温泉逍遥

思いつきで巡った各地の温泉(主に日帰り温泉)を写真と共に紹介します。取り上げるのは原則的に源泉掛け流しの温泉です。

下呂温泉 寿々波

2016年09月06日 | 岐阜県
 
前回に引き続き下呂温泉を取り上げます。今回は飛騨川沿いに立ち並ぶ旅館のひとつ「寿々波」を訪れることにしました。表には日帰り入浴を歓迎する看板が掲示されており、湯めぐり手形も利用可能です。建物の外観からは昭和の香りが濃く漂っているのですが、その躯体に取り付けられている袖看板は現代的なデザイン(フォント)を用いたものが採用されており、できる範囲内で効果的に現代的な雰囲気を採用していこうとするお宿側の意気込みが感じられます。


 
帳場にて手形を呈示しますと、作務衣を着た若旦那と思しき方が笑顔で対応してくださいました。ロビーの奥には川を望む一室があり、宿泊客のためにいろんな柄の浴衣が用意されていました。近年、日本旅館ではこうして自分の好みの浴衣を選べるサービスが増えていますね。


 
館内も随所にモダン和風な装飾が施されており、建物の古さを打ち消そうとする努力が垣間見られます。傾斜地に建てられている関係でロビーは3階なのですが、お風呂は1階にあるため、エレベータ(もしくは階段)で下がって浴室の入口へと向かいます。男女別浴場のほか、家族風呂が2室(「椿」と「蘭」)もあるんですね(今回は利用していません)。


 
奥へ細長い脱衣室を抜けて浴室へ。露天風呂は無いものの、川に面して大きなガラス窓が採用されているため、内湯にありがちな圧迫感は軽減されています。窓の外側では飛騨川が左右に流れており、目の前の河川敷では散歩をする人の姿も見られます。そして川越しに温泉街を一望でき、視界の抜けが良いため、爽快な気分で湯浴みできました。
浴室の左右に洗い場が分かれて配置されており、シャワー付きカランが計6基取り付けられていました。


 

洗い場で特筆すべきは、カランから出てくるお湯です。なんと源泉のお湯が使われているのです。掛け流しのお風呂が少ない当地において、源泉のままのシャワーは嬉しいですね。源泉のお湯(というかポンプ所から引湯されたお湯)ゆえ、カランから出てくるお湯はやや熱く、シャワーで頭からお湯を被ると全身がツルスベの滑らかなフィーリングで覆われました。


 
浴槽はタイル張りで、縁には御影石が採用されています。大きさとしては(目測で)3m×3.5mほどですが、中央に柱が立っており、この柱の部分で2つに等分されています。分かれているとはいえ、両者を隔てる仕切りが湯面より低いため、お湯に違いはなく、違いといえば湯船の深さが若干異なっている程度でした。
その仕切りの上に設けられた石積みの湯口よりお湯がジャバジャバと吐出されていますが、オーバーフローは発生しておらず、底面に設けられた2つの吸引口よりお湯がしっかりと回収されていました。ネット上の情報や某大手宿泊予約サイトには掛け流しの湯使いである旨が謳われていたのですが、実際のところは果たしてどうなのでしょうか。しかも入室時にはカルキ臭も嗅ぎとれましたので、湯使いにこだわる温泉ファンからはちょっと辛い評価を受けてしまうかもしれません。お湯は共同管理されているお湯(湯之島・森地区の系統)を引いており、無色透明でほぼ無味無臭。湯使いの問題なのか、下呂温泉らしい滑らかな浴感があまり得られず、正直なところシャワーのお湯の方が、下呂温泉の良さがしっかりと現れていました。
今回利用していない家族風呂の湯使いは不明ですが、もしかしたら家族風呂で正真正銘の掛け流しを実施しているのかもしれません。その辺りの実情がわかりませんので、いつも拙ブログの文末で記しております「私の好み」は、今回記事では評価しないことにしました。あしからず。

