経済なんでも研究会

激動する経済を斬新な視点で斬るブログ。学生さんの就職準備に最適、若手の営業マンが読めば、周囲の人と差が付きます。

「介入する理由」を 初めて説明

2024-07-17 07:55:24 | 円相場
◇ 日銀はなぜ傍観しているのか? = 「輸入物価の上昇で、普通に生きている人たちの生活が脅かされるとしたら問題だ」--為替介入の指揮官である神田財務官は12日、記者団にこう語った。相変わらず為替介入を実施したかどうかには答えなかったが、為替介入の目的について初めて言及した。これまでは「投機筋の参入で相場が乱高下することは好ましくない」と説明してきた介入の理由を、ようやく‟輸入物価の上昇”に変更したことにもなる。

円ベースの輸入物価は、この6月に前年比9.5%上昇した。ところが、このうちの9.2%分は為替要因によるもの。こうした要因を放っておくと、いくら賃上げをしても物価高に追い付けない。実質賃金がプラスにならない可能性があると、政府は心配し始めた。これが神田財務官の発言につながったと、日経新聞は解説している。

政府が為替市場でドル売り・円買いの介入をする原資は、財務省が管理している外貨準備。1度の介入で、3兆ドル-5兆ドルを使っているようだ。こんな大事な資産まで使って介入するわけだが、それでも効果は長続きしない。ムダな施策だから、止めた方がいいという批判も少なくない。にもかかわらず介入するのは、物価を下げて国民の生活を楽にするため。政府がその目的を明確にした意味はきわめて大きい。

「利上げする条件は整いつつある」--とでも日銀総裁がつぶやくだけで、円相場は5円も上昇するだろう。政府が大切な外貨準備を使ってまで物価を下げようとしているのに、日銀は沈黙のまま。相変わらず「円安は日本経済にとってプラス」と考えているのだろうか。この問題に関する政府と日銀の相違が、急速に目立ってきた。

        ≪17日の日経平均 = 下げ -177.39円≫

        ≪18日の日経平均は? 予想 = 下げ≫
   

今週のポイント

2024-07-15 07:46:15 | 株価
◇ 企業業績と円相場が握る東京市場 = ダウ平均は先週625ドルの値上がり。終り値は4万0001ドルで、再び4万ドル台を取り戻した。火曜日にはSP500が、水曜日にはナスダックが史上最高値を更新している。パウエルFRB議長が議会で「もはや景気は過熱していない」と証言。9月の利下げが確実になったという見方が浸透。さらに6月の消費者物価が上昇幅を縮小したことで、株価が押し上げられた。

日経平均は先週278円の値上がり。終り値は4万1191円だった。しかし火-木曜日は3日間で1443円も急騰したあと、金曜日には1033円とことし最大の下げ。波乱に満ちた1週間だった。アメリカで消費者物価の鈍化が発表されたのに合わせて、政府がドル売り介入を実施したため、円相場が3円以上も上昇。大幅高の反動とも重なって、週末には売りが集中した。

9月の利下げがほぼ確定したため、ニューヨーク市場の関心は「年内にもう1度の利下げがあるかどうか」と「バイデン大統領の進退」に移りそうだ。一方、東京市場では「最近の株高はバブルかどうか」の論争が起きそうな雲行き。この点については今月下旬にピークを迎える決算発表が焦点に。また円相場がさらに円高に進むかどうか。この2点が株価を動かすことになりそうだ。

今週は16日に、5月の第3次産業活動指数。18日に、6月の貿易統計。19日に、6月の消費者物価。アメリカでは16日に、6月の小売り売上高、7月のNAHB住宅市場指数。17日に、6月の住宅着工戸数、工業生産。また中国が18日に、4-6月期のGDP速報、6月の鉱工業生産、小売り売上高、固定資産投資額を発表する。

       ≪16日の日経平均は? 予想 = 上げ≫

利上げは 今月末? : 日本銀行

2024-07-13 07:30:36 | 金利
◇ 逃すとチャンスなくなる = 日銀が10日に発表した6月の企業物価は、前年比2.9%の上昇だった。5月の2.6%上昇より、上昇率が拡大した。企業物価というのは、企業間で取引されるモノの価格動向。内訳をみると、電気・ガス・水道が0.1%の上昇。石炭・石油製品が4.5%の上昇だった。電気・ガスは政府の補助金が半減されたため、5月の7.2%下落から大きく上昇した。一方、企業向けサービス価格も5月は前年比2.5%の上昇。人件費の増加を反映して、宿泊サービス業は12.9%も上昇している。

企業間で取引されるモノやサービスの価格上昇は、いずれ消費者物価に転嫁される。このうちモノの価格は政府の補助金によって判りにくくなっているが、補助金がなければ上昇率は拡大しつつあるようだ。またサービス価格は人件費の増加が反映され、これまた上昇スピードが速まる可能性が高い。肝心の消費者物価は5月で前年比2.8%の上昇。まだ落ち着いているが、これから企業物価の影響を受けそうだ。

