「この度はご愁傷様です。私は亡き息子さんと同じく、粕漬けにする学問を仕事としている者でして」
「あんたも哲学か」
「まあ哲学です。先週学会の仕事で上京した際、こちらに御呼ばれになりました。宇津木君とはそれ以前から懇意にしていただいていた者です。ちょっと御焼香をいいですかな」
「馬鹿野郎、わしは邦広と一対一で話をしてるんだ」
馬鹿野郎が挨拶の叔父でも、さすがに行き過ぎである。堪らず声をかけたのは、美咲である。
博史ではなく彼女が喪主らしいから、一応喪主としての勤めを意識したのであろう。
「叔父さん。いい加減にしてください。すみません、これは故人の叔父です。すみません、何分酔ってますので」
「馬鹿野郎、大事な甥が死んだのに酔っ払って何が悪いんだ。死んだやつにゃ、哲学より念仏だろうが。坊主をもう一度呼び返せ。あんなおざなりの読経で済ませやがって。あれで三十万か? いやこりゃ不謹慎。不謹慎だが、しかし馬鹿野郎ってんだ。美咲さん、美咲さん、あんたも亡き夫のことを悲しむなら、酔え。いや済みません、ええと、済みませんなあ。御仁、からすみさんとか申されたっけなあ」
「唐島です。私は酒のあてじゃありませんのでね」
失笑がまた広がる。私の通夜だというのに場は和やかになるばかりである。
(小出し小出し)
「あんたも哲学か」
「まあ哲学です。先週学会の仕事で上京した際、こちらに御呼ばれになりました。宇津木君とはそれ以前から懇意にしていただいていた者です。ちょっと御焼香をいいですかな」
「馬鹿野郎、わしは邦広と一対一で話をしてるんだ」
馬鹿野郎が挨拶の叔父でも、さすがに行き過ぎである。堪らず声をかけたのは、美咲である。
博史ではなく彼女が喪主らしいから、一応喪主としての勤めを意識したのであろう。
「叔父さん。いい加減にしてください。すみません、これは故人の叔父です。すみません、何分酔ってますので」
「馬鹿野郎、大事な甥が死んだのに酔っ払って何が悪いんだ。死んだやつにゃ、哲学より念仏だろうが。坊主をもう一度呼び返せ。あんなおざなりの読経で済ませやがって。あれで三十万か? いやこりゃ不謹慎。不謹慎だが、しかし馬鹿野郎ってんだ。美咲さん、美咲さん、あんたも亡き夫のことを悲しむなら、酔え。いや済みません、ええと、済みませんなあ。御仁、からすみさんとか申されたっけなあ」
「唐島です。私は酒のあてじゃありませんのでね」
失笑がまた広がる。私の通夜だというのに場は和やかになるばかりである。
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