古い建物を手入れして、可能な部分から現代的なニーズを取り入れ、誰でも入って来やすい間口の広い宿作りに心がけている姿勢には頭が下がります。けだし若いスタッフが頑張っているのでしょう。そんな頑張りを応援したくなるお宿でした。


送湯ポンプ所
アルカリ性単純温泉 56.2℃ pH8.9 毎分2000L(合計) 溶存物質0.387g/kg 成分総計0.387g/kg
Na+:118.2mg(94.83mval%),
F-:10.3mg(9.99mval%), Cl-:113.1mg(59.00mval%), HCO3-:37.5mg(11.28mval%), CO3--:24.1mg(14.80mval%),
H2SiO3:57.3mg,
(平成25年11月25日)

JR高山本線・下呂駅より徒歩10分程度
岐阜県下呂市湯之島868-1  地図
0576-25-2664

日帰り入浴7:00〜10:00、14:00〜22:00
600円(湯めぐり手形利用可能)
ロッカー・シャンプー類・ドライヤーあり
コメント (2)
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下呂温泉 ひだ山荘

2016年09月04日 | 岐阜県
今回からは岐阜県飛騨路の下呂温泉を連続して取り上げます。とはいえ、前回までの記事と同じく半年前の冬(2016年の正月休み)に巡ったときの記録であり、鮮度感に劣る季節外れな風景が続きますが、何卒ご容赦ください。

 
 
まずは高山本線で下呂駅へ向かい、駅前にある観光案内所で「湯めぐり手形」を購入しました。下呂温泉の「湯めぐり手形」は1,300円で3ヶ所をめぐることができますので、当地で3ヶ所以上温泉をハシゴするのでしたら、手形を購入した方が経済的です。手形購入時には加盟している旅館・施設と利用可能時間の一覧表を手渡してくれますが、施設によってはその時間内であっても利用不可な場合があるので、公式サイトであらかじめ利用可能時間を調べておき、前日か当日に各施設へ直接問い合わせた方が宜しいかと思います。


 
私がまず向かったのは「ひだ山荘」です。温泉街は飛騨川の両岸に沿って分布していますが、こちらのお宿は温泉街の外縁部にある温泉寺の裏手に位置しており、温泉街からひたすら坂道を登ってゆくことになります。


 
玄関に湯めぐり手形の看板が立っていることを確認してから入館し、フロントで手形を呈示して入浴をお願いしますと、スタッフの方が快く対応してくださいました(先述しましたように、正月休みに伺ったため、玄関には松飾りが据えられていました)。
山裾の傾斜地に立地しているため、ロビーからの見晴らしが素晴らしく、眼下に広がる温泉街を一望することができました。なお、浴場内にロッカーが無いため、貴重品はフロントへ預けることになります。


 

エレベーターか階段をで階下の浴室へ。
空調が効いた脱衣室は、手入れがよく行き届いており、綺麗で使い勝手良好です。室内には日本温泉協会のプレートが掲示されており、これによれば源泉・泉質・給排湯方式・加水の4項目で5つ星(満点)、引湯が4つ、そして新湯注入率で3つという評価となっていました。


 
浴室は内湯のみで露天風呂はありませんが、2方向に大きな窓があるため、室内は大変明るくて湯気籠りも少なく、清潔感に満ち溢れており、快適な入浴環境が維持されていました。窓と反対側に設けられた洗い場には、温泉街の街明かりをイメージしたと思しきカラフルな壁絵が施されており、明るく大きな窓と共に非日常的な雰囲気を醸し出していました。洗い場にはシャワー付きカランが4基並んでおり、一つ一つの間隔が広く確保されているため、混雑時でも隣のお客さんとの干渉を気にせずに利用できそうです。


 
大きな窓の外は温泉街を見晴らすパノラマが・・・と言いたいところですが、さすがに目隠しする必要があるためか、窓の外側には庭木が植えられています。でも日本庭園風の誂えですので、まるで露天風呂にいるような景色が広がっており、また高台なので梢越しに山々を眺められ、屋内にもかかわらずなかなか開放的でした。


