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温泉逍遥

思いつきで巡った各地の温泉(主に日帰り温泉)を写真と共に紹介します。取り上げるのは原則的に源泉掛け流しの温泉です。

新穂高温泉 深山荘(露天風呂)

2016年03月12日 | 岐阜県
 
前回記事に引き続き新穂高温泉を巡ります。前回取り上げた「神宝乃湯」がある鍋平高原から山を下って蒲田川の畔に沿って走る県道475号線に戻り、渓流沿いの露天風呂で有名な「深山荘」を目指しました。新穂高温泉に数多ある温泉旅館の一つですが、他の宿と隔絶しており、しかも川の対岸にポツンと立地しているため、実質的に一軒宿のような風情です。


 
県道と同じ川の左岸にある駐車場に車を止め、「かじかばし」と称する吊橋で右岸へと渡ります。清らかに澄み切った渓流の真上に立って上流を眺めると、雪渓が残る穂高の山々が峻厳な頂を覗かせていました。



今回は露天風呂のみ立ち寄り入浴させていただくつもりでお邪魔しましたので、まずは堂々とした構えの本館へ入って帳場に声をかけ、スタッフの方に湯銭を支払いました。館内には内湯もありますが、残念ながら今回はパスしました。


 
敷地内にはポンプで揚湯している源泉がいくつかありました。看板には穂高2号泉や穂高3号泉といった源泉名が表記されていますが、こちらで使っているお湯と同じなのか違うのか…。


 
湯銭を支払ってから屋外へ戻り、川沿いを上流に向かって歩いて露天風呂へ向かいます。手前は「姫の湯」で、奥が男湯。


 
男湯は後述するように3段に分かれており、最上段の浴槽の脇に細長い脱衣小屋が建てられています。棚にカゴが用意されているだけの質素な小屋ですが、脇役に徹するその質素さゆえ、美しい景観を邪魔することなく、周囲の自然環境に溶け込んでいました。
この小屋に掲示されている注意書きによれば、お風呂周辺での飲食はご遠慮願いたいが、酒類を含む飲料に関しては、ビンなど割れ物はNGで缶ならOKとのこと。ということは、露天に入りながら冷たい缶ビールをグビグビを飲めるんですね。宿泊すれば心置きなくお酒が飲めますから、いずれは泊まって酒を飲みながらゆっくり湯浴みを楽しんでみたいものです。またこの注意事項によりますと、男湯側にある3段の露天風呂のうち、最上段と中段は男性専用で水着不可ですが、最下段のみ混浴でしかも水着や湯浴み着の着用も可能とのことです(お宿にて湯浴み着の貸し出しあり)。


 
大きな傘が印象的な最上段の露天風呂には、打たせ湯も設けられていました。それにしても大きなお風呂ですね。普通の旅館だったら、この一つだけでも十分に立派ですが、こちらは同等のお風呂があと2つもあるんですから恐れ入ります。



最上段の浴槽脇には小さな掛け湯も設置されており、長年にわたって飛び散ったお湯によって周辺は白く染まっていました。それだけ硫黄っ気が多いお湯なんですね。


  
一方、こちらは中段および下段。目の前に清流が流れ、視界を邪魔するものが一切ない、この上ない開放的な露天風呂。こりゃ素晴らしい! 先ほども述べましたように、川縁の下段槽は水着着用可能の混浴です。
中段の浴槽では岩の隙間から伸びているホースからお湯が投入されており、ちょっと熱めの湯加減でしたが、その中段のお湯を受けている下段はややぬるめで入りやすい湯温でした。湯使いは純然たる放流式で、館内表示によれば温度が異なる2つの源泉をブレンドさせて、適温にしてから浴槽へ供給しているんだそうです。



せせらぎを耳にし、穂高の山々を眺めながらの湯浴み。極上のひと時です。


 
どの湯船のお湯も無色透明ですが、底にはたくさんの白い湯の花が沈殿しており、その形状も羽根状や消しゴムのカス状など様々です。とりわけ私の訪問時は中段の浴槽に大量の湯の花が沈殿していました。お湯からは硫化水素臭がプンプンと香っており、口に含むと硫黄由来のゴムっぽい味がうっすらと感じられました。スルスベと弱い引っかかりが混在する少々複雑な浴感ですが、総じて肌への当たりが優しく、どなたにも好まれそうなマイルドなフィーリングです。



