春のような日差しの下、探し物をして街をさまよう。何年も前に閉じたタバコ屋の前で、老人が杖を手に、横を向いて日向ぼっこをしている。私は脇道に入る。探し物はなかなか見つからない。ぐるぐると路地を回って元に戻ると、老人はまだ日向ぼっこを続けている。多少この老人が憎くなる。横を向いた鷲鼻がひときわ大きく見える。どんどん大きく見える。まるでインディアンの顔に似た一枚岩の砦のように。そうだ、と私は愕然として悟る。この横を向いた老人を乗り越えないと、私の探し物は見つからないのだ。彼の立ちふさがる向こうに、その何かはあるのだ・・・・。しかし、彼に立ち向かっていくことはできない。そんなことはまだまだ、私にはとてもできない。老人は身動き一つしない。車も通らない。通りは壊れたおもちゃのように静かである。
春のような日差しの下、探し物を探す動機すら見失って、私は呆然と道にたたずむ。
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