 
石板張りの浴槽は、上から見ると縦長の台形のような形状をしており、小学校の算数で習った台形求積の公式風に表現しますと、(目測で)上底1m・下底2m・高さ3.5mといった寸法で、おおよそ6〜7人サイズといったところ。浴槽の縁からお湯がしっかりと溢れ出ており、槽内での吸引や供給など見られないので、放流式の湯使いかと思われます。


 
浴槽隅で立ち上がっている箱型の湯口からお湯が落とされており、50℃以上の熱いお湯が湯量を絞った上で投入されています。湯口の横に置かれている木板には「源泉かけ流しの為 熱くお入り出来ない場合は 成分が薄くはなりますが 加水をおすすめします」と説明が書かれていました。放流式の湯使いなのですが、お湯をそのままの状態で湯船へ供給するため、熱いお湯の投入量を絞っているわけです。それでも熱く感じる場合は、お客さんがセルフで加水をするのですね。私が訪れた時には他にどなたもいらっしゃらず、完全独占状態だったのですが、お湯の熱さも気になるほどではなかったので、一滴も加水せずそのままの状態で入浴させていただきました。

お湯は無色透明でほぼ無味無臭ですが、わずかにアルカリ性泉的な微収斂と土気のような味が感じられます。塩素消毒を実施しているそうですが、ほとんど気になりません。でも、温泉街に点在する足湯・手湯・飲泉場のお湯から得られるようなタマゴ感は、こちらのお湯からは感じられませんでした。さすがにアルカリ性泉だけあって、お湯にはトロミがあり、ツルスベの滑らかな浴感もしっかり肌に伝わってきます(でも、あくまで個人的な感想ですが特段印象に残るほどではなかったかも)。
下呂温泉では14ヶ所の源泉から温泉を集めて集中管理していますが、配湯系統は湯之島・森地区と幸田地区の2系統に分かれており、こちらのお宿では前者の系統のお湯が引かれています。ポンプ所から供給されたお湯をどのようなスタイルでお客さんに提供するかは、その施設の判断に委ねられているのですが、こちらのお宿の場合は放流式の湯使いで、投入量を絞って温度を調整することにより、お湯の濃さを変えることなくお客さんに下呂温泉の良さを味わってもらおうと努めていらっしゃるのですね。安易に加水や循環装置に頼ろうとしない信念には頭が下がります。下呂温泉でかけ流しのお風呂は少ないため、こちらのようなお風呂は貴重な存在です。


 
お風呂から上がった後、温泉街へ戻るべく、「ひだ山荘」の目の前にある温泉寺の境内へお邪魔しました。境内を通り抜けるとショートカットできるんです。でも、何もしないでただ通り過ぎるのは御本尊に申し訳ないので、ちゃんと本堂で合唱させていただきました。上画像は山門と本堂です。


 
境内のつくばいには熱い温泉が注がれていました。当記事本文でも軽く触れましたが、下呂温泉では各施設の浴場よりも、足湯・手湯・飲泉場のお湯の方が質感がしっかり伝わってくる傾向があり、このつくばいでも、熱いお湯からタマゴ感とヌルツルの滑らかさが伝わってきました。その質感のままで入浴できたら良いんだけどなぁ…。


 
山門をくぐってから、長い石段で温泉街へ向かってまっすぐ下りていきました。石段からは温泉街を一望できました。この石段は当地観光のおすすめスポットです。


送湯ポンプ所(集中管理・湯之島ポンプ所)
アルカリ性単純温泉 56.2℃ pH8.9 毎分2000L(合計) 溶存物質0.387g/kg 成分総計0.387g/kg
Na+:118.2mg(94.83mval%),
F-:10.3mg(9.99mval%), Cl-:113.1mg(59.00mval%), HCO3-:37.5mg(11.28mval%), CO3--:24.1mg(14.80mval%),
H2SiO3:57.3mg,
(平成25年11月25日)
加水加温循環なし、消毒あり(衛生管理のため塩素系薬剤を通年使用)

