温泉逍遥

思いつきで巡った各地の温泉(主に日帰り温泉)を写真と共に紹介します。取り上げるのは原則的に源泉掛け流しの温泉です。

下部温泉・湯沢温泉郷 不二ホテル

2018年01月21日 | 山梨県
 
前回記事に引き続き、山梨県南部に湧くぬる湯の温泉を巡ります。厳しい寒さが続いているというのに、季節外れのネタが続いて申し訳ございません。

今回訪ねるのは下部温泉の温泉街から外れた田園にポツンと佇む「不二ホテル」です。場所としては身延線波高島駅の近くであり、有名な下部温泉とはやや離れているのですが、お宿の看板や公式サイトでは「下部温泉 湯沢温泉郷」と称しているので、それに倣って拙ブログでも同じように呼ぶことにします。波高島駅から国道300号の旧道(本栖みち)を北上してゆくと、途中で温泉の看板が現れます。それに従って右折して身延線の線路を潜ると、車一台分の幅員しかない細い道が伸びています。この先はこれといった看板がなく、にもかかわらず狭い路地を進んでは曲がることを繰り返すので、カーナビが無い場合は迷うことなく一発で辿り着くのが難しいかもしれません。


 
線路を潜ってから400~500メートルでお宿の駐車場に辿り着きました。この湯沢温泉郷には、今回訪ねる「不二ホテル」のほか、「長生館」というかなり渋い佇まいの旅館も営業しており、この2軒を総称して湯沢温泉郷と呼んでいるのかと思われます。


 
「長生館」の駐車場の前に建つ民家然とした建物が「不二ホテル」。こぢんまりとしたお宿なのかと想像しながら玄関の引き戸を開けると、その内側に広がっている玄関ホールは予想を覆すスペースがあり、質素な外観とは対照的な館内の様子に驚いてしまいました。
ホテルですから宿泊業が本業ですが、今回私は日帰り入浴での利用です。帳場で宿の方に入浴料金を支払い、奥のお風呂へと向かいます。

なお浴場は写真厳禁ですので、今回の記事では文書だけの紹介となります。あしからずご了承ください。

古いながらもよくお手入れされている脱衣室。男湯の場合は右の壁に沿ってロッカーが設置され、左側に窓と洗面台が並んでいます。窓からは後述する露天風呂が見えるのですが、この露天は男女混浴ですので、脱衣室とはいえ下手に携帯電話などを操作しない方がよいでしょう(浴場内撮影厳禁になっているのもこうした事情によるものと思われます)。

窓から陽光が降り注いで明るい浴室は、床に伊豆青石が用いられており、歩くと足裏から気持ち良い感触が伝わってきます。この室内には大小の浴槽が一つずつ据えられているほか、壁に沿って洗い場が配置されており、6基のシャワー付きカランが一列に並んでいます。なおカランから出てくるお湯は真湯です。

浴槽は大小それぞれ一つずつ。隣り合って設けられています。いずれも黒い御影石で縁取り去れており、浴槽内はタイル貼り。タイルの色は浴槽によって異なっています。洗い場に近い小さな浴槽は加温浴槽。3~4人サイズでタイルの色はベージュ。お湯は42℃前後に加温の上、循環されており、底面にて強力に吸引されていました。
一方、窓の下に据えられている大きな浴槽は小浴槽の倍近い大きさがあり、タイルの色は淡いブルー。そんな寒色のタイルが表しているように、大きな主浴槽に張られているのは、小浴槽よりもぬるい35℃前後のお湯です。浴槽の底には強力にお湯を吸引する吸い込み口があり、柱状節理のような形状をした湯口から加温済と思しきお湯が投入されていました。源泉温度は27.2℃であり、また湧出量は毎分25.6リットルと決して多くないため、この湯口から供給されているお湯は循環加温されたお湯なのでしょう。しかしながら、この主浴槽に関しては、石の湯口の上に細い竹樋が取り付けられており、そこから冷たいながらタマゴ感を伴う水が浴槽へ注がれていましたので、おそらくこれが非加温の生源泉であり、つまり主浴槽は加温循環と非加温放流式を併用した湯使いと捉えてよいのかと思われます。

さて、内湯から屋外へ出てみましょう。日本庭園のような美しい環境の中でお湯を湛えているのが露天の岩風呂です。先述のようにこの露天は混浴であり、男女両浴室に挟まれる形で設けられています。一応露天風呂の真ん中には仕切りが立てられているので、他人の存在が気になる場合は仕切りを背にして湯浴みするとよいでしょう。
私が訪れた時は、清掃して間もなかったのか、まだ完全にお湯が溜まっておらず、寝そべらないと肩までお湯に浸かれませんでしたが、それでも私は何としてでもこの湯船に入りたかったのです。なぜなら露天風呂は非加温の源泉掛け流しであるから。27℃しかない源泉のお湯は、ぬるいを通り越して冷たいと表現すべき温度ですが、真夏の暑いときに入ると非常に気持ち良く、心身ともにさっぱり爽快となりました。

非加温の生源泉は無色透明で、湯中には綿埃のような浮遊物や、薄くて白っぽいゼリー状の物体がチラホラ舞っています。また湯船の中の肌には少々の気泡が付着します。内湯の湯口に置かれたコップで生源泉を口に含んでみますと、ゆで卵の卵黄のような味とともにほろ苦みも感じられ、また弱いタマゴ臭も嗅ぎ取れました。タマゴ感が得られたので、てっきり硫化水素イオンやチオ硫酸イオンが一定程度含まれているのかと思いきや、分析表の数値にはイオウ感をもたらすような要素の数値が悉く"0"と表記されており、実際のお湯と分析表の数値との間に不可解な乖離が見られるのでした。他の温泉でも時折このような知覚的特徴と分析書の数値で大きく食い違うことがありますが、なぜこうなってしまうのでしょう…。
とはいえ、そんな屁理屈を気にするのは私のような偏屈な男だけ。アルカリ性のぬる湯はスルスルスベスベの大変滑らかで気持ち良い浴感をもたらしてくれますし、特に暑い夏には極上の清涼が得られ、お風呂上がりもさっぱりとした爽快感が持続します。そんな気持ち良さを求めて他県からもお客さんが訪れるらしく、この日も私以外に群馬県や埼玉県からのお客さんがいらっしゃいました。

今年も数ヶ月後には暑い夏がやってきます。暑さで心身がバテそうなとき、もしお時間があれば涼を求めてこちらへ足を伸ばしてみるのはいかがでしょうか。


表下部温泉
アルカリ性単純温泉 27.2℃ pH9.6 25.6L/min(掘削自噴) 溶存物質0.257g/kg 成分総計0.257g/kg
Na+:69.7mg(81.45mval%), Ca++:12.5mg(16.67mval%),
Cl-:109.2mg(83.47mval%), OH-:0.6mg, HCO3-:18.8mg(8.40mval%),
H2SiO3:33.8mg,
(平成24年6月4日)

JR身延線・波高島駅より徒歩10分
山梨県南巨摩郡身延町上之平1525  地図
0556-36-0219
ホームページ

日帰り入浴9:00~20:00(最終受付19:00)
第4月曜および第4火曜定休(第5週目のある月は第5月曜・火曜が休業)
500円/1時間(半日や1日プランあり。詳しくは公式サイトでご確認ください)
ロッカー・シャンプー類・ドライヤーあり

私の好み:★★



コメント (3)
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