経済なんでも研究会

激動する経済を斬新な視点で斬るブログ。学生さんの就職準備に最適、若手の営業マンが読めば、周囲の人と差が付きます。

100歳以上が 9万2000人に (下)

2023-09-22 07:44:28 | 人口
◇ 健常者の統計をなぜ出さない? = 厚生労働省の統計によると、老人福祉法が制定された1963年の100歳以上人口はわずか153人だった。だから当時はお祝いの意味で、100歳以上の人口を発表したのだろう。だが、いまや文字通り“人生100年時代”。高齢者が多いかどうかよりも、介護に頼らない高齢者、あるいは健康で働ける高齢者が多いかどうかが問われる時代となっている。この意味で高齢者の人口統計には、健常者の人口や比率をぜひ加えるべきである。

新しく厚生労働相に就任した武見敬三氏はテレビ番組で「元気な高齢者をたくさん増やし、働く意欲のある方は生産性の高い仕事を積極的にやってもらう」と述べ、労働力の確保に向けて高齢者支援に乗り出す考えを表明した。こうした政策を遂行するためにも、その土台となる健常高齢者、あるいは健康寿命などの人口統計は欠かせない。だが厚労省も総務省も、現状ではこの面を疎かにしている。

100歳以上の超高齢者が増えるのは、いいことだ。しかし、その大半が寝た切りや医療・介護保険の高額利用者になったら大変だ。逆に健康な高齢者が増加すれば、人手不足の解消に役立つだけでなく、社会保障費の節約にもつながる。武見厚労相は「元気な高齢者をたくさん増やす」と述べたが、「どうすれば元気な高齢者がたくさん増えるか」に全力を投入してもらいたい。

その第1歩として始めてほしいのは、現在は3年に1度しか集計しない“健康寿命”の統計を毎年公表すること。また人口統計に健康な高齢者の人数を示すこと。総務省と厚労省が似たような人口統計を作成するムダは止めて、こういう改革をしてほしい。武見さん、どうですか。

        ≪21日の日経平均 = 下げ -452.75円≫

        ≪22日の日経平均は? 予想 = 下げ≫ 

100歳以上が 9万2000人に (上)

2023-09-21 07:07:39 | 人口
◇ 島根と埼玉で大差がついた理由は? = 毎年のことだが‟敬老の日”が近づくと、厚生労働省と総務省が競うように人口統計を発表する。まず厚労省が15日、100歳以上の高齢者人口を発表した。それによると、9月15日時点で100歳以上の人口は9万2139人。前年を1613人上回った。このうち女性は8万1589人、男性は1万0550人で、圧倒的に女性が多い。また地域的に大きな差があることも特徴だ。

たとえば10万人当たりの100歳以上人口をみると、全国平均は73.74人。しかし都道府県別では、島根県が155.17人で11年連続のトップ。次いで高知県、鳥取県、鹿児島県の順となっている。逆に低い方は埼玉県が44.79人で、なんと34年連続の最下位。次いで愛知県、千葉県、大阪府の順となっている。島根と埼玉では、どうしてこんなに違うのか。厚労省は説明していない。

総務省も17日、同じ9月15日時点の推計人口を発表した。それによると、65歳以上の高齢人口は3623万人で前年より1万人減少した。コロナの影響かと思ったが、ベビーブーム世代が70歳代後半に入って死亡率が高まったためだと説明している。このうち女性は2051万人、男性は1572万人だった。また80歳以上は1259万人で、総人口に占める割合は10.1%に。10人に1人が80歳以上ということになる。

仕事についている高齢者は、19年連続で増加した。22年は912万人で、前年より3万人増えている。就業者全体に占める比率は13.6%で、7人に1人が高齢者ということになる。定年延長や継続雇用が広がったせいで、人手不足の緩和に役立っている。今後も高齢者の労働力に対する需要は強まるだろうが、問題は健康で働ける高齢者がどこまで増えるかという点。そういう観点からの人口統計が必要になってくる。

                     (続きは明日)

        ≪20日の日経平均 = 下げ -218.81円≫

        ≪21日の日経平均は? 予想 = 下げ≫

大学は 氷河期入り : 少子化の影響大

2023-07-26 07:40:42 | 人口
◇ 入学は楽になる? 難しくなる? = 文部科学省は「大学の生存競争が激しくなる」ことを裏付ける数値を発表した。その推計は「大学への入学者数は40年に51万人、50年に49万人まで減少する」という内容。22年の入学者数は63万人だったから、今後17年間で12万人も減ることになる。現在、全国の大学は約800校。定員の総数は62万人なので、このままなら約2割の定員割れが発生するわけだ。原因はもちろん少子化の進行。

すでに大学は氷河期に入っている。日本私立学校振興・共済事業団によると、22年に定員割れとなった私立大学は284校に達した。私立大学の3割が赤字経営に陥っている。なかにはことし新入生を採らず、撤退の準備に入った学校もあるという。政府が大学設立の基準を大幅に緩和したため、この30年間で私立大学は1.5倍に増えた。いま、その巻き戻しが始まったと言えるだろう。