JR高山本線・下呂駅より徒歩15分(約1km)
岐阜県下呂市湯之島683-1  地図
0576-25-3140
ホームページ

湯めぐり手形利用可能時間15:00〜20:00(なお私の訪問日は18:00まででしたので、日によって時間が変更される場合があります。事前に直接施設へご確認ください)
シャンプー類・ドライヤーあり、貴重品はフロント預かり

私の好み:★★
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平湯温泉 平湯民俗館

2016年03月18日 | 岐阜県
前回記事で取り上げた平湯温泉「穂高荘倶楽部」で一晩を明かした翌朝は、標高3026mの乗鞍岳に登って、頂上からの大パノラマと高山植物の花々に大満足。下山した後は、登山でかいた汗を流すべく、平湯温泉に戻って名湯「神の湯」へ向かったのですが、あいにく長期休業中だったため…



第二候補の「平湯民俗館」へと向かいました。「穂高荘倶楽部」の斜め前にあり、神社に隣接しているので、その神社の鳥居がわかりやすい目印になっています。「民俗館」という名称の施設ですが、こちらにも温泉の露天風呂があるんですね。


 
民俗館と称するだけあって、当地の伝統的な民俗文化を伝承することが本業であり、最奧には立派な茅葺き屋根の入母屋造である民俗資料館があるほか、その手前には同じく茅葺き入母屋造で高山市の指定文化財である「旧豊坂家住宅」(移築)が展示されており、駐車場側には足湯も設けられていました。



民俗資料館の1階では軽食類の販売が行われている他、屋内には囲炉裏の部屋があったり、また伝統的な衣類や古民具類などが展示がされていますので、それら展示類により飛騨の厳しい自然を生き抜く先人たちの生活の工夫を学ぶことができます。縁側から昔噺の世界観に満ちた室内を覗くと、いまにも常田富士男や市原悦子の声が聞こえてきそうな感じです。


 
さて私がこちらを訪れたのは民俗学を学ぶためではなく、温泉に入るためです。入浴利用者は資料館へ声をかける必要はなく、母屋の右側にある湯屋へ直接向かえばOKなのですが、湯屋自体は無人ですので、利用前には必ず男湯前に立っている料金ポストへ湯銭を納めましょう。


 
総木造の脱衣室は、まるで農機具小屋を思わせるようなシンプルな佇まいで、棚とカゴ、そしてロッカーが用意されている程度です。


 
お風呂も露天風呂のみという潔い構成ですが、周囲の美しい緑に囲まれた大きな岩風呂は、和の温泉情緒たっぷりで、なかなか良い雰囲気です。奧へ長いつくりのお風呂は、手前側半分に屋根がかけられていますから、多少の雨や雪なら凌げるでしょう。あくまで観光客がふらっと立ち寄って湯浴みすることを前提に造られているのか、あるいは極力シンプルな造りにしたかったのか、お風呂にカランや洗い場などはありません。このため3個ほどある備え付けの桶で、湯船からお湯を直接汲んで掛け湯することになります。


 
最奧の岩から突き出ている竹筒より温泉がドバドバ大量に注がれており、脱衣室側の湯尻からしっかりと溢れ出ているほか、オーバーフロー管からも排湯されていました。20人は同時に入れそうなほどのキャパを有する大きな浴槽に対して、十分な量のお湯が供給されているようです。
お湯と接する岩風呂の表面には橙色に染まっており、しかも細かなトゲトゲにもびっしりと覆われています。湯船のお湯はやや緑色を帯びていますが、この日は空から強い日差しが降り注いでおり、その影響を受けてか、濃く明るい橙色に強く濁っているように見えました。平湯温泉らしい土類っぽい匂いや味とともに、少々の甘みや焦げたような感覚もあり、また湯口においては微かな硫黄臭も嗅ぎとれました。脱衣室に掲示されている温泉分析表の数値は加水後の検体を計測したものとなっており、加水により溶存物質が1g/kgを下回っちゃうため、単純温泉になってしまうのですが、加水前はナトリウム・カルシウム-炭酸水素塩・塩化物温泉であるはずです。加水されているものの、私の訪問時は少々熱めの湯加減となっており、私の後にやってきた若者たちは熱いお風呂に慣れていないのか、「うわっ、あちーよ」と唸りながら眉間に皺を寄せていました。
湯中では土類泉らしいギシギシと引っかかる浴感が得られるほか、肩までじっくり浸かっていると、皮膚の細かな皺一本一本に温泉成分の微粒子が入り込んでコーティングされてゆくかのような、しっとりとしたホールド感が全身を覆い、何とも言えない安堵感に満たされます。見た目には強く濁っていますが、そんな見た目に反し、シャキッとして、それでいてイヤミの少ない、マイルドな塩化土類泉と表現したくなる優しいお湯です。


