経済なんでも研究会

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パウエルFRB議長の 懊悩

2024-07-09 07:56:51 | アメリカ
◇ 利下げの条件が整わない焦り = パウエルFRB議長は今週、議会で金融政策について証言する。注目のマトは、言わずと知れた利下げの時期。だがパウエル議長は、これまで通り「インフレの鈍化が十分でなく、利下げしてもいいという確信が持てない」と説明するしかないだろう。議員や市場関係者はがっかりするかもしれないが、いちばん残念に思っているのは、パウエルさんご自身。パウエル氏は「出来るものなら、7月にも利下げしたい」と腹の底では考えているのではないだろうか。

たしかにインフレの鈍化は、確認しがたい。それでも4-6月の農業を除く雇用者の増加数は、平均17万7000人にまで落ちてきた。コロナ前15-19年平均の19万3000人を下回っている。平均時給も6月は前年比3.9%の増加で、5月の4.1%増加より縮小した。サプライ・マネジメント協会によるサービス業の業況判断指数も、6月は大幅に低下している。肝心の消費者物価は5月が前年比3.3%の上昇。11日に発表される6月の数値がこれを下回れば、かなり状況が変わるだろう。

パウエル議長が早く利下げしたいと考えているのは、仮に9月の利下げだと11月初めの大統領選挙までにその効果が表れない。7月に利下げしなければ、間に合わないのだ。パウエル議長がバイデン大統領の再選を願っているかどうかは、判らない。しかしトランプ前大統領は「パウエルはクビだ」と明言しているから、共和党を応援する気にはならないに違いない。

ECB(ヨーロッパ中央銀行)のラガルド総裁のように、柔軟性のある政策に転換する手もないではない。ラガルド総裁は「利下げをしたが、インフレが再燃すれば直ちに利上げする」と、きわめて柔軟な姿勢を打ち出した。だがFRBの場合は、パウエル議長自身が市場との対話によって政策を進めることを指導してきた。いまさら柔軟派に乗り換えることは出来ない。あとは6月の消費者物価をみて、7月の利下げを決断しうるかどうか。

        ≪9日の日経平均 = 上げ +789.47円≫

        ≪10日の日経平均は? 予想 = 下げ≫


今週のポイント

2024-07-08 08:20:03 | 株価
◇ 壮観! 日米で史上最高値ラッシュ = ダウ平均は先週257ドルの値上がり。終り値は3万9376ドルで、5月に付けた最高値まであと600ドルあまりに接近した。一方、ナスダックとSP500指数は、そろって火曜日に史上最高値を更新している。雇用や非製造業の景況判断が弱含みとなったほかは、あまり大きな上げ材料は見当たらない。にもかかわらず株価が上昇したのは、半導体関連が相変わらず相場を支えたこと。それに広い分野で、出遅れ株が物色されたためだと思われる。

日経平均は先週1329円の大幅な値上がり。木曜日には終り値で4万0914円、史上最高値を3か月ぶりに更新した。同時にTOPIXも2898.47に上昇、こちらは34年7か月ぶりの新高値となった。半導体をはじめ製造業や金融など、広範な分野が買われている。週初は円相場が161円72銭と38年ぶりの水準にまで下落したが、輸出関連株が上昇しただけで、株価全体への悪影響は全くなかった。

とにかくニューヨークでも東京でも、株価の史上最高値が続出。記念すべき1週間だった。今週は利食いが増えそうだが、それにしても株式市場は新たな上げ局面を迎えたのか。それともバブルの末期なのか。その答えは、やはり企業の業績見通しから導き出すしかない。年内あるいは年度内の見通しが固まる8月末には、その答えが出るだろう。

今週は8日に、5月の毎月勤労統計、6月の景気ウオッチャー調査。10日に、6月の企業物価。11日に、5月の機械受注。アメリカでは11日に、6月の消費者物価。12日に、6月の生産者物価、7月のミシガン大学・消費者信頼感指数。また中国が10日に、6月の消費者物価と生産者物価。12日に、6月の貿易統計を発表する。

        ≪8日の日経平均は? 予想 = 上げ≫


トランプ再選なら インフレ加速?

2024-07-06 08:02:14 | アメリカ
◇ 移民の流入規制で人件費が急増する恐れ = テレビ討論会でバイデン大統領が‟自滅”し、トランプ前大統領の再選がやや現実味を増した。ではトランプ再選で、何が起きるか。トランプ氏はこれまでに「ウクライナ戦争の即時停戦」「脱炭素に対する補助金の撤廃」「中国製品の輸入関税を60%超引き上げる」などなど、いくつもの‟公約”を打ち出してきた。だが実際にすぐ強行しそうなのは、不法移民の流入規制。今回はこの規制で、アメリカのインフレが加速される危険性がきわめて大きい。

というのも、いまのアメリカでは移民の増加がなければ、労働力の確保が出来ないからだ。米労働省の発表によると、ことし2月末の時点で、移民の労働者は3252万人。19-24年で444万人増加した。その一方、アメリカ生まれの労働者はこの間に116万人減っている。つまり移民が増加しなければ、労働者数は減少してしまうわけだ。これはアメリカでも少子・高齢化ガ進んでいるためで、これからベビーブーマーたちが定年を迎えるため、この傾向は強まるものとみられている。