こんな状態にあって、慎重な日銀としては大いに迷うだろう。しかし7月の政策決定会合で利上げを見送ると、大変なことになる。日銀は政策決定会合の開催を7月、9月、10月、12月と決めている。ここで9月は自民党の総裁選挙があるから、利上げは難しそうだ。したがって7月に利上げしておかないと、10月まで動きが取れない。その間にアメリカが利下げをすると、まことに格好が悪いことになってしまう。

幸い現在は、株式市場が絶好調だ。いま利上げしても、株式投資家から文句は来ないだろう。だから今月30-31日に開く決定会合で、いま0%の政策金利を0.25%に引き上げるしかない。その結果、円の対ドル相場は10円近く上昇するかもしれない。経済なんでも研究会はこう考えたのだが、はたして・・・。

        ≪12日の日経平均 = 下げ -1033.34円≫

        【今週の日経平均予想 = 3勝2敗】    
      


「金利のある時代」を生きる チエ  (下)

2024-07-12 07:00:55 | 金利
◇ 複利計算の怖さを知ること = いま日本は「金利のない世界」から「金利のある世界」への移行を始めたところ。なんだが未知の世界に入って行くようだが、もともと「金利のある世界」の方が正常な状態。無理やり金利をゼロにした日銀の政策の方が、異常だったと言えるだろう。しかし、そのゼロ金利時代が10年も続いたため、戸惑う人も多いに違いない。

中央銀行は一般に、インフレを抑え込むために政策金利を引き上げる。しかし大幅な引き上げは副作用も大きいから、小幅な引き上げを何回も続けることが多い。日銀が今回、どこまで金利を引き上げるかはまだ予測できない。だが1%や2%で止まるとは考えにくい。アメリカの場合もFRBは、政策金利をゼロから5.25%まで引き上げた。では1%と5%では、どんな違いがあるのだろう。

年利1%の債券Aと年利5%の債券Bがあったとする。これをみて「利息は5倍の差だな」と考えては落第。たしかに最初の1年だけは5倍の差になるが、2年目以降については加速度的にその差が拡大する。たとえば100万円の債券Aの元利合計は1年後で101万円、5年後は105万1010円。これに対して債券Bの元利合計は1年後で105万円だが、5年後は127万6281円に拡大する。これは利息で増えた分にも、毎年の利率が適用されるためだ。これが複利計算。

見方を変えてみよう。元金100万円が1%の金利で200万円になるまでには、69年半かかる。しかし5%の金利だと14年あまり。10%の金利なら7.27年で達成される。この複利計算は、おカネを借りた場合にも適用されるから、気を付けないと大変なことになる。ゼロ金利時代にはほとんど心配する必要もなかったが、これからは貯める場合にも借りる場合にも、最も注意しなければならない点だ。

        ≪11日の日経平均 = 上げ +392.03円≫

        ≪12日の日経平均は? 予想 = 下げ≫

「金利のある時代」を生きる チエ  (上)

2024-07-11 07:27:37 | 金利
◇ “金利”を知らない30歳未満の若い人 = 利上げの季節が10年ぶりにやってきた。まず普通預金の金利。大手銀行は年0.001%だった金利を0.02%に引き上げ、地方銀行も追随した。これまでは100万円を預けておいても年に10円の利子しか付かなかったが、これからは200円の利子が付く。また定期預金の金利も引き上げられた。このほか国債や社債の金利など、いろいろな分野での金利引き上げがいま進行中だ。

おカネを借りるときの金利も上昇している。日銀の集計によると、金融機関が企業に貸し出す際の金利は5月の平均で0.818%。1月の0.781%から、わずかに上昇した。また個人が借りる住宅ローンについても、大手銀行は固定型の基準金利を6月から引き上げた。引き上げ幅は銀行によって異なり、0.05%-0.14%となっている。このほか消費者ローン金利なども、引き上げられた。

利上げの風が吹き始めたきっかけは、日銀が3月にマイナス金利政策を解除したこと。政策金利をマイナス0.1%から0%に引き上げた。こんな小さな変更でも、その影響はきわめて大きい。経済界では日銀がさらに金利を引き上げるだろうという観測が一気に強まり、各方面で利上げが始まった。日銀は7月30-31日に開く政策決定会合で、国債買い入れの縮小計画を決める。市場では同時に、政策金利を0.25%に引き上げるのではないかという見方が強まっている。

仮に政策金利が0.25%に引き上げられると、預金金利や貸出金利はもっと大きく引き上げられるに違いない。そうなれば預金金利も1%を超えてくるだろう。ようやく「金利のある世界」に戻るわけだ。しかし、この10年間、日本は「金利のない時代」を過ごしてきた。つまり30歳未満の若い人は、金利と初めて付き合うことになる。そういう人たちが知らないと損をする「金利のある世界」を生きるためのチエとは・・・。

                    (続きは明日)

        ≪10日の日経平均 = 上げ +251.82円≫

        ≪11日の日経平均は? 予想 = 上げ≫
  

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