「あぼうの湯」と山水の混合泉
単純温泉 47.5℃(湯口における温度) pH6.8 溶存物質0.910g/kg 成分総計1.084g/kg
Na+:129.8mg(57.85mval%), Mg++:13.8mg(11.63mval%), Ca++:47.8mg(24.44mval%), Fe++:3.4mg,
Cl-:132.2mg(37.05mval%), HCO3-:378.7mg(61.67mval%),
H2SiO3:166.8mg, CO2:173.4mg,
(平成25年3月13日)

平湯バスターミナルから徒歩3~4分
岐阜県高山市奥飛騨温泉郷平湯  地図

6:00~21:00(冬期8:00~19:00) 不定休
寸志(300円が目安)
ロッカー(100円有料)あり、他備品類なし

私の好み:★★+0.5
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平湯温泉 穂高荘倶楽部

2016年03月16日 | 岐阜県

昨年(2015年)初夏に乗鞍岳へ登山したのですが、その前夜に平湯温泉の「穂高荘倶楽部」で一晩を過ごしました。こちらは貸切風呂や露天風呂などを兼ね備えた大規模日帰り入浴施設であり、同系列の旅館「穂高荘 山がの湯」とお風呂を共有しているのですが、この日帰り入浴施設である「穂高荘倶楽部」でも夜を越すことが可能です。と言いますのも、入浴料に仮眠室の料金をプラスすれば、1900円(※)という格安価格で朝まで滞在することができるのです。早い話が、都市部のサウナ・スーパー銭湯・漫画喫茶みたいなシステムを、北アルプスの麓の観光地でも利用できちゃうわけです。しかも大きな温泉のお風呂に入り放題なのですから、ありがたいじゃありませんか。この時の乗鞍岳登山では日の出前に出発したかったので、大枚叩いて旅館に泊まるのがバカバカしかった私は、廉価に夜を越せるこちらの施設を利用することにしました。
(※)私が利用した時には、夕方以降の入浴料750円と仮眠室料金650円の合計1400円で朝まで滞在できたのですが、現在公式サイトでは1900円の料金しか案内されていません。料金体系が変わっちゃったのかな? あるいは夕方以降の料金って公にアナウンスされていないのかな?




フロントのカウンターに置かれている小さな券売機で料金を支払い、フロントのスタッフさんに券を手渡しますと、ロッカーキーと共にタオルや館内着など一式を手渡してくれます。更衣室のロッカーに荷物を収め、館内着に着替えてから館内を移動します。上画像はフロント前の休憩ホールを吹き抜けの上層階から撮った様子です。スパ銭やサウナみたいなリクライニングチェアがたくさん並んでいることがわかります。


 
地下には食堂もあるので、ここで夕食を摂ることも可能。私は牛丼とビールを注文しました。


 
こちらは仮眠室の様子。仮眠室には男女別や男女共用などいくつかのタイプがあり、この日はあいにく遮蔽性が高い造りの部屋が満室だったため、雑魚寝の部屋を利用することになったのですが、幸いなことに雑魚寝部屋は私以外に誰もおらず、広い部屋を独り占めすることができました。室内には寝袋用のマット、まくら、そして毛布が用意されています。館内はどこもかしこも、とっても綺麗。快適に一晩過ごせました。ただ、枕が高くて固かったのが唯一の難点かな…。


