経済なんでも研究会

激動する経済を斬新な視点で斬るブログ。学生さんの就職準備に最適、若手の営業マンが読めば、周囲の人と差が付きます。

財源は選挙のあとで : 少子化対策 (上)

2023-06-07 07:26:41 | 人口
◇ 内容は盛りだくさん、その効果は? = 政府は先週1日「こども未来戦略方針」の素案を公表した。その内容は多岐にわたり、実に盛りだくさん。最も注目される児童手当については、所得制限を撤廃。支給期間を高校卒業まで延長。第1子・第2子は0-3歳未満が月1万5000円、第3子以降は0歳から高校生までに月3万円を支給すると明記した。この改正は24年度中に実施する方針。

また育児休業の際の給付金は、手取りが10割になるよう引き上げる。親の就労を問わず1時間単位で保育施設を利用できる「こども誰でも通園制度」の創設。出産費用の保険適用を検討。授業料の減免と返済不要の「給付型奨学金」の対象を、多子世帯や理工農系の学生に拡大--などなど。これらの方針は政府が今月中に取りまとめる‟骨太の方針”に反映させる。

この素案が公表された次の日、厚生労働省は22年の人口動態統計を発表した。それによると、出生率は過去最低の1.26に低下、出生数は77万人と前年を5%も下回った。いかに政府の対策が、遅きに失したかを物語る結果となっている。さらに今回まとめた素案を実行することで、どの程度まで少子化の進行を抑えられるのか。疑問の声も少なくない。

専門家の多くは「ある程度の効果はあるだろう。しかし政府が目標とする出生率1.8の実現はムリ」と判定する。というのも対策は現金給付が中心で、若者が将来に希望を持てるような展望を示していないからだ。出生率を上昇させるためには、実質賃金が継続的に増加するような経済政策が欠かせないという主張である。

                       (続きは明日)

       ≪6日の日経平均 = 上げ +289.35円≫

       ≪7日の日経平均は? 予想 = 上げ≫

インドが 世界一の人口大国に

2023-05-20 08:00:18 | 人口
◇ この6月中にも中国を抜いて = 国連の推計によると、インドの人口はこの6月にも14億2860万人に達し、中国を抜いて世界一の人口大国になる。10年前には中国が1億人以上も上回っていたが、急速に追い付いた。インドの医療水準が向上し乳幼児の死亡率が低下した一方、中国は一人っ子政策の影響で人口が減り始めた。インドの人口は60年代に17億人前後でピークを迎えると推定されている。

インド経済はコロナ禍にもかかわらず、順調に拡大した。22年の成長率は6.7%と高く、GDPは3兆3800億ドルに達している。宗主国だったイギリスを抜いて、世界第5位に躍進。間もなくドイツと日本を抜いて、世界第3位となる見込み。その時点では、アメリカと中国に次ぐ経済大国にもなるわけだ。

ただインドは、きわめて複雑な国でもある。これほど多数の民族、言語、宗教が混在している国は珍しい。たとえばルピ―紙幣には、17の言語が印刷されている。貧富の差、教育の格差も著しい。一握りの大富豪もいるが、その日暮らしの人も数多い。また優秀なIT技術者を輩出している一方で、学校に通えない子どもたちも少なくない。

今後の見通しはどうか。科学技術の発展が後押しして、インドの高成長は続きそうだ。中国で天安門事件が起きたのは、いまから34年前。当時の中国はまだ発展途上国に過ぎず、世界のなかでの存在感も小さかった。それが現在はアメリカと張り合う超大国に。インドの発展はそれより速く、おそらく20年後には超大国に変身するのではないか。そのときの政治的立ち位置は不明だが、世界の景色が変わっていることは間違いなさそうだ。

        ≪19日の日経平均 = 上げ +234.42円≫

        【今週の日経平均予想 = 5勝0敗】     

プラス成長を死守せよ! ; 人口縮小対策

2023-04-29 07:28:14 | 人口
◇ 日本の人口は70年までに3割も減ってしまう = 「日本の人口は2070年に8700万人」「出生数は59年に50万人割れ」「生産年齢人口は3000万人も減る」--厚生労働省の国立社会保障・人口問題研究所が発表した将来人口推計である。新聞紙上にこんな大見出しが躍ったから、びっくりした読者も多かったろう。日本は大丈夫なのだろうか。心配しない方が、おかしいくらいだ。

ただ一種の錯覚もないではない。こういう数字を突き付けられると、普通の人はつい現在の世界と比較して見てしまう。つまり現在の世界のなかで、人口が8700万人に縮小した日本を想像してしまうわけだ。しかし50年後、アメリカやEU、中国やロシア、インドや他の新興諸国がどうなっているか。これは全く見当が付かない。したがって、そうしたなかでの日本の立ち位置も実は想定不能なのである。

