旧年度が終わった。年度の終わりにはポールジローと去年の暮れあたりから決めていたので、仕事が終わったその足でバーへ。その足と言っても距離がある。よって自転車である。自転車で飲みに行き、自転車で坂道を駆け上り、帰宅する。普段の行き帰りには車を使うので、なかなか過酷な行事である。それでもバーへ行く。太ももが急性筋肉痛になってでも(そうか、筋肉痛はだいたい急性のものか)、バーに行く。家人をダイニングテーブルに頬杖つきながら待たせてでも、バーへ行く。立派なことである。こういう輩はとうてい長生きできまい。
「何だかさ」
掌に載せたグラスが温かみを失うころに、ぽつりとつぶやく。
「たとえば、高校に入った子が卒業していく。つまりそれだけで三年経ったんだ」
バーテンダーはナプキンを動かす手を止めない。私も相槌を期待していない。
私はしみたれた風に一口すする。
「こっちは何にも変わってないんだ。見送るだけだよ。いつも見送ってばかりいる仕事だ。」
────なるほど。
「立ち止っていると、年をとるね」
一杯のポールジローは吝嗇してもすぐに無くなった。私はしょざいなく店内を二度見渡してから、鞄を持って立ち上がった。
「年度の終わりにポールジローだよ」
さて、早く帰らなければいけない。やはり何といっても、家人を待たせるのは怖いことであるから。
「何だかさ」
掌に載せたグラスが温かみを失うころに、ぽつりとつぶやく。
「たとえば、高校に入った子が卒業していく。つまりそれだけで三年経ったんだ」
バーテンダーはナプキンを動かす手を止めない。私も相槌を期待していない。
私はしみたれた風に一口すする。
「こっちは何にも変わってないんだ。見送るだけだよ。いつも見送ってばかりいる仕事だ。」
────なるほど。
「立ち止っていると、年をとるね」
一杯のポールジローは吝嗇してもすぐに無くなった。私はしょざいなく店内を二度見渡してから、鞄を持って立ち上がった。
「年度の終わりにポールジローだよ」
さて、早く帰らなければいけない。やはり何といっても、家人を待たせるのは怖いことであるから。
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