(2021年9月訪問)
小諸の在にポツンと佇む名湯「中棚温泉 中棚荘」で日帰り入浴してまいりました。
場所は小諸市体育館の近くで、観光地とは思えないごくごく普通の集落の中にある旅館なのですが、島崎藤村ゆかりの老舗旅館でああり、旧館は重文に指定されているほどです。旧館の隣に位置する本館が現在の営業施設で、こちらも実に良い雰囲気。その2階にある受付で日帰り入浴をお願いすると、スタッフの方がとても丁寧に対応してくださいました。
千曲川左岸の傾斜地に数棟の建物が分かれて建てられており、浴場がある建物は傾斜地の上の方に位置しています。このためお風呂へ向かう際には受付があるフロアから階段をあがり、渡り廊下を進んで宿泊棟に移り、更にその宿泊棟の途中から山側の階段へ逸れて階段を登ってゆくことになります。
男女別のお風呂に到着しました。なおここまで上がってくる階段の途中には、温泉ファンの心を惹き付ける設備があるのですが、それについては記事の後半でご紹介します。
館内には現在使用している源泉を掘削する際に使われたボーリングピットが展示されていました。1988年に地下600メートルまで掘り進めたんだそうです。なおこちらのお宿で使われている源泉は2つあるのですが、1号泉は湧出量が少ないため、2号泉が主力となっているようです。
こちらのお風呂は、旅館にしては珍しく、更衣室と内湯の間に仕切りが無い構造です。野沢温泉や別府温泉の共同浴場みたいな構造と表現したら良いのでしょうか。更衣室は畳敷きで、棚が無い代わりに籠がたくさん用意されています。着替えながら建物の上部を見上げると、太くて立派な梁や梁が建物を支えていることがわかります。しかも天井も高くて広々。この湯屋の建築にはさぞかしお金がかかっているのでしょう。なお室内にロッカーは無いので貴重品は予めフロントへ預けておきましょう。
更衣エリアの斜向かいには洗い場が配置されており、シャワー付きカランが5基並んでいます。なおシャワーから出てくるお湯は源泉使用です。湯船で温泉に浸かることは当然気持ち良いのですが、シャワーで源泉のお湯を浴びるのも、湯船とはちょっと違った気持ち良さや嬉しさがありますよね。
内湯の浴槽は黒光りしており、寸法こそ失念してしまいましたが、重厚感があって大きく立派なものです。この湯船にはちょっと熱め(私の体感で42~43℃でしょうか)に加温されたお湯が注がれています。この内湯における湯使いはかけ流しと循環の併用であり、それゆえかオーバーフローは若干少なめです。
浴槽中央の壺みたいなところからお湯が噴き上がっているのですが、これはおそらく生源泉ではないかと思われます(そう推測する理由は後述)。この壺からの噴き上がるお湯に加えて、浴槽内にて循環加温したお湯も投入されており、浴槽に浸かると源泉由来のタマゴ臭とともに消毒の塩素臭が混ざったような感じで湯面から匂いが漂っていました。
千曲川を見下ろす河岸に設けられた露天風呂。木立で若干視界が遮られるものの、梢の間から千曲川が流れる一帯を見下ろすことができ、緑に抱かれた静かで清々しいロケーションです。露天の周りに立つ木々は落葉樹なので、新緑、紅葉、そして冬といったように季節によっても楽しめるのではないでしょうか。
この露天風呂には2つの浴槽があり、それぞれ2~3人サイズ。奥の浴槽は打たせ湯が設けられています。一方、手前側の浴槽には湯口があり、こちらに落とされたお湯は、打たせ湯がある奥の湯船へと流れていきます。
循環併用の内湯と異なり、露天風呂は循環の無い放流式(かけ流し)の湯使いであり(若干消毒しているかと思われます)、私の訪問日はどうやら非加温らしいので、長湯したくなる心地よい湯加減になっていました。もちろん打たせ湯も源泉のお湯です。
湯口がある手前側の浴槽には非加温の生源泉と加温された源泉がそれぞれ別のパイプから注がれているのですが、生源泉の方からは気泡がたくさん出ており、この浴槽に入ると全身にたくさん気泡が付着します。気泡マニアの方は興奮すること間違いありません。湯口からはふんわりタマゴ臭が放たれ、お湯を口に含むとタマゴ味、そしてアルカリ泉的な微収斂が感じられます。なお上述で内湯の壺のような湯口から噴き上がるお湯は生源泉ではないかと推測した理由は、そのお湯からも露天手前側浴槽の湯口で感じ取った感覚と同じものを得たからです。
露天両浴槽に浸かるとツルツルスベスベの滑らかな浴感がしっかり得られ、しかも微睡みを誘うような絶妙な湯加減がキープされており、実に素晴らしいお湯です。
当記事の前半で、浴場まで上がってくる階段の途中には、温泉ファンの心を惹き付ける設備がある、と申しましたが、その設備とは飲泉場です。源泉から近い位置で手が加えられていない生の源泉を味わうことができるため、湧出したての源泉の姿を感じることができる貴重な設備です。ここのお湯を実際に飲んでみると、しっかりとしたタマゴ味及びタマゴ臭があり、また微収斂もはっきり感じられます。お風呂のお湯と違って塩素入っていないので、源泉のお湯の知覚的特徴を知りたいならばこの飲泉場が最適です。
雰囲気もお湯もブリリアントなこちらのお宿。次回訪問時は是非宿泊してゆっくり過ごしたいものです。
中棚温泉1
いわゆる規定泉(メタケイ酸) 12.5℃ pH7.5 2.8L/min(自然湧出) 溶存物質0.4228g/kg 成分総計0.4570g/kg
Na+:20.8mg(19.21mval%), Mg++:15.3mg(26.89mval%), Ca++:43.6mg(46.53mval%), Fe++:5.2mg,
Cl-:30.9mg(18.56mval%), SO4--:38.8mg,(17.28mval%), HCO3-:182.8mg(63.99mval%),
H2SiO3:79.3mg,
(令和3年2月25日)
中棚温泉2
アルカリ性単純温泉 37.8℃ pH8.7 189L/min(掘削動力揚湯) 溶存物質0.4918g/kg 成分総計0.4918g/kg
Na+:123.9mg(95.06mval%),
Cl-:56.4mg(27.76mval%), HS-:0.6mg, HCO3-:228.5mg(65.33mval%), CO3--:9.0mg,
H2SiO3:58.1mg,
(令和3年2月25日)
長野県小諸市乙1210
0267-22-1511
ホームページ
日帰り入浴11:30~14:00受付終了
1000円
シャンプー類・ドライヤーあり、ロッカー無し(フロント預かり)
私の好み:★★★