火の国熊本の小国郷は数多の温泉に恵まれた温泉ファン垂涎の地。犬も歩けば…状態であちらこちらに温泉浴場が存在しています。阿蘇から国道387号線を北上し、北里柴三郎記念館付近を過ぎてから在地に入ったところにあるのが今回紹介する奴留湯温泉で、温泉地といっ
ても宿はなく共同浴場が1箇所ポツンとあるだけです。
瓦屋根ながらコンクリ打ちっぱなしのこじんまりとした建物で、いかにも公共の施設らしく、あまり味気のない外観だったので、正直入る前は期待していませんでした。無人なので料金入れに100円玉2枚を投入して中へ。脱衣所もいかにも共同浴場といった印象の、棚しかないシンプルな造り。訪問時はお昼をちょっとまわった頃で、先客ゼロ。引き戸を開けて浴室に入ると、硫黄の芳しい香りが鼻をついてくるではありませんか。そして目を奪われたのが音を立てて溢れるオーバーフロー。二つ設けられた湯口からふんだんにお湯が注がれ、浴槽から洗い場に向かって、まるで川のような状態になっています。これはすごい。
「ぬるゆ」という名称の通りお湯はぬるく、源泉は38℃のようですが、浴槽では確実にそれ以下。このため10月から5月の午後3時半から夜9時半までは加温されるそうです。でも加温されていない源泉そのままのお湯ならば、いつまでもじっと長湯していられるので、お湯の良さを堪能したければ非加熱の時間・時期に訪問することをおすすめします。
浴槽は入浴用と上がり湯用の二つに分かれています。手前側の槽の底にはゴロゴロした石が敷かれており、石は硫黄の析出でうっすら白くなっていました。一方上がり湯槽はすのこ敷きです。湯口から出るお湯は無色透明、匂いは先日の通り温泉ファンの心を満足させる硫黄の香り、口に含むとはじめほんのり甘く、その後たまご味、おくれてほろ苦さが来ます。お湯の中では白い繊維状の湯の花がちらほら。お湯の中でじっとしているとやがて全身に気泡がびっしり付着。お湯が新鮮である証拠ですね。硫黄感+ぬるめ+気泡+大量かけ流しという、実にすばらしい組み合わせです。
ちなみに奴留湯という名前については、むかしお殿様が当地(北里)を訪れた際、付き添った下級武士(いわゆる奴)がここに入って疲れを癒した、でもぬるいので長湯してしまいなかなか上がることができなかったので、奴を留めるお湯ということでこの名前と表記になったんだそうです。まぁこのお話は後付けなんでしょうけど、奴さんでなくとも、温泉ファンなら誰しもが留まっていたいと思うであろうおすすめの浴場です。
硫黄泉 38℃
熊本県阿蘇郡小国町北里2284 地図
(0967-46-2111小国町地域振興課)
備品類なし
200円
湯屋裏手左側に駐車場あり
私の好み:★★★