経済なんでも研究会

激動する経済を斬新な視点で斬るブログ。学生さんの就職準備に最適、若手の営業マンが読めば、周囲の人と差が付きます。

3極化する 企業業績

2022-05-17 07:24:52 | 利益
◇ 最高益から急減速する見込み = 企業の決算発表がピークを超えた。日経新聞が東証プライム上場の1100社について集計したところ、22年3月期の純利益は36%の増益。4年ぶりに最高益を更新した。コロナによる行動規制が解除されこと、加えて資源の大幅高、円安の進行が貢献している。商社・鉄鋼・海運・自動車・電機などが最高益を出す一方、小売り・電力・空運・観光などは大苦戦。2極化ガ鮮明となっている。

ところが23年3月期の見通しは、一転して急降下。製造業の純利益は7%の減益、非製造業は15%の増益となる。全体としても3%の増益に急減速する見込み。ここでは①相変わらず絶好調が続く②一転して業績が悪化する③いぜんとして不調が続く--の3極化が進みそうだ。このうち製造業を中心に②となる業種が多く、全体の利益を大きく押し下げる。

その代表例がトヨタ自動車だ。22年3月期の営業利益は2兆9956億円で、36.3%の増益。6年ぶりに最高益を更新した。このうち円安の効果は6100億円にのぼっている。しかし23年3月期の見通しは、営業利益が20%の減益と見込む。主たる原因は原材料価格の高騰で、円安によるプラス効果をはるかに上回るマイナス効果になるという。

日銀はまだ「円安は日本経済にとってプラスだ」と言い続けている。しかし企業業績の見通しからも明らかなように、経営者は誰もそんなことを考えていない。おそらく日銀も判ってはいるのだろうが、メンツがあって主張を変えられないのだろう。だが間違ったことを言い続けていると、日銀に対する信頼度はどんどん薄れて行く。それで、いいのだろうか。

        ≪16日の日経平均 = 上げ +119.40円≫

        ≪17日の日経平均は? 予想 = 下げ≫

企業業績の先行きに 黒雲 (下)

2022-04-06 08:22:19 | 利益
◇ ウクライナ紛争の悪影響は長期化する = 日銀が発表した3月の短観で、全規模・製造業の景況判断指数はプラス2だった。昨年12月調査のプラス6から4ポイント低下している。非製造表の判断指数もゼロからマイナス2に悪化した。さらに3か月後は製造業がゼロへ、非製造業はマイナス5になる見通しだ。特に木材・木製品、石油・石炭製品、鉄鋼業界は、3か月後に指数が20ポイントも低下すると予想している。

22年度の純利益に関する予想をみると、全規模・全産業で1.3%の減益。このうち製造業は2.5%の減益、非製造業は0.1%の減益見込みとなっている。ウクライナ紛争によるエネルギーや資源価格の高騰が、コスト面から経営を圧迫。円安も持続するため、利益は縮小する。多くの企業経営者は、すでに業績の悪化を覚悟していると考えていい。

各国が直面した状況には、大きな差異がある。アメリカは金融引き締めで、インフレが収まるのか。それとも景気が後退するのか。そのジレンマに悩んでいる。ヨーロッパは紛争地に近く、ロシアからのLNG(液化天然ガス)供給不安に怯える。新興諸国は通貨防衛のために利上げ、景気を犠牲とする形になった。そして日本はコロナに物価騰貴、さらに円安の進行が大きな重荷となりつつある。

最大の問題は、こうした状況から世界同時不況の可能性が見えてきたことだ。その根源となっているウクライナ紛争は、仮に停戦が実現したとしても、悪影響は長期化する。ロシアと西側が和解し経済が正常化するまでには、年単位の時間が必要だろう。とすればエネルギー・原材料・食料の高騰は、一過性の現象ではなくなる。企業経営者は、こうした展望を視野に入れ始めた。

        ≪5日の日経平均 = 上げ +51.51円≫

        ≪6日の日経平均は? 予想 = 下げ≫

快晴のち長雨? : 企業業績の見通し (下)

2022-02-25 08:10:15 | 利益
◇ 不安要因は長期化する公算 = 世界経済を覆う不安要因は、原油や資源価格の高騰、供給網の混乱、コロナによる人件費の上昇。これらを背景にしたFRBの金融引き締め、これらを加速させるウクライナ情勢。どれ一つをとっても状況は深刻であり、専門家は口を揃えて「不安要因は長く続く」と予想している。このため企業の業績も、今後は‟長雨の季節”に入る可能性が大きい。