●内湯
 
ハイクラスなホテルと同等の広さと快適さを備えている脱衣室。アメニティ類も揃っており、使い勝手も良好です。


 
木材のぬくもりとタイルや石板といった実用的な建材をうまく混在させた浴室は、落ち着いた雰囲気を保ちながらも大変広々しており、しかもメンテナンスもよく行き届いていて、日帰り入浴施設の標準的なレベルを凌駕しています。後述する大きな温泉浴槽のほか、世のお父さん方が大好きなサウナや水風呂もありますよ。


 
洗い場ゾーンには計13基のシャワー付きカランが設置されており、各ブースの幅が広く確保されているのみならず、一箇所ずつパーテーションでセパレートされていますので、隣のお客さんとの干渉を気にせず利用できます。またアメニティもボディーソープのほか、スパ銭にありがちなリンスインシャンプーではなく、シャンプーとコンディショナーがちゃんと別個に用意されていました。


 
 
開放的な窓の下に、タイル張りながら太い木材で縁取られた大きな温泉の浴槽が2つ並んでL字を描いています。奥側(露天風呂出入口側)の浴槽はおおよそ15人サイズで、加水が多いのかちょっとぬるめ。一方、脱衣室出入口側の浴槽は25人近く入れそうな大容量であり、私の体感で42℃前後の万人受けする湯加減に調整されていました。なお後者の浴槽の底には泡風呂装置が埋め込まれていましたが、稼働はしていませんでした。両浴槽とも木組みの湯口からお湯が注がれており、循環の無い放流式の湯使いとなっています。


●露天風呂
 
日本庭園のような誂えの露天風呂は温泉街の中に設けられていますから、周囲には目隠しの塀が立てられていますが、敷地面積が広い上、周囲の山々が借景となっているため、そのような囲いが気にならず伸び伸び湯浴みできる開放的な環境でした。庭園の奥に池のような大きい岩風呂がお湯を湛えており、その2分の3ほどは東屋で覆われていました。


 
上2枚の画像は夜の露天風呂。温泉風情を考慮したライティングにより、明るすぎない落ち着いた雰囲気の中、のんびりと湯に浸かることができました。


 
暗くて見にくい画像でごめんなさい。露天風呂には岩の上や隙間など複数箇所からお湯の投入されており、そこから注がれるお湯は直に触れるのが躊躇われるほど激熱でした。露天風呂でも放流式の湯使いです。


 
熱いお湯が投入されている一方、加水も同時並行で行われており、広い湯船の槽内では、表面(上部)と底部(下部)で温冷分離が発生していました。施設側もそのことを分かっているのか、お風呂の岩には攪拌棒が置かれており、私はこれでしっかりとかき混ぜて、早暁のボンヤリとしたあかりで姿を見せはじめた山の稜線を眺めながら、朝ぼらけの湯浴みを楽しみました。

今回は明るい時間帯に利用できなかったので、お湯の見た目に関して自信を持った表現はできないのですが、薄い橙色を帯びた笹濁りを呈しているように見え、味や匂いからは平湯温泉らしい土類感が得られました。また湯口ではタマゴ臭に似た芳ばしい香りがほんのりとかぎとれました。ただ、加水がかなり多いらしく、味や匂い、そして浴感などお湯が持つ本来の特徴が総じて弱わっているように感じられました。ちなみに館内には温泉分析書が2枚掲示されており、いずれも同じ源泉名が記されているのですが、一方は加水前(源泉)、他方は加水後(浴室の湯口)における計測値であり、加水前はナトリウム・カルシウム-炭酸水素塩・塩化物温泉であったものが、入浴に適した温度へ調整するため加水することにより単純温泉にまで薄まってしまうことが一目瞭然になっていました。でも、こうして加水による泉質の変化をきちんと明示する施設側の誠実な姿勢は大変立派ですね。


 
浴室前の通路にも休憩スペースがあり、そこに設置された自販機で、湯上がりにビンの飛騨牛乳を一気飲み。うん、うまい!

