛りを迎えていました。



駒の湯復活応援団の一員である私は、この日も湯守のお手伝いをすべく、営業時間より早めに現地へ到着し、お風呂掃除に勤しみました。お湯を抜いて浴槽や床など丹念に洗い、換気扇や窓などの汚れをしっかり拭き取ります・・・



清掃を終え、お湯を張った状態のお風呂。これでお客様をお迎えすることができますね。
もう既に何度もお風呂掃除を行っていますので、私も慣れた手つきでサクサクと作業を進めることができ、微力ながら湯守のお役に立てたのではないかと自負しております。



お昼は湯守が手打ちした十割蕎麦をいただきました。
とっても美味しい!
ごちそうさまです。

連休初日であったこの日は、紅葉狩りのついでにお立ち寄りくださったと思しき方や、湯治を目的にしている方、単に入浴を楽しみたい方のほか、新たにこの日から応援団に加わった方もいらっしゃり、いろんな方々が集って賑やかな一日となりました。

さて、冬になると深い雪に覆われてしまう駒の湯温泉は、雪が降りはじめる頃にその年の営業を終えます。毎年11月下旬に冬季休業となりますが、今年は例年に比べると温暖な日が続いているため、いつもより遅い時期まで営業できるかもしれません。

具体的な日程が決まりましたら、駒の湯温泉の公式サイトで案内されますので、適宜ご確認ください。

おそらく今週末には紅葉の時季も終わり、山の木々は葉を落として、冬の準備に入るでしょう。
紅葉シーズンが過ぎると、駒の湯温泉はお客さんの数もひと段落するため、週末でもゆっくり入れる機会が増えるかと思います。駒の湯のぬる湯は、ゆっくりじっくり入ってこそ、その良さを実感できますから、駒の湯の素晴らしさを愉しみたければ、むしろ今これからが好機と言えましょう!
冬季休業まで日数は限られていますが、でもまだ時間はありますので、みなさま是非とも足を運んで、名湯と蕎麦をご堪能ください。


営業期間:4月下旬~11月中下旬(冬期休業)
営業時間:10:00~17:00(16:00頃に受付を終了しますが、状況により前後します)
定休日:水曜日および第2・4木曜日定休(ただし祝日の場合は営業し翌日休業。なおGWやお盆は営業します)
入浴料金:大人500円(中学生以上)、小学生以下300円
(注1)備え付けの石鹸やシャンプー等はありません。
(注2)収容人員が限られた小さな湯小屋ですので、週末や連休など繁忙期には、入浴までお待ちいただくことがあります。

宮城県栗原市栗駒沼倉耕英東  
公式サイト




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中山平温泉 蛇のゆ 湯吉

2019年08月30日 | 宮城県

前回記事の川渡温泉から移動し、今度は中山平温泉へとやってまいりました。地熱資源が豊富であちこちから白い蒸気が立ち上るこのエリアでは、広範囲にわたって中小規模の温泉宿が点在していますが、残念ながら経営に苦しむ施設が多く、暖簾を下ろして廃墟になったり、あるいは完全に更地となってしまった宿もあります。そんな中で、経営者が変わって営業形態を新たにしたお宿が旧「鳴子ラドン温泉」、現「湯吉」です。以前はそば処を要する温泉旅館でしたが、経営者が変わった現在では日帰り温泉施設として生まれ変わりました。
国道から路地に入って坂道を下り、陸羽東線のガードを潜ると、その先では源泉から上がる真っ白な湯気がもうもうと立ち込めていました。この景色は以前の「鳴子ラドン温泉」から変わっていません。唯一変わったことといえば、「東蛇の湯、らどん温泉、藤治朗」と書かれていた看板が、現施設名の新しいものに掛け替えられたことでしょうか。



湯けむり上がる源泉脇の坂を下り、駐車場に車をとめて施設の前へと向かいます。玄関の前には日帰り温泉の幟がはためいていたのですが、その奥にはまだラドン温泉の看板が立っていました。
そういえばこの下には以前「東蛇の湯」もありましたが、かなり前に廃業してしまい、その後更地になって現在もそのままです・・・。



玄関に設置された券売機で料金を支払い、受付のスタッフに券を渡します。さすがに元々旅館でしたから受付前のロビーは広々しており、その奥には寝転がれるスペースが設けられていました。
お風呂は階段を上がって2階へ。



階段を上がってすぐ左手はかつての客室で、いまは時間貸しの個室。一方、右手に折れると浴場がある棟へとつながる渡り廊下です。

その廊下を歩いていると、左手の窓の外に何やら不気味な残骸を見かけました。これはラドン温泉時代の露天風呂の跡ですね。使われなくなった今はすっかり荒れていますが、むしろ私が気になったのはその左右の外壁にぶら下がっている配管類。元客室に設置されていたエアコンの配管なのですが、それらがブラブラと垂れているのです。お金がかかるのは百も承知ですが、見た目が宜しくないので、できれば早めに撤去した方が良いかと思います。



