経済なんでも研究会

激動する経済を斬新な視点で斬るブログ。学生さんの就職準備に最適、若手の営業マンが読めば、周囲の人と差が付きます。

金融バブルの 異常な実態

2021-04-08 07:46:00 | おカネ
◇ 1京1600兆円 ← 世界の株式時価総額 = QUICK・ファクトセットの集計によると、世界の株式時価総額は3月末時点で106兆ドルに膨れ上がった。日本円に直すと1京1600兆円。京というのは、兆の1万倍。なんとも想像を絶する大きさである。時価総額というのは、発行株式数に時価を掛け合わせた数字。言い換えると、世界の上場株式をぜんぶ買うには、これだけの金額が必要になるわけだ。

さらに驚くべきことは、この1年間で時価総額が6割も増えた事実。世界中が新型コロナで苦しんだなかで、株価は想像以上に高騰したことになる。各国の中央銀行が超緩和政策を続けた結果、大量の資金が放出され、これが株式投資の資金源になったことは間違いない。市場では買いが買いを呼んで、株価が上昇を続けた。

IMF(国際通貨基金)の推計によると、世界のGDPはことし91兆ドルになる。時価総額はこれを大きく上回った。世界中の人がことし1年働いて生み出す経済的な価値より、株式の価値の方が大きい。なんとも釈然としないが、これが現実。よく「いまの株価は経済の実体と乖離している」と言われるが、それどころではない。まさにバブルの実態が、時価総額に表われていると言えるだろう。

株価の上昇は、景気にとっても大きなプラス材料であることに間違いはない。しかし株高で大儲けをしたのは、機関投資家とごく一部の個人投資家に限られる。これらの人たちとコロナ不況で苦しむ人たちの経済格差は、残念ながら広がるばかり。こうした観点からみると、時価総額の巨大化を喜んでばかりはいられない。

       ≪7日の日経平均 = 上げ +34.16円≫

       ≪8日の日経平均は? 予想 = 下げ≫

投資マネー と 生活マネー (下)

2020-05-06 07:52:17 | おカネ
◇ カネに変わりはないけれど = 投資マネーは赤、生活マネーは青というように、色でも着いていれば判りやすい。だが実際には、どちらも同じおカネだ。しかし、その性格は全く違う。一方は食料や飲料の購入にすぐ使われ、もう一方は貯蓄や投資に回される。それなのに、政府は「エイやっ」とばかりに10万円をばらまいたので、その意図や目標がきわめて曖昧になってしまった。

たしかに投資マネーと生活マネーを、明確に2分することは難しい。たとえば株式投資で儲けた人がそのカネで消費財を買えば、その瞬間から投資マネーは生活マネーに切り替わる。だからおカネに、赤い色や青い色を着けるわけにはいかない。しかし頭のなかで色付けをしてみれば、次のように考えることもできるだろう。

まず赤色マネーの世界。投資マネーの総額は計測できないが、天文学的な大きさになることは確かだ。これに対して株式や原油・金など、あるいは不動産といった投資対象は限られている。このため赤色マネーの世界では、通貨が過剰でインフレに。一方、青色マネーの世界は、製品にしてもサービスにしても競争が激しく供給過剰。だからデフレになる。

日銀をはじめ各国の中央銀行は、無制限におカネを供給し始めた。その一部は中小企業の資金繰りを助け、個人の金利負担も軽減する。しかし大部分は、赤色マネーの世界に流れているのではないか。特に日銀のETF(上場投資信託)買い入れなどは、その典型だろう。それが資本主義の世界と言ってしまえばそれまでだが、何とも違和感が付きまとう。巣ごもり中の皆さんは、どうだろう。

≪7日の日経平均は? 予想 = 下げ≫               

投資マネー と 生活マネー (上)

2020-05-04 08:13:22 | おカネ
◇ 大不況下の株高 = コロナ不況にもかかわらず、世界の株価は高騰している。4月中の値動きをみると、ダウ平均は2400ドル、率にして11%の上昇。日経平均は1277円、6.75%の上昇だった。ヨーロッパ主要国の株価も大幅に上げている。アメリカをはじめ各国で、外出禁止や店舗の閉鎖などの規制が段階的に緩和されることを好感したためだ。

だが実体経済の状態は最悪。アメリカのGDP成長率は1-3月期にマイナス4.8%、議会予算局は4-6月期にマイナス40%という恐ろしい予測を公表した。日本の成長率も、民間の事前予測では1-3月期がマイナス5.2%、4-6月期はマイナス21.7%に落ち込む見通し。当然ながら企業の業績も悪く、通信・半導体・医療などを除けば、大半が減益か赤字決算に苦しんでいる。