加水量が多いので、源泉のお湯にこだわる方にはちょっと物足りないかもしれませんが、広く快適な環境で放流式の温泉に好きなだけ入れ、しかも廉価で夜を越せるという、なんともありがたい施設でした。なお今回は貸切風呂(別料金)は利用しておりません。


富貴の湯
(源泉採取口における分析)
ナトリウム・カルシウム-炭酸水素塩・塩化物温泉 70.1℃ pH6.7 370L/min(掘削動力揚湯) 溶存物質1.049g/kg 成分総計1.204g/kg
Na+:183.5mg(62.98mval%), Mg++:14.3mg, Ca++:57.1mg(22.49mval%), Fe++:1.8mg,
Cl-:204.6mg(45.25mval%), HS-:0.3mg, HCO3-:389.8mg(50.12mval%),
H2SiO3:128.0mg, HBO2:20.1mg,CO2:154.2mg, H2S:0.9mg,
(平成20年12月18日)

(源泉と谷水が混合した浴槽湯口における分析)
単純温泉 37.9℃ pH8.2 370L/min(掘削動力揚湯) 溶存物質0.839g/kg 成分総計0.846g/kg
Na+:140.6mg(61.20mval%), Mg++:11.2mg, Ca++:48.5mg(24.20mval%), Fe++:1.4mg,
Cl-:155.6mg(43.12mval%), HCO3-:313.2mg(50.39mval%),
H2SiO3:103.0mg, HBO2:15.4mg,CO2:7.3mg, H2S:0.1mg未満,
(平成20年12月18日)

平湯温泉バスターミナルから徒歩2~3分
岐阜県高山市奥飛騨温泉郷平湯  地図
0578-89-2306
ホームページ

曜日などで利用時間や定休などが異なるようです。料金や営業時間に関しては公式サイトをご覧ください。
ロッカー・シャンプー類・ドライヤーあり

私の好み:★★+0.5
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濁河温泉 湯の谷荘

2016年03月14日 | 岐阜県
昨年夏に拙ブログで岐阜県塩沢温泉の「湯元山荘跡露天風呂」が閉鎖されてしまったことを取り上げましたが、しばらく放置されて泥が溜まったその野湯で入浴した後は、どうしても体を綺麗にしたくなったので、ちょっと足を伸ばして濁河温泉へ向かうことにしました。

  
御嶽山の北側山腹を東西に走る県道435号線を走行していると、フロントガラスの目の前には穏やかな御嶽山が、そして車窓の北の彼方には白山連峰がなだらかに裾を広げていました。眼前で美しくそびえる御嶽山が、その前年(2014年)に恐ろしい惨禍をもたらしたとは信じられません。


 
さて御嶽山6合目のいで湯、濁河温泉に到着です。当地では日帰り入浴を受け入れている宿が多いものの、私の到着した時間が遅く、予め目をつけていた宿のほとんどは日帰りの受付時間を過ぎてしまっていたため、今回はまだ利用可能時間内だった「湯の谷荘」を訪うことにしました。


 
玄関で声を掛けて日帰り入浴をお願いしますと、快く受け入れてくださいました。玄関脇にある広間を右に見ながら、お風呂がある奥へと進んでゆきます。


 
建物は地形の傾斜に沿う形で建てられており、奥へ向かうに従って下の方へ段々になっていて、いくつかのステップを下ってゆくと、最下段の突き当たりにある浴室へとたどり着きました。二つのドアが並んでおり、男女の区別はドアに掛けられている笠に記されています。


 
脱衣室には4つのスチールロッカーが設置されていたのですが、カゴも積み重ねられていましたので、ロッカーに入れるのが面倒になった私は、先客に倣ってカゴに衣類を収め、そのカゴをそのまま床に直置きしちゃいました。浴室出入口のドア右には内湯や露天風呂の温度が掲示されており、数値を見る限りではどちらの浴槽もぬるめの湯加減となっているようでした。