私が個人的に気に入ったのは、体が火照った状態で目の前の川に飛び込むこと。夏だというのに、穂高連峰から流れてきた渓流は非常に清冽であり、踝を瞬間的に浸すだけでもビリビリと刺激が走って、足元からジンジンと冷えてくるのですが、その冷たさをグッと堪え、「えいっ」と気合を入れて肩まで川水に浸かってしまうと、不思議なことにこの上なく気持ち良いのです。実際に上画像で私は川の中に入ってその気持ち良さを味わっております。とはいえ、あまりに冷たいので30秒が限界であり、我慢できなくなったら再び湯船に戻って体を温める。そして再度火照ってきたらまた川へ…。このサイクルを何度も繰り返してしまいました。北アルプスの大自然と一体化できる素晴らしく開放的なロケーションのもと、掛け流しでワイルドな露天風呂と、清らかな天然の水風呂を思う存分楽しめる、まさに地上の楽園でした。今度は絶対に宿泊しなきゃ!


深山荘2号泉
単純温泉 63.7℃ pH6.90 940L/min(動力揚湯・150m掘削) 溶存物質0.572g/kg 成分総計0.602g/kg
Na+:100.7mg(76.44mval%), Ca++:18.1mg(15.71mval%),
Cl-:103.0mg(53.20mval%), HS-:0.6mg, HCO3-:121.8mg(36.56mval%),
H2SiO3:182.7mg, CO2:29.0mg, H2S:0.8mg,
(平成9年2月27日) 

高山バスセンター(高山駅前)より濃飛バスの新穂高ロープウェイ行で「深山荘前」下車(夏季は松本発着のバスも運行)
岐阜県高山市神坂720-1  地図
0578-89-2031
ホームページ

日帰り入浴(不定休)
 露天風呂→8:00~17:00, 18:00~22:00, 500円
 内湯→9:30~15:00, 700円
玄関にロッカーあり、女性用湯浴み着あり(日帰り入浴客は500円、宿泊客は無料)

私の好み:★★★
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新穂高温泉 神宝乃湯

2016年03月10日 | 岐阜県
ようやく春の息吹が感じられる始めた時季だというのに、季節外れの記事が続いて申し訳ございません。もうしばらくネタの「在庫一掃」におつきあいください。昨年(2015年)初夏のこと。突き抜けるような青空に誘われて、日本に数多ある温泉地の中でも屈指の露天風呂密集地帯である奥飛騨の新穂高温泉へと向かいました。


 
皆様ご存知のように、新穂高温泉は穂高岳を源流とする蒲田川の谷に沿って温泉施設や旅館が細長く点在しているわけですが、今回私が向かったのは川沿いの温泉街から離れて山へ登った先にある鍋平高原です。この鍋平高原へは麓から第一ロープウェイで上って行けるほか、車でもアクセスすることができ、広い駐車場も整備されているため、私は車で直接向かいました。
高原には第1ロープウェイの鍋平高原駅と第2ロープウェイのしらかば平駅が設けられ、両ロープウェイの乗り換え地点にもなっているほか、観光客向けの食堂や足湯なども設けられ、美しく且つ峻厳な山稜を眺めながら、のんびりと寛ぐことができる、なかなか爽快な観光スポットになっています。


 
高温の温泉を活かした「温泉卵」の槽もありましたので、売店でこの卵を買って食べてみたのですが、お湯に浸かる卵を食べたり眺めていても、温泉ファンとしての欲求はちっとも満たされません。温泉は入浴してこそ楽しいものです。


 
そこで、ロープウェイ駅の向かい側にある新穂高ビジターセンター「山楽館」へと向かいました。このビジターセンター内には周辺の自然環境に関する解説や登山情報などのほか、お土産販売コーナーや食堂、そして温泉浴場「神宝乃湯」が併設されているんですね、私のお目当てはもちろん「神宝乃湯」です。