にもかかわらず株価が上昇するのは、潤沢な投資マネーのおかげだ。FRBも日銀もコロナ不況対策として、無制限の通貨供給政策をとり始めた。資金はいくらでも供給される。コロナ・ウイルスが終息して経済が再稼働すれば、株価は上がる。それに乗り遅れないようにと、投資家はいまから買い始めていると言えるだろう。

一方、目を転じると、各国政府は生活マネーの供給にも懸命だ。特に店舗の閉鎖で収入が途絶えたパートやバイトは、その日の生活費にも困窮している。このため安倍政権は、国民1人当たりに一律10万円を支給することになった。だが本当に困窮している国民は、何人いるのだろう。おそらく大半の国民は貯蓄を増やすだけ。しかも、そのうちの多くが投資マネーに転用されると考えられる。

                                (続きは明後日)

冗談じゃないゾ! 預金に手数料

2019-10-19 08:14:18 | おカネ
◇ 大手銀行が真剣に検討中 = いま銀行に100万円を1年間預けておいても、利子はたったの100円しか付かない。こんどはその金利も止めて、逆に手数料を取る。たとえば100万円を預けておいたら、1年後には99万9900円ぐらいに目減りしてしまうわけだ。利用者からみると「そんなバカな」と思うしかないが、メガバンクや大手の地方銀行では預金手数料の導入を真剣に検討し始めた。

理由は言うまでもなく、日銀によるマイナス金利政策。預金金利も下がったが貸出金利が大幅に下落して、預金を貸し出しに回しても利ザヤで稼げなくなってしまった。国内銀行の新規貸出金利はマイナス金利導入前の12年7月には1.1%前後だったが、ことし7月には0.7%程度に低下している。

そんな状況のところへ、アメリカの中央銀行であるFRBがこの7月から金融緩和に転じた。ヨーロッパや新興国の多くも、これに追随して金利を引き下げている。アメリカがさらに金利を下げれば、日銀もマイナス金利をいっそう深堀りせざるをえなくなるだろう。そうなれば貸出金利はもっと低下し、銀行は本業の預金・貸出業務では食えなくなる。だから手数料という発想だ。

しかし預金者の反発は免れそうにない。すでに低金利が災いして、国民の銀行離れが目立ってきている。たとえば個人の定期預金残高は、ことし3月末で431兆円。ピーク時の99年に比べて3割も減少した。さらなる銀行離れは目に見えているが、それでも手数料の導入に踏み切るのか。銀行経営者の悩みは大きい。

       ≪18日の日経平均 = 上げ +40.82円≫

       【今週の日経平均予想 = 4勝0敗】   

鬼が出るか蛇が出るか : 日銀短観

2019-03-29 08:30:44 | おカネ
◇ 業況判断の下がり方に注目 = 日銀が来週1日に発表する3月の企業短期経済観測調査に、いま大きな関心が集まっている。中国経済の減速で、日本の輸出や生産に陰りが見えてきた。したがって、製造業の業況判断が悪化することは避けられそうにない。だが、その悪化の程度が大きいと、景気の先行きに対する警戒感が一気に膨れ上がる可能性がある。どんな数字が出ると、危ないのだろうか。

短観では全国1万社の企業に対して「業況が良くなったか、悪くなったか」を、3か月ごとに聞いている。ここで「良くなった」という答えの比率から「悪くなった」という答えの比率を差し引いた数字が、業況判断指数だ。昨年12月の調査では、大企業・製造業の判断指数は、プラス19。大企業・非製造業の指数は、プラス24だった。

多くの民間調査機関が、3月調査の結果を予測している。最も多いのが、大企業・製造業の判断指数は5ポイント悪化するという予測。なかには9ポイントの悪化を予測したものもあった。大企業・非製造業については3ポイント程度の悪化が中心的な予測となっている。非製造業の場合は人手不足のほか、製造業の悪化に影響されるという見方が強い。

したがって、大企業・製造業の判断指数が5ポイント以下の悪化にとどまれば「織り込み済み」という受け取り方になるかもしれない。しかし悪化の幅が6ポイントを超えるようだと、心理的な悪影響は大きくなりそうだ。当面の株価に下げ要因となるほか、長期的な観点からも「政府の景気回復は続いているという判断は、おかしいのでは」といった疑念が強まる。こんな状態で「消費増税は可能なのか」という議論も熱を帯びるに違いない。

       ≪28日の日経平均 = 下げ -344.97円≫

       ≪29日の日経平均は? 予想 = 上げ≫

Zenback

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