 
タイル張りで実用的な造りの浴室には、窓下に浴槽がひとつ据えられているほか、壁に沿って洗い場が2箇所に分かれて配置されており、計3基のシャワー付きカランが設置されています。カランのお湯は真湯ですが、ボイラーのご機嫌が宜しくなかったのか、コックを開けてからお湯が出てくるまで若干のタイムラグがありました。なお女湯との仕切りには曇りガラスが嵌め込まれており、ちょっぴりエロティック♪


 
浴槽は(目測で)2m×3mの四角形でおおよそ4~5人サイズ。温泉成分の付着によるのか、表面は全体的にフラットで赤茶色に染まっているのですが、元々コンクリ打ちっ放しなのか、はたまた何らかの建材で加工されていたのに成分付着でその建材の表面が覆われてしまったのか、そのあたりの事情はよくわかりません。
浴槽の隅っこにはフェイクの観葉植物が置かれた湯口が設けられ、トポトポ音を響かせながらお湯が注がれており、窓下の溝からしっかりと排湯されていました。純然たる放流式の湯使いです。


 
内湯の洗い場左にある出入口から屋外へ出ると、深い緑に覆われた急峻な谷を直下に見下ろす立地に、岩造りの露天風呂が設けられていました。お宿の屋号はこの谷のことを指しているのかな? 谷に面して開けているロケーションなのですが、その急斜面には針葉樹が密生しているため、いまいち展望が利かず、また谷と反対側には駐車場があるため目隠しの塀が立てられており、谷の上という立地の割にはあまり開放感が得られません。ですからここでは展望を期待せず、森林浴をしながら湯浴みを楽しんだ方が良さそうですね。


 
露天岩風呂の上には鋼製の無骨な屋根が立てられており、雨天や雪の日でも湯浴みできるようになっているのですが、柱や梁に塗られたグリーンの塗装が妙にけばけばしく、緑豊かな自然環境の中でサイケデリックな存在感を放っていました。周囲の環境に馴染ませようとしてこの色をチョイスしたのかもしてませんが、却って不自然に浮いちゃっています。黒やこげ茶の方が良かったかもしれませんね。


 
露天の岩風呂は3~4人サイズ。内湯側にある供給口からお湯が注がれており、槽内の谷側に開けられた穴から排湯されていました。内湯同様、この露天も放流式の湯使いで間違いないでしょう。

お湯は薄いオレンジ色を帯びた微濁ですが、ほぼ透明と言っても差し支えないでしょう。湯中ではオレンジ色の粉状浮遊物が無数に待っており、浴槽の底にも沈殿しています。上画像で槽内に沈んでいるステップの石の色が違うのは、私が湯船に入ることによってお湯の沈殿が舞い上がったためです。内湯の湯口から出てくるお湯をテイスティングしてみますと、金気や石灰らしさがはっきり感じられ、炭酸の名残みたいな味も伝わってきます。湯中ではギシギシと引っかかる浴感があり、肩までしっかり浸かると、全身に毛布を掛けられているような重厚感に包まれました。なお脱衣室には内湯・露天ともに長湯できそうな湯温が書かれていましたが、実際に私が入浴したところ、内湯・露天のいずれも41~2℃はあり、入り応えと温まりを存分に得られる湯加減になっていました。


市営泉源の混合泉(市営G泉・濁河温泉・市営泉源の混合泉)
ナトリウム・カルシウム・マグネシウム-硫酸塩・炭酸水素塩温泉 51.9℃ pH6.3 759L/min(掘削自然湧出) 溶存物質2.4464g/kg 成分総計2.6735g/kg
Na+:341.3mg(46.58mval%), Mg++:86.9mg(22.43mval%), Ca++:151.8mg(23.75mval%), Fe++:4.4mg,
Cl-:139.1mg(13.58mval%), SO4--:619.3mg(44.66mval%), HCO3-:725.3mg(41.20mval%),
H2SiO3:282.9mg, CO2:226.9mg, H2S:0.2mg,
(平成18年3月)

岐阜県下呂市小坂町大字落合2376-1  地図
0576-62-3037
ホームページ

日帰り入浴時間不明
500円
ロッカー・シャンプー類・ドライヤーあり

私の好み:★★
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