たとえば原油の国際価格をみても、産油国の大幅な増産は全く期待薄。各国の景気回復で需要は増大。アメリカのシェールは投資不足で元気が出ない。そこへウクライナの緊迫で、ますます価格は上がりそうだ。するとFRBはインフレを阻止するために、金融引き締めを急ぐ。その結果、アメリカの景気は下降に転じるのではないか。市場では早くも、こんな心配まで出始めた。

原油や資源の価格がさらに大きく上昇すれば、企業のコストは押し上げられ、利益は縮小する。仮に大きく上昇しなくても高止まりの状態が続けば、利益は圧迫される。しかも、その場合は石油業や商社の在庫評価益はなくなってしまう。こうした面からも、23年3月期の決算は雨模様になりそうだ。

アメリカでも状況は同じ。投資銀行のゴールドマン・サックス社は、SP500株価指数について「最悪の場合、22年末の指数は3600-3900まで下がるだろう」と予測した。この指数はことし年初の4800から最近は4300に下落したが、さらに下落するだろうという予想である。投資家の多くも、そう感じ始めている。だから株価は上がらない。

        ≪24日の日経平均 = 下げ -478.79円≫

        ≪25日の日経平均は? 予想 = 上げ≫

快晴のち長雨? : 企業業績の見通し (上)

2022-02-24 07:45:39 | 利益
◇ 最大の利益でも株安の一因に = 日経新聞は決算発表を終えた上場企業1686社について、その内容を集計した。それによると、昨年4-12月期の売上高は総計473兆8225億円、前年同期を12.7%上回った。この売上高はコロナ前19年4-12月期に、ほぼ匹敵する。また純利益の合計は32兆0921億円で、前年同期を58.3%上回った。過去最大の利益額で、コロナ前に比べても約3割の増加。海運をはじめ石油、商社が大幅な増益となっている。

SMBC日興証券も、上場企業1325社について集計した。それによると、この3月期の純利益は32兆9900億円に達する見込み。前年同期を66.7%上回り、過去最大となる。これまでの記録は18年3月期の29兆5700億円だったから、これを大幅に上回ることは確実だ。資源高で商社を含む卸売業が前年比2.6倍、輸送費の高騰で海運が5.9倍など、異常な増益となる。

海運の増益は、コロナで物流が混乱し運賃が大暴騰したことによる。また石油や商社の増益は、原油高で在庫の評価額が上がったことから発生した。いずれも特殊要因によるものだ。一方、空運や電力、建設や接客サービスなどは減益組。原油高やコロナによる人件費増が響いており、こちらも特殊要因が強く影響した。

ただ全体としてみる限り、企業業績は絶好調であることに間違いはない。それなのに、株価は大きく下落している。日経平均は年初来2000円以上も値を下げた。その理由はアメリカの金融引き締め、ウクライナ情勢など多岐にわたるが、その一つに企業業績の先行き悪化見通しがある。だから、いまは絶好調でも株価は上がらない。

                        (続きは明日)

        ≪24日の日経平均は? 予想 = 下げ≫

企業の儲けは コロナ前を超えたのに

2021-12-02 08:07:44 | 利益
◇ 株価も賃金も上がらない現実 = 日経新聞が上場企業1548社の3月期決算予想を集計したところによると、最終利益の合計は26兆6503億円で前年を48.3%上回る見通しとなった。過去最高の水準であり、当然コロナ前の実績を超える。製造業は最終利益が17兆3877億円で46.0%の増加。非製造業は9兆2525億円で52.9%の増加となる。企業の業績は絶好調である。

製造業で増益率が大きいのは、鉄鋼が27.4倍、精密機械3.3倍、繊維3倍など。減益になるのは医薬品だけ。また非製造業では小売りが80.9%の増加、サービスも24.4%伸びる。ただ鉄道・バス・空運はなお赤字の見込みだが、赤字幅は縮小する。このように業種によってバラつきはあるものの、全体としてみれば企業は大儲けしている。ところが、これが株価や賃金に跳ね返らない。

コロナ前の19年末、日経平均株価は2万3657円だった。それが、きのう1日の終り値はは2万7936円。わずか4300円しか上昇していない。企業利益の大幅な増加を全く反映していないと言えるだろう。もちろん株価にとっては、衰えをみせないコロナの勢いが大きな重しになっている。加えて日本経済の先行きが不透明なことも、株価が上がらない理由となっている。

いま非製造業も含めて多くの企業が、国内よりも海外で大きな利益をあげている。このため国内での設備投資や正規社員の増加には、あまり積極的ではない。人手不足は非正規社員で賄う傾向が強くなっている。だから全体としてみた平均賃金は上がらない。岸田首相が法人減税で賃上げを促進しようとしても、企業の多くは減税など必要ないほど儲けている。さて、どうなりますか。

        ≪1日の日経平均 = 上げ +113.86円≫

        ≪2日の日経平均は? 予想 = 下げ≫

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