(2023年3月訪問)
前回に引き続き長崎県壱岐の湯本温泉郷を巡ります。今回は湯本地区の集落の中にある「旅館長山」です。ご当地の観光協会によれば、こちらのお宿は3代・100年続く老舗なんだとか。なかなか年季が入った外観ですね。お昼過ぎに玄関を開けて日帰り入浴をお願いしたところ、まだ湯船が熱い状態だがそれでも良ければ構いませんよ、と優しくご対応くださいました。こちらのお風呂では70℃以上ある源泉を湯船に張って非加水で冷ますために時間がかかり、適温まで落ち着くのは午後2〜3時頃になるそうですが、今回は熱いのを承知で入らせていただきました。
玄関を上がり、廊下を進んで男湯へ。
お風呂へ向かう途中、廊下の窓からは源泉と思しきコンクリ枡が間近に見えました。湧出したての温泉に入れると思うだけでワクワクしますね。あぁ幸せだぁ。
渋い佇まいの更衣室。室内には利用者が自由に使えるタオルが積まれていましたが、日帰り入浴の分際にもかかわらず、お宿の方に負担がかかるようなサービスを受けるのは申し訳ないような気がしたので、私は持参したタオルで入浴しました。
浴室もこれまた大変渋くて独特な趣き。黒く塗られた壁に囲まれた総木造のお風呂で、3~4畳程度のこぢんまりした空間に3人サイズの浴槽が1つ据えられているばかり。壁の下半分は温泉成分の付着で赤茶色く変色しており、しかも部分的にかなり草臥れている御様子です。特に洗い場のシャワー周辺は早急な修理を要するのではないかと余計な心配をしたくなるほどの状態でした。
この温泉の泉質名は「ナトリウム-塩化物泉」ですから、名前だけ捉えるとナトリウムばかりが多そうな印象を受けますが、あくまで相対的にナトリウムが多いという話であって、絶対量ですとカルシウムやマグネシウムも多く含まれており、そのカルシウムの影響により、浴室の床には析出が鱗状(あるいは千枚田状)。にこびりついていました。成分の濃さをビジュアルで確かめられると、マニア的には嬉しいものです。
床の析出のみならず、湯船の湯面にもカルシウムの膜が張っていました。そっと湯船に入りながらこの膜をパリパリと割ってゆく瞬間も、マニア的にとっては興奮材料です。
お湯はやや緑色を帯びながら赤茶に強く濁っており、とてもしょっぱく、わずかに金気を感じます。お宿の方がおっしゃっていたように、私が入った時間帯の湯船はかなり熱かったのですが、お湯のコンディションは大変良好で、熱さと鮮度により心身をシャキッとさせることができました。アットホームで優しい対応と玄人向けの味わい深いお風呂が印象的な、なかなか素敵な施設でした。
ナトリウム-塩化物温泉 66.2℃ pH記載なし
Na+:5014.8mg, Mg++:282.9mg, Ca++:614.2mg, Fe++:4.6mg,
Cl-:9762.6mg, Br-:23.5mg, I-:3.1mg, SO4--:717.1mg, HCO3-:535.1mg,
H2SiO3:70.4mg, HBO2:17.4mg, CO2:111.8mg,
(平成22年1月21日)
長崎県壱岐市勝本町湯本浦43
0920-43-0033
ホームページ
日帰り入浴時間については施設へお問い合わせください
私の好み:★★+0.5