浴場がある棟ではお座敷が開放されており、お風呂上がりのお客さんが横になって休んでいらっしゃいました。



お座敷の片隅にはドライヤーが置かれていました。脱衣室には備え付けが無いので、必要でしたらここで髪を乾かすことになります。なお脱衣室は簡素で狭く、小さい流しと扇風機があるだけで、メインの浴室に付随している脱衣室とは思えません。一応鍵つきのロッカーが設置されていますが、いわゆる居抜き物件ですからこうした備品も古いままであり、半分近くが施錠できない状態でした。



露天風呂が閉鎖された現在、お風呂は男女別の内湯のみですが、浴室はそこそこ広くて天井も高く、屋内ながら明るくてノビノビできる入浴環境です。川側には大きな窓がありますが、窓の外にはロビーがある隣の棟が立ちふさがっているので、残念ながら景色を愉しむことはできず、実質的に大きな明かり採りと化していました。



男湯の場合、入口を入って右手に洗い場が配置されており、シャワー付きカラン3つ並んでいます。一方、その反対側にはかつてラドン浴室だったと思しき空間があるのですが、現在は単なる物置になっており、ガラス戸には目隠しが施されていないので中の物(薬品やアメニティの補充品)が丸見えでした。できればバックヤードの物は客の目に触れない状態にしていただきたいなぁと思うのですが(せっかくの温泉気分が損なわれてしまいます…)。



浴槽はヨットの帆というかナイフの刃というか、片方が直線でもう片方は緩やかなカーブを描いている形状をしています。おそらく10人以上は余裕で入れる容量があり、私の訪問時、湯船は透明でエメラルドグリーン色を帯びるお湯を湛えていました。なお後述するようにこのお湯は日によって姿を変えます。
浴槽縁の直線とカーブが交わるところにオーバーフロー用切り欠けがあるのですが、湯温調整のため投入量を絞っているので、そこから溢れ出るお湯の量はあまり多くありません。でも循環などは行っておらず、れっきとした掛け流しの湯使いです。



湯口からは90℃以上の非常に熱いお湯がチョロチョロと注がれていました。その湯口には布が被せられ、配管にはトゲトゲとした析出がびっしりこびりついています。温泉配管の隣には加水用の配管がありますが、この日は使われておらず、湯量を絞ることによって湯加減が調整されていました。

線路際で白い湯けむりが上がっている辺りでははっきりとしたイオウ臭が感じられるのですが、感覚がマヒしてしまうためか、湯船に入る時には特に匂いを感じることがありませんでした。とはいえ湯口に鼻を近づけるツーンと鼻孔を刺激するイオウ泉らしい香りをはっきりと嗅ぎ取ることができました。また湯口のお湯をコップに一旦溜め、少し冷ましてからテイスティングしてみますと、茹ですぎたゆで卵のような味や焦げたような味、そして口腔粘膜を痺れさせるような苦味が感じられました。上述のように私の訪問時のお湯はエメラルドグリーンの透明でしたが、寒い日などは白く濁るようです。これもまたイオウ泉らしい特徴です。そして中山平温泉の特徴でもあるヌルヌル感がはっきりと肌に伝わり、入浴中は自分の肌を何度も擦ってヌルヌルツルツルの非常に滑らかな浴感を楽しませていただきました。このヌルヌル感をもたらすと思しき炭酸イオンの含有量68.6mgは、他の温泉ではなかなか見られない驚異的な数値です。

古い温泉旅館の建物を居抜きで日帰り入浴にしたため、どうしても建物の草臥れた部分が目立ってしまいますし、おそらくそれをカバーするだけのマンパワーや余裕も不足しているのかもしれませんが、お湯はとても良いので、ヌルヌル湯が好きな方は入る価値がありそうです。新しく生まれ変わってまだあまり経過していませんから試行錯誤の繰り返しかと思いますが、歴史ある蛇の湯の名が途絶えないよう、是非とも頑張っていただきたいものです。応援しています。


1号地A3号・白須8号泉・6号地G1号泉・6号地G2号泉・6号地G3号井 混合泉
含硫黄-ナトリウム-炭酸水素塩・硫酸塩泉 pH9.0 91.1℃ 溶存物質1187.9mg/kg 蒸発残留物939.2mg/kg
Na+:255.7mg(92.90mval%),
Cl-:62.5mg(13.71mval%), HS-:18.3mg, S2O3--:1.3mg, SO4--:132.6mg(21.50mval%), HCO3-:327.8mg(41.82mval%), CO3--:68.6mg(17.83mval%),
H2SiO3:277.9mg, HBO2:18.7mg, H2S:0.8mg,
(平成21年6月8日)
加水あり(源泉が高温のため)
加温・循環・消毒なし

宮城県大崎市鳴子温泉星沼6-1
0229-87-2323

10:00~17:00 火曜定休
500円
ロッカー・シャンプー類・ドライヤーあり

私の好み:★★+0.5



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