 
受付カウンター料金を支払って暖簾をくぐり、渡り廊下を歩いて男女別の浴室へ。


 
ウッディーで綺麗な脱衣室は使い勝手良好。ロッカーも設置されていますから、セキュリティ面も安心です。


 
こちらの浴場は観光施設的な色彩が強く、お風呂は内湯が無く露天のみの構成です。穂高の山々の緑に囲まれた清々しい環境のもと、木材で組んだ屋根が建てられ、その下に大きな岩風呂が設けられています。近くには第2ロープウェイの索道が山の上へ向かって伸びており、一定時間ごとにロープウェイのゴンドラが上下する光景も見られます。
排水が環境にもたらす影響を考慮し、石鹸やシャンプーなどの使用が禁止されているため、構内にシャワーなど洗い場は無いのですが、その代わり掛け湯用の温泉のつくばいが設置されていますので、ここでしっかり体の汗や汚れを落としてから、湯船へと向かいました。


 
岩風呂は大小に分かれており、いずれも立派な岩に囲まれ、底面にはタイルによって模様が描かれています。奥に位置している小浴槽は、最奥の岩からお湯が落とされており、ちょっと熱めの湯加減になっていました。小浴槽といっても、10人は優に入れそうなサイズを擁しています。


 

一方、脱衣室側にある大きな浴槽は加水がしっかり行われているため、万人受する41℃前後の入りやすい湯加減に調整されていました。屋根が頭上を覆っているため、残念ながら山稜を眺めにくい状況にあるのですが、さすが高原だけあって空気が美味しくて爽快ですから、とても快適な湯浴みが楽しめます。特に夏季は下界の猛暑を忘れられるほど涼しく爽やかで、しっかり湯浴みをしても湯上がりの汗が気になりません。
館内表示によれば、加水は行われているものの、加温循環消毒のない放流式の湯使いであると表記されており、私が実際に利用してひと通り観察しても、その表記に嘘偽りはないかと思われます。大小両浴槽とも浴槽縁からの溢れ出しは無く、底から立ち上がっているオーバーフロー管から排湯されていました。


 
小さな浴槽は岩からお湯が落とされていましたが、大きな浴槽では太い木製の樋から注がれており、クリーム色に染まったその樋の中を覗いてみますと、樋の内部で加水が実施されていることが確認できました。
お湯は無色透明ですが、わずかに灰色や翠色掛かっているようにも見え、湯中では白い湯の花が浮遊しています。お湯からは火山の噴気帯みたいな硫化水素臭がしっかり放たれているほか、口に含んでみると基本的にはタマゴ味ですが、ややゴムっぽく、また弱いながらも苦味を感じ取れました。匂いや味の面で硫黄の特徴はよく現れているものの、浴感としてはアッサリしており、弱いツルスベで癖の少ない優しいフィーリングでした。なお、ここで使っている温泉は麓の新穂高温泉街の中尾地区(おそらく「中崎山荘」付近)から引湯しているんだそうですが、岐阜県温泉協会公式サイトの「第14話 統計から見た岐阜県の温泉」によれば、新穂高温泉の中尾地区では蒸気造成泉を使っているそうですから、私が実際に体感した浴感や温泉協会の文章から推測するに、おそらくこの温泉も蒸気造成泉であろうと思われます。でも造成泉ならではのアッサリとした優しさが心地よく、硫黄感もしっかり主張しており、また高原の空気も清々しいので、この界隈へ来た際には入浴する価値が十分にあるかと思います。場所柄、観光客はもちろん、登山客の利用も多く、私の訪問時も山男たちが下山後の疲れを癒していました。


奥飛騨観光開発3号泉(高山市奥飛騨温泉郷神坂字巾平710-21)
単純硫黄温泉 79℃ pH6.60 140L/min 溶存物質0.548g/kg 成分総計0.549g/kg
Na+:88.9mg(74.4mval%), Ca++:13.0mg(12.5mval%),
Cl-:116.5mg(57.0mval%), HS-:0.4mg, S2O3--:3.0mg, HCO3-:103.4mg(29.4mval%),
H2SiO3:172.5mg, H2S:1.2mg,
(平成21年4月13日)
加水あり(源泉温度が高いため)

岐阜県高山市奥飛騨温泉郷新穂高  地図
0578-89-2254(新穂高ビジターセンター「山楽館」)
「施設のご案内」(新穂高ロープウェイ公式サイト内)

9:30~15:30(受付15:00まで) 季節により変動あり
600円
石鹸・シャンプー類など使用禁止、ロッカーあり、ドライヤー見当たらず

私の好み:★★★
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(小ネタ)安房峠道路・平湯料金所の垂れ流し温泉