多くの大学が、生き残るための方策を考えている。たとえば電子工学・環境問題・地域経済などに特化した学部を新設、独自性を高めようと考え始めた。こうして大学間での切磋琢磨が始まると、学校の教育水準は向上するに違いない。だが競争に負けた学校は、退出を余儀なくされる。こうして学校数が大幅に減ると、入学者は少なくなっても大学への入学はむしろ難しくなるかもしれない。

その一方、入学試験を極端に易しくして生き残りを図ろうとする学校も現れるだろう。そんな学校が乱立すれば、大学全体の評価は上がらない。入学は楽になるかもしれないが、あまり意味はない。氷河期に入った大学が、どんな方向に流れるのか。そのかじ取りは、文科省が引き受けることになる。ことし生まれた赤ちゃんが、いい環境で大学生となれるように。文科省はしっかり方針を立ててもらいたいものだ。

        ≪25日の日経平均 = 下げ -18.43円≫

        ≪26日の日経平均は? 予想 = 下げ≫

3つの??? : 岸田首相の会見

2023-06-15 07:52:33 | 人口
◇ 解散、財源、成長戦略 = 政府は13日の持ち回り閣議で「こども未来戦略方針」を決定。これに伴い岸田首相は同日夜、官邸で記者会見を行なった。この会見を聞いていて、ぽっかり浮かんだ疑問点が3つ。その1つは質問に答える形で述べた、衆議院の解散に関する考え方。これまでは「頭の中にない」の一点張りだったのが、「諸般の情勢を総合して判断して行く」に変化した。岸田首相は明かに解散を考えているが、それが6月中なのか7月以降なのか。これは単純な「?」である。

2つ目は、年間3兆5000億円を要する少子化対策の財源。選挙を考えて、財源探しは年末までお預け。だが会見で、岸田首相は「国民に追加負担が生じないよう歳出改革を徹底する」と言明した。さて、本当にそんなことが出来るのだろうか。早くも霞が関では「財務省が3兆円ほどの隠し財源を持っているようだ」といった憶測も流れ始めた。もしそうなら、いまから表に出しておいた方が、選挙も戦いやすいのでは。これは微妙な「?」である。

3つ目は、成長戦略とは何かという問題。岸田首相は少子化対策を実現するうえでの最大のポイントは「経済成長実現と少子化対策を車の両輪とした大きなパッケージを実行することだ」と力説した。だが、この言い方は論理的にきわめて不鮮明。‟車の両輪”という言葉の使い方がおかしいからだ。それでも若者が将来に希望を持てるよう、持続的な経済の成長が必要だという意味に解釈しておこう。

首相も具体的に「持続的で構造的な賃上げ」「民間投資増加の流れを加速化」などを挙げている。しかし、そのための政策については言及なし。政府があす16日に決定する予定の‟骨太の方針”をみても、明確な成長戦略は見当たらない。適齢期の若者だけではなく、多くの国民が期待をかける持続的な経済成長。それをどうやって実現するかの方策が示されないまま、解散・総選挙となりそうな雲行きだ。これは落胆の「?」である。

        ≪14日の日経平均 = 上げ +483.77円≫

        ≪15日の日経平均は? 予想 = 上げ≫

財源は選挙のあとで : 少子化対策 (下)

2023-06-08 07:13:53 | 人口
◇ 3兆5000億円の財源はすべて先送り = 盛りだくさんの少子化対策だけに、経費も3兆5000億円ほど必要だ。後藤経済再生相の説明によると、経済支援の強化に1兆5000億円~1兆6000億円、子育て世代への支援に7000億円~8000億円、共働き・共育ての推進に7000億円~8000億円が割り当てられるという。しかし、この財源をどのようにして賄うかについて、素案は「年末までに結論を得る」と先延ばししてしまった。

岸田首相はかねがね、少子化対策の財源について「消費税など増税は行わない」と言明してきた。このため所得税や法人税の増税も出来ない。赤字国債に頼るのも安易すぎる。そこで政府が目を付けたのが、①社会保険制度の支払い削減②社会保険制度の保険料引き上げ③既定経費の節約--の3項目。これらで合計3兆円を確保する目算を立てていた。

さらに、これらの手段を実行するには時間がかかる。その一方、対策費はすぐに支出されるので、資金不足になるかもしれない。その場合は、つなぎに「子ども特別国債」を発行。これを含めて少子化対策に関するすべての収支を管理する「子ども金庫」を創設する構想だ。ここまで考えているのに、なぜ財源は年末まで先延ばししたのか。

理由は‟選挙”でしかない。社会保険制度の保険料引き上げは、たしかに増税ではない。しかし個人と企業の支出は増える。個人は1人当たり月340-470円の支出増という試算もある。選挙の前にこんな数字が出て、論戦の材料になっては困る。だから年末まで凍結。これが真相ではないか。だとすると、解散・総選挙は秋ということになるのだが。

        ≪7日の日経平均 = 下げ ー593.04円≫

        ≪8日の日経平均は? 予想 = 上げ≫

Zenback

<script type="text/javascript">!function(d,i){if(!d.getElementById(i)){var r=Math.ceil((new Date()*1)*Math.random());var j=d.createElement("script");j.id=i;j.async=true;j.src="//w.zenback.jp/v1/?base_uri=http%3A//blog.goo.ne.jp/prince1933&nsid=145264987596674218%3A%3A145266740748618910&rand="+r;d.body.appendChild(j);}}(document,"zenback-widget-js");</script>