縮小する人口への対策。徹底した少子化対策、ロボットなど機械化の推進、外国人の誘致、生産性の向上などなど。新聞各紙はほとんど一致して対応策を挙げている。これは全く正しい。だが、そのすべてで成果を挙げることは、まずムリと言わざるをえない。こうしたなかから、何を重点的に選択して資源を投入するか。その議論を十分にしないと、またバラマキになってしまう。

もう1つ、政府はあらゆる手段を講じても、プラス成長を死守してもらいたい。たとえば平均0.5%の低成長でもいい。GDPの総額が減らない限り、人口が減少すればするほど1人当たりGDPは増えることになる。人々の生活水準は、少しずつでも上昇するわけだ。2070年に生きる孫の世代が明るい経済環境の下で暮らせるよう、これだけは努力しよう。

        ≪28日の日経平均 = 上げ +398.76円≫

        【今週の日経平均予想 = 4勝1敗】     

人手が 足りなーい! (下)

2023-04-19 06:53:17 | 人口
◇ コロナが変えた働く意識 = いま「人手が足りなーい」と大騒ぎをしているのは、飲食や宿泊サービス業界だ。経済の正常化で外出や旅行が盛んになり、外国人旅行客も戻ってきた。ところがコロナ時に減らした従業員が、なかなか復帰してこない。若い人たちが接客業を敬遠する一方で、製造業や金融業からの転職も難しい。

コロナによって、働く人の意識が変わった面も見逃せない。在宅勤務に慣れた人のなかには、通勤電車に乗ることを嫌がり自宅での仕事を探した例もある。失業手当をもらって生活したら、働くのが嫌になった人もいる。そして少なからぬ人が、よりよい待遇や賃金を求めて転職を考えるようになった。こうした動向が、一部の業種では人手不足を助長している。

その根底には、生産年齢人口や労働力人口の減少がある。大きな不況にでも見舞われれば別だが、人手不足の傾向は今後もずっと続くに違いない。その傾向を緩和するには、リスキリング(学び直し)や求人と求職のミスマッチを無くす努力が必要だ。しかし看護師や介護士などの資格を持ちながら家庭に引きこもった人たちを呼び込むには、やはり賃金の引き上げが欠かせない。

OECD(経済協力開発機構)の集計によると、日本の平均賃金は21年時点で3万9711ドル、30年前の91年時点の3万7866ドルからほとんど増えていない。これでは外国人も、しだいに日本へは来なくなる。外国人留学生が日本の企業に就職する割合は、ついに5割を割ってしまった。逆に日本人が高い賃金を目指して外国へ働きに行くケースも、確実に増えている。人手は足りなくなるばかりだ。

        ≪18日の日経平均 = 上げ +144.05円≫

        ≪19日の日経平均は? 予想 = 上げ≫

人手が 足りなーい! (上)

2023-04-18 08:03:09 | 人口
◇ 生産年齢人口が12年連続で減少 = 総務省は先週12日、22年10月1日時点の人口推計を発表した。それによると、総人口は1億2494万7000人で、前年より55万6000人減少した。東京都を除く46道府県のすべてで減少している。このうち日本人は1億2203万1000人で75万人の減少。外国人は291万6000人で19万4000人の増加だった。出生児数は79万9000人、死亡者数は153万人で、差し引き73万1000人が自然減少ということになる。

また生産年齢人口(15-64歳)は7420万8000人、前年より29万6000人減少した。減少は12年連続。このうち日本人は7173万人で、前年より47万2000人減少した。生産年齢人口というのは‟働き盛り”の年齢という意味で、働いていない人も含まれる。これに対して、実際に働いている人に失業者を加えたのが労働力人口(15歳以上)。その労働力人口は6902万人で、前年より5万人減少した。

少子高齢化の影響がはっきりと表れ、人口の減少が止まらない。特に生産年齢人口や労働力人口の減少は、人手不足の根本的な原因になる。政府はいま少子化対策に懸命となっているが、その効果が現われるまでには相当な時間を要することは明らか。したがって当面の対策としては、外国人に頼るかロボットを普及させるしかない。

そこで政府は、遅まきながら技能実習制度の改善に乗り出した。ところが大問題は、東南アジアの若者たちにとって「日本は魅力的な出稼ぎ先」ではなくなってしまったこと。たとえばスイスの研究所による調査では、日本の魅力度は63か国中54番目に落ちている。これは言葉の問題、年功序列などが嫌われているせいでもあるが、最大の原因は賃金水準が低いこと。管理職クラスはもちろん、一般職の給与も台湾や韓国に抜かれてしまった。

                        (続きは明日)

        ≪17日の日経平均 = 上げ +21.31円≫

        ≪18日の日経平均は? 予想 = 上げ≫

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