2016年03月09日 | 岐阜県
久しぶりに、軽いネタをひとつ。

 
信州松本と飛騨高山を結ぶ重要な交通路、国道158号の「安房峠道路(安房トンネル)」。温泉巡りを趣味とする方(特に関東や中部周辺の方)でしたら、多くの方がこのトンネルのお世話になっているかと思います。かく言う私もその一人であり、今まで何度もこの道路を往復しております。昨年(2015年)初夏にもこの道路を利用して飛騨地方へと出かけたのですが、トンネルを通行中に尿意を催したので、用を足すため平湯料金所のすぐ目の前にある小さなパーキングスペースに立ち寄りました。このパーキングスペースにはトイレのほか自動販売機もあり、頑丈な屋根がかかっていますので、私が利用した初夏はもちろんのこと、積雪期でも安心して利用できるかと思います。
さてトイレで用を済ませて、車に戻ろうとしたところ、その片隅で気になるものを発見しました。


 
トイレ屋外の隅っこに丸く小さな容器が置かれ、地面から立ち上がっている細いパイプからその容器に向かって、人知れずチョロチョロと水が滴り落ちていました。これだけでしたら、どこにでもよくある光景なのですが、この配管が固定されている壁には「安房トンネル湧出温泉水」と書かれた張り紙が掲示されているではありませんか。なになに? 温泉水ですって?


 
そのお湯を触れてみますと確かに温く、単なる水ではなく温泉水であることがわかります。車に戻って温度を測ってみたら36.8℃と計測されました。量といい温度といい、浴用にも足湯にも適さず、使い途に困るようなお湯なので、ここで垂れ流して温泉地としてのアピールをしているのかもしれませんね。でもこんな目立たないところで垂れ流したところで、ほとんどの人はその存在に気づかないでしょう。あぁ、なんてかわいそうな温泉なんでしょう…。このお湯を実際に使っている人っているのかな? せいぜいワンコの足湯が精一杯といったところでしょうか。
「飲まないでください!」と書かれていましたから、喉を通さず口に含むだけにしてテイスティングしてみますと、何となく土類的な味があったようななかったような…。平湯の温泉街のお湯に似たような特徴を有する温泉だったような気がしますが、その時に記録したメモを紛失してしまったため、細かな特徴は覚えておりません。ゴメンなさい。

平湯料金所のそばには平湯の温泉街があるように、このあたりは温泉資源が豊富ですから、地面を掘っていけばいずれ温泉の水脈に当たることは想像に難くなく、どこから引いているのかわかりませんが、おそらくこのお湯も安房トンネルを掘削している過程で遭遇した温泉水脈のひとつなのかもしれませんね。ちなみに、このお湯と同じものかわかりませんが、掘削工事中の際に調査坑として掘られた安房トンネル避難坑の内部には、60~70℃で湧出する温泉が現在でも湧出しているはずです。

以上、安房峠道路と温泉にまつわる小ネタでした。

岐阜県高山市奥飛騨温泉郷平湯 地図

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高山市 塩沢温泉湯元山荘跡の露天風呂 遂に閉鎖へ 2015年7月

2015年07月16日 | 岐阜県
・本記事では2015年7月11日の状況を取り上げております。
・今月に入ってから拙ブログでは山形県の温泉を連続して取り上げておりますが、いつも拙ブログをご覧くださっている皆様にいち早くご報告したいことがございましたので、今回は岐阜県の記事を挟み込ませていただきました。



梅雨後半の日本列島を猛暑が襲った先週末、私は避暑を兼ねて奥飛騨地方を湯めぐりしていました。奥飛騨は名湯の多いエリアですが、その中でも野趣あふれる無料開放の露天風呂として有名な塩沢温泉「湯元山荘」跡の露天風呂へ久しぶりに再訪してみることにしました。拙ブログでは6年前に一度取り上げております(当時の記事はこちら)。ご存知無い方のために簡単に説明しますと、かつて塩沢温泉では「湯元山荘」という温泉旅館が営業されていたのですが、残念ながら廃業してしまい、その後は露天風呂だけが残され、どういうわけかお湯も供給され続け、誰でも自由に入浴できる状態となっていたのでした。
国道361号沿いに立つ無印良品南乗鞍キャンプ場の看板が目印。この丁字路を曲がって、細い川沿いの道を1.5kmほど北上します。