トランプ氏は企業経営者でもあるため、インフレは大嫌い。「インフレがアメリカを滅ぼす」とさえ言っている。だがトランプ氏が大統領に就任した8年前とは、雇用の状態が全く変わった。さらに中国製品に高関税をかければ、物価はいっそう上がりやすくなる。しかもトランプ氏は金利の引き上げも大嫌い。金利を上げてきた「パウエルFRB議長は再任しない」とも言明している。これもインフレ要因になりそうだ。

アメリカのインフレは、世界中に波及する。日本にも、その影響は及ぶだろう。ドル高・円安も続きそうだが、トランプ氏は「ドル高はアメリカにとって大参事だ」とも言っている。だが、どんな手を打ってドル高を修正しようとするのだろう。無理やりに金利を下げれば、それこそインフレを助長してしまう。日本も「お手並み拝見」などと傍観しているわけにはいかない。

       ≪5日の日経平均 = 下げ -1.28円≫

       【今週の日経平均予想 = 4勝1敗】     

異常な円安 4つの原因 (下)

2024-07-05 07:26:29 | 円相場
◇ 政府と日銀が円安を導いた = 日本経済はこの30年間、きわめて低い成長を続けた。名目GDPは間もなくインドにも抜かれて、世界第5位に転落する。その大きな原因は、政府と日銀の政策が成長に向いていなかったからだと言えるだろう。その結果、自動車のあとの輸出産業が育たず、輸出が伸び悩む。その一方で輸入は国際価格の高騰と円安によって膨れ上がった。輸入が輸出を上回れば、それだけ円売り・ドル買いが増える。これが実需による円安の原因だ。

輸入エネルギー価格の上昇で電力やガス、それにガソリン代が上がると、政府は補助金を出して料金の上昇を抑えている。だが、この政策はエネルギーの消費を助長することになった。輸入も増えるから、ドル買い・円売りも増えて、円安が進む。また政府は毎年、大量の国債を発行している。このため本来ならば国債の利回りは上がるはずだ。ところが日銀がほとんどを買い取ってしまうので、金利は上がらない。つまり日米間の金利差を大きくする政策を続けているわけだ。

加えて日銀は、政策金利の引き上げをためらっている。国債の買い入れ縮小は決定したものの、具体策は先延ばしにするという根性のなさ。したがって日米間の金利差は、一向に縮まらない。おカネは金利の高い方へ流れるから、円安・ドル高も止まらない。なかでも投機筋は金利の安い日本円を調達して、これをドルに換えて金利の高い商品に投資する。政府・日銀は、こんな投機筋までも助けていることになる。

異常な円安は物価の上昇を招いて、国民生活を圧迫する。物価の上昇分は輸入代金を通じて海外に流れ、その分は経済成長のマイナス要因となってしまう。その大きな悪影響をきちんと公表し、少しでも円安を助長するような政策を修正して行く。いま政府・日銀に求められているのは、その決断。それがないと、国民の将来に対する不安は少しも解消しないだろう。

        ≪4日の日経平均 = 上げ +332.89円≫

        ≪5日の日経平均は? 予想 = 下げ≫
   

異常な円安 4つの原因 (上)

2024-07-04 07:02:13 | 円相場
◇ 円安の悪影響に触れない政府・日銀 = 円の対ドル相場が161円台にまで下落した。対ユーロ相場も172円台、オーストラリア・ドルに対しても記録的な安さとなっている。鈴木財務相は「適切に対応して参りたい」と、いわゆる口先介入に懸命だ。しかし実際の介入は効果が乏しいとみられ、発動には踏み切れない。このように37年ぶりの安値に落ち込んだ円相場は、いまや最大の経済問題だ。ところが不思議なことに、政府も日銀も円安がもたらす悪影響については、全く説明しない。

円安というのは、日本円の価値が国際的に低下することを意味する。つまり外国でモノを買う場合、それだけ多くの日本円を支払わなければならない。モノやサービスを輸入する場合も同様だ。日銀が作成している実質実効為替レート。これは各国との貿易量や物価水準を基に算出する購買力だが、最近はこれが1973年の変動相場制移行直後の水準にまで低下した。ピークだった1995年に比べると、約3分の1に落ち込んでいる。

日本はエネルギーや原材料、食料などを大量に輸入している。そのために必要な日本円が、95年当時の3倍にも膨れ上がった。これが電気・ガス代、ガソリン料金、食料品の値上がりとなって国民生活を圧迫する。円安の最大のデメリットは、ここにあるのだろう。そして、そのデメリットは計算できるはずである。その金額に驚いて、政府は円安を食い止めようと必死だ。しかし、その金額は国民に知らせない。

円安の原因は、大きく①日米間の金利差②貿易など実需の大きさ③投機④成長力の低下--に分けられる。いま、この4つの原因が同時進行で円の価値を引き下げている。したがって、この4つの原因を少しづつでも縮小させなければ円安は止まらない。だが驚いたことに、政府・日銀は全くそんな政策をとろうとはしていない。むしろ4つの原因を助長するような政策をとっている。

                  (続きは明日)

        ≪3日の日経平均 = 上げ +506.07円≫

        ≪4日の日経平均は? 予想 = 上げ≫

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