 
道が大きくカーブするところで、右手に小径が逸れますので、そこへ入って坂を下れば到着できるはずなのですが、小径の入口付近の様子が何だかおかしいのです。それもそのはず、「湯元山荘」の看板が取り外されていました。しかも…


 
道には車両の通行を阻止するためのチェーンが張られており、「ここでのご入浴は出来ません」と書かれた札が下がっているではありませんか。あれれ、どうしちゃったんだろう。とうとうここも閉鎖か…。災害でも発生したのか。あるいは何らかの工事が行われるのか。クリアファイルに入れられたこの注意書きは、汚れやヨレなどがほとんど無いので、まだ印刷されて間もないものと思われます。ということは、チェーンが張られたのもつい最近なのかな。このまま引き下がることも考えましたが、せっかくここまで来たことですし、どうしても現状を自分の目で確かめたくなったので、ここから先は自己責任で進んでみることにしました。


 
アプローチを歩いて下り、駐車場跡までやってきました。「クマ出没注意必要」の札は相変わらずです。


 
駐車場の片隅には塩沢温泉の源泉ポンプ小屋があり、訪問時も中からはしっかりと作動音が響いていました。小屋の奥には2つの大きなタンクが立っており…


 
タンクの下からボコボコ音を立てて黄土色の温泉が勢い良く湧出していました。この源泉の温度を計測したところ25.8℃と表示されたのですが、後述する露天風呂の温度はもっと高いので、この源泉は露天風呂のものではなく、おそらく国道沿いの集落にある塩沢温泉の旅館「七峰館」へと引かれているのでしょう。


 
ポンプ小屋やタンクからちょっと離れたところに櫓の残骸のようなものがあり、その下には温かい配管が埋設されていましたので、露天風呂に注がれている源泉はこっちなんだろうと思います。



駐車場(跡)から川の対岸を望むと、露天風呂にはちゃんとお湯が張られていました。どうやら撤去されたわけでも災害に遭ったわけでもなさそうです。まずはひと安心。


 
湯船にお湯が張られていることは確認できたので、木造の橋を渡って対岸の露天風呂へ向かってみました。橋が腐食して踏み抜いたりしないか心配でしたが、今のところは全く問題ないようでした。橋の上から露天風呂の方を眺めますと、渓流の両岸にトラバーチンが形成されているがわかります。右岸側は源泉から引湯する過程で漏れた温泉によるもの、左岸側は言わずもがな露天風呂のオーバーフローによるものです。



あれれ? 橋を渡りきってすぐのところにあった「湯元山荘」の廃墟が消えて、草の生い茂る更地になっているではありませんか。いつの間にやら完全撤去されていたんですね。



旅館の建物は消えても、塩沢温泉露天風呂はまだ姿をとどめておりました。


 
閉鎖される前まで、このお風呂は有志の方によって清掃されており、そのため山の中にほったらかされている野湯に近い環境だというのに、比較的綺麗な状態が維持されていました。岩に立てかけられていたデッキブラシはそんなに古いものではなく、つい最近まで実際に使われていたことが窺えます。

重炭酸土類泉や塩化土類泉など、黄土色に濁る金気や土気の多い温泉は、自然の中に放っておくと、あっという間に藻や苔が繁殖し、ドロドロになって悪臭を放つ傾向にあります。北海道の然別峡野湯群や青森県田代元湯などはその典型ですが、この塩沢温泉も同様であり、おそらく閉鎖されてまだあまり経っていないはずなのに、早くも槽内には苔が発生しており、その破片が湯面に浮かんでいました。



対岸のトラバーチンはなかなか立派なもの。岸の上にはバスタブのような箱型タンクが置かれていますが、かつてはここでお湯を一時的にストックしていたらしく、そこから漏れたお湯がトラバーチンを形成したわけですね。なおこのタンクは現在空っぽです。


 
露天風呂のお湯は対岸(駐車場側)にある源泉井にてポンプアップされており、この日も源泉から塩ビパイプで川を渡ってきたお湯が絶え間なく注がれていました。パイプの口における温度は37.6℃ですから、まさに夏向きの温泉です。お湯の見た目から想像できるように金気と土気を有している他、かなり強い炭酸味を含んでおり、お湯に手を突っ込むだけでも、ほんのりとしたシュワシュワ感(どちらかと言えばモゾモゾ感かな)が伝わってきます。なお泡付きはありません。



居ても立ってもいられなくなった私は、入浴に問題が生じそうなことなんてどうでも良くなり、衝動的に入浴してしまいました。清掃されなくなった露天風呂の底はヌメヌメしており、歩く度に藻類の塊が舞い上がって、決して衛生的には宜しくない状態なのですが、暑い陽気の中で入るぬるめの露天風呂はとても爽快であり、また、ちょうど時期的にブヨとアブの端境期であるためか、鬱陶しい虫達に寛ぎを妨害されることもありませんでした。この露天風呂に入れるのは、これが最後となるのかな。

帰宅後にネットで調べてみたら、源泉井からお湯を汲み上げるポンプが最近故障したらしく、どうやらその故障が閉鎖の一因となっているようです。私が訪れた時にはちゃんとお湯が出ていましたから、一応修理されたのでしょうけど、よくよく考えてみれば、ポンプを回し続けるのも修理するのも、それなりの費用を要するわけですから、むしろ今まで温泉を無料開放していてくれたことがイレギュラーだったのかもしれません。
また、無料開放の露天風呂といえば、最近では栃木県塩原温泉「不動の湯」が風紀の乱れによって閉鎖されたことが大きな話題となりましたが(その後条件付きの再開が決定)、同様の事案がここでも問題化していたのかもしれませんね。
いずれにせよ、この度の閉鎖は大変残念です。もし海の日の三連休にこちらへ行こうと計画なさっていた方は、このような状況ですので、くれぐれもご注意くださいませ。取り急ぎご報告させていただきました。




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荒城温泉 恵比須之湯

2013年11月27日 | 岐阜県

温泉施設名をGoogleなどで検索すると、公式サイトや温泉関係のポータルサイトではなく、温泉ファンのサイトやブログが上位に表示されるような温泉は、大抵の場合はアタリ(つまり良泉)だったりしますが、岐阜県の丹生川ダム手前にある荒城温泉「恵比須之湯」もその典型であり、多くの温泉ファンから熱い支持を集めている公衆浴場であります。先日安房峠(トンネル)を経由して帰京することがあったので、そのついでにこちらへ寄り道してまいりました。到着したのは夜8時頃でしたが、駐車場にはたくさんの車が止まっており、また浴室から外へ漏れ聞こえるお客さんの声から察しても、館内は相当賑わっているようでした。



駐車場の一角には温泉スタンドがあるのですが、この日は「故障中」の札が下げられていました。
このスタンドの前には丹生川のコミュニティバスのバス停が立っているのですが、一日1~2本程度しかなく、山間部にお住まいの方が里へ出勤通学することを目的としたダイヤとなっているので、このバスを利用して温泉へアクセスすることは非現実的といえるでしょう。


 
東北の温泉地みたいな木造トタン屋根の湯屋ですが、建物内はウッディーで温かみが感じられます。私が館内に入りますと、番台に座っていたおばちゃんが明るく対応してくれ、料金を支払いますと、おばちゃんの手元に置かれた金庫よりお金を出し入れし、売上があるたびに出納帳に数字を記載していました。
脱衣室でも木材のぬくもりを全面に出しており、あまり広くはないもののあまりストレスを感じることはありませんでした。なお脱衣室に入ってすぐのところにロッカーが設置されているのですが、ボックスの数が少ないので早い者勝ちとなってしまうかと思います。



お風呂は内湯と半露天がありますが、まずは内湯から見て行きましょう。男湯の場合は浴室内の左側にシャワー付き混合水栓が6基並んでおり、右側には浴槽がひとつ据えられています。浴槽のお湯は恰も赤いパプリカのパウダーを混ぜたクリームソースのような橙色系に強く濁っており、透明度はほぼゼロ。お湯からは炭酸味と薄い塩味、金気味、そして強い石灰感が伝わってきます。湯使いは加温の上での放流式となっています。


 
ここを訪れる多くの温泉ファンが目を輝かせずにいられないのは、言わずもがなこの浴槽やその周りの床であります。浴槽は約6人サイズで、元の素材が何なのか全くわからないほど全面的に石灰華でコーティングされており、その周りの床にはものすごい状態の千枚田が現れていました。多くの温泉ファンの方と同じように、私もこの光景を目にして当然ながらアドレナリンを大量分泌して興奮し、石灰華のうろこ状の造形を指先で撫でてみたり、あるいは素足で歩いて痛がることに喜びを感じたりと、脳みそがどうかしている人のような奇妙な行動を繰り返してしまいました。

このような石灰華は、温泉の中に含まれるカルシウムイオンが炭酸イオンや炭酸水素イオンと結合することによって発生する炭酸カルシウムの沈殿によって形成されます。この温泉施設では約800メートル離れた深さ1100mの源泉井から引湯し、25℃の源泉を42℃くらいまで加温した上で浴用に供しているわけですが、この加温によって温泉に含まれている炭酸ガスが抜けてしまい、その結果として強い濁りや浴槽周りの石灰華を生み出しているわけですね。


 
周囲を壁で囲まれ、頭上も屋根でカバーされている半露天ゾーンには、露天の浴槽と源泉風呂という2つの槽が設けられています。露天の浴槽は内湯同様に加温されており、強く濁っているのですが、外気の影響を受けているのか或いは加温を抑えているのか、湯加減は39℃くらいでキープされており、この浴槽に入る人は、ぬるい湯を好んでいつまでも長湯するか、もしくはぬる湯を嫌ってすぐに出てゆくかのいずれかのタイプに分かれるのが面白いところです。
内湯ほどコテコテな石灰華は現れていませんが、それでも浴槽のまわりにはしっかりとこびりついており、槽の縁に置かれた飾りの石にもクリーム色の析出がコンモリとコーティングされていました。そして浴槽縁の湯面ライン上には庇のような出っ張りも形成されていました。なおこちらの湯使いも内湯同様に放流式です。


 
こちらのお風呂で特筆すべきは、この源泉風呂でしょう。上2つの浴槽は入浴に適した温度にするため、25℃の源泉を加温していますが、こちらは非加温状態の生源泉がドバドバ投入されている完全かけ流しであり、非加温ゆえに濁りや石灰華の発生も抑えられており、お湯は加温槽とは異なり灰白色の笹濁りを呈しています。そして浴槽や周りの床にも石灰華はあまり発生しておらず、赤黒く染まっている程度です。私などは温泉での石灰華を目にするとつい喜んでしまう癖がついているのですが、この手の泉質ならば、むしろこの非加温の源泉風呂のように、石灰華が出ていない状態のほうが鮮度が良く、且つ炭酸ガスの濃度も高いわけですから、内湯や露天に比べると一見大人しく見えるこの源泉風呂こそ、この温泉の真骨頂であると言えましょう。

湯口のお湯を口にしてみると、炭酸味がとても強くて口腔内がシュワシュワと刺激されます。また石灰感や薄い塩味とともに弱いタマゴ味やタマゴ臭も感じ取れました。温度が温度だけに、いきなり源泉風呂に入ることは厳しいのですが、加温槽でしっかり温まってからこの浴槽に入ると、その温度差が実に心地よく、また長い時間源泉風呂に浸かっていても、炭酸の血管拡張作用によってあまり冷たく感じないのが不思議であります。
源泉風呂と加温槽を何度も往復する長湯の常連さんが多いので、お客さんの回転が悪く、全体的なスペースの問題もあって混雑することもしばしばですが、お湯のクオリティは抜群ですし、炭酸のおかげで湯上がりは体の芯から長時間ポカポカし続けますから、泉質重視の方でしたら、界隈を訪れた際には訪問必須であります。
すぐにスケールが発生しちゃう泉質ですから、配管や浴室のメンテナンスには相当ご苦労なさっているかと思いますが、是非いつまでもこの浴場を守り続けていただきたいものですね。


含二酸化炭素-ナトリウム・カルシウム-炭酸水素塩温泉 25.5℃ pH6.4 351L/min(掘削動力揚湯) 溶存物質3586mg/kg 成分総計4744mg/kg
Na+:420.1mg(41.44mval%), Mg++:74.3mg(13.86mval%), Ca++:366.0mg(41.42mval%), Fe++:19.1mg,
Cl-:180.2mg(11.60mval%), Br-:0.4mg, I-:0.1mg, HCO3-:2354mg(88.10mval%),
H2SiO3:129.7mg, HBO:15.6mg, CO2:1158mg,

岐阜県高山市丹生川町折敷地415  地図
0577-78-2877
ホームページ

13:00~21:00 毎週金曜・年末年始定休
500円
ロッカー・シャンプー類・ドライヤーあり

私の好み:★★★
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