経済なんでも研究会

激動する経済を斬新な視点で斬るブログ。学生さんの就職準備に最適、若手の営業マンが読めば、周囲の人と差が付きます。

10万円の給付金は どこへ行った?

2020-09-23 09:02:03 | 家計
◇ 大半は消費に回らず = 日銀が発表した4-6月期の資金循環統計によると、個人の金融資産残高は6月末時点で1883兆円。前年比1.8%の増加だった。その内訳をみると、現金・預金が1031兆円で4.0%増と大きく伸びている。残高、伸び率ともに新記録だ。特に現金は4.8%も増加して、97兆2000億円となっている。コロナ対策として実施された1人10万円の給付金が、大幅な増加の原因となったことは明らか。

資金循環統計というのは、日本経済の各部門の間で資金がどのように流れたかを表す金融統計。たとえば企業が社員に給料を払えば、資金が企業部門から家計部門へ移転する。家計が消費支出をすれば、家計部門から企業部門に資金が流れる。1人10万円の給付金は、予算総額が12兆8800億円。全て支給されれば、政府部門から家計部門へ13兆円近い資金が移転する。

政府はコロナによる店舗の休業などで生活に困る個人を救済し、そのカネが消費されることで企業部門へ資金が回ることを想定していた。しかし現金・預金が急増したことから判断すると、給付金の大半は家計部門に滞留したものと考えられる。その一部は消費や株式投資にも回ったが、多くは現金の形でタンス預金になったのではないか。

要するに、政府の目論見は失敗したと言えそうだ。そして多くの人がタンス預金を増やしたのは、増大した将来不安に備えた行動だったと解釈できる。コロナ禍の克服には、まだまだ時間がかかりそう。再び厳しい対策がとられて、弱者に対する支給金の交付が必要になるかもしれない。政府は今回のカネの流れをよく分析し、次回は給付の対象を本当に必要な人だけに絞るべきだろう。

       ≪23日の日経平均は? 予想 = 下げ≫

個人が保有する現預金は1000兆円

2020-07-03 07:45:53 | 家計
◇ タンス預金が急増する理由は? = 日銀の集計によると、3月末時点で個人が保有していた金融資産の総額は1845兆円だった。前年同期に比べると0.5%減少している。これはことしに入ってからのコロナ不況で、株価が下落したことが大きい。株式の保有残高は178兆円で、前年比11.9%の減少。また投資信託も65兆円で11.7%減少した。

こうしたなかでも、現金と預金の保有額は着実に増加している。現金と預金の合計額は、ちょうど1000兆円。前年比では2.1%増加した。このうち現金は94兆円、前年比では1.5%の増加。預金は906兆円で2.2%の増加だった。現預金の合計額が500兆円に達したのは1991年度末だったから、この29年間で保有額は2倍になったわけだ。

1991年度末の預金残高は、498兆円だった。それがことし3月末には906兆円に。伸び率は82%で、金融資産全体の増加率には及ばない。ところが、この間に現金の保有額は18兆4000億円から94兆円へと5倍以上に達している。要するに、タンス預金が激増しているわけだ。しかし日銀の集計では、どんな人がタンス預金をせっせと増やしているのかは判らない。

いま銀行に預金しても、金利はほとんど付かない。それなら金庫にしまって手元に置いておく方がいい、と考える人が多いことは確かだろう。またマイナンバーの普及とともに、預貯金はいずれ税務署に把握されるかもしれない。それを嫌ってタンス預金を選ぶ人も少なくはないのだろう。その一方で、カード決済はどんどん増えて行く。いったい、日本銀行券の重みはどうなってしまうのだろう。

       ≪2日の日経平均 = 上げ +24.23円≫

       ≪3日の日経平均は? 予想 = 上げ≫

家計調査にみる 消費行動の大変化

2020-05-12 08:05:29 | 家計
◇ ゲーム機は2.6倍増、航空運賃は85%減 = 総務省が発表した4月の家計調査によると、2人以上世帯の実質消費支出は平均29万2214円で前年より6.0%減少した。新型コロナによる外出規制を反映したもので、消費増税の反動が出た15年3月以来の大幅な減少となっている。さらに“巣ごもり”の影響で、消費が大きく伸びた品目と大きく減った品目が対照的に浮かび上がった。

その内容を大分類でみると、最も減少したのは被服・履物で前年比26.1%の減少。次いで教養娯楽費が20.6%減、教育費が17.4%減などとなっている。外出を控えたり、学校が休みになったためだろう。前年より支出が増えたのは、住居費、光熱・水道費、それに保険医療費の3項目だけだった。

小分類でみると、最も減少したのが遊園地入場・乗り物代で86.8%の減少。次いで航空運賃が84.7%、パック旅行が83.2%、映画・演劇等入場料が69.6%、鉄道運賃65.2%、宿泊料55.4%などと、軒並み減少した。マスクをしたせいか、口紅の購入も減っている。その一方、増加したのはゲーム機が2.6倍、ゲーム・ソフトが2.5倍。食品ではパスタが44.4%、即席めんが30.6%の増加。トイレット・ペーパーは26.4%の増加だった。

いま外出規制や店舗の休業が、徐々にではあるが解除されようとしている。そんな状態のなかで、こうした消費行動はどう変化してゆくのだろう。外出が増えれば、被服・履物の消費は回復するのだろうか。ゲーム機は一巡すれば伸びは止まりそうだが、ソフトは増え続けるのか。その予測を間違えないことが、今後の会社経営や株式投資にも役立つと思う。

       ≪11日の日経平均 = 上げ +211.57円≫

       ≪12日の日経平均は? 予想 = 上げ≫

アポ電詐欺の多発は 日銀のせい??

2019-03-30 07:54:17 | 家計
◇ 個人は93兆円の現金を保有 = 日銀の集計によると、昨年末時点で個人が所有する金融資産は1830兆円だった。1年前に比べると1.3%減少している。これは株価の下落を反映したもので、年間を通じて減少したのは10年ぶり。たとえば株式の保有額は175兆円で、前年比15.3%の減少。投資信託は67兆円で12.4%減少している。

個人は相変わらず預金と現金が大好きだ。預金・現金の保有額は984兆円で、過去最大。前年より1.6%増えている。そのうち現金の保有額は93兆円、前年より2.1%増加した。特に現金の伸び率がいちじるしい。アベノミックスが始まった12年末と比較してみると、実に27%も増大した。理由は明快。銀行に預金しても、利子がほとんど付かないからである。

ゼロ金利政策のために、現在はメガバンクに1000万円を預金しても、年間の利子は税引きでたったの796円にしかならない。それなら自宅の金庫に眠らせておいた方がいい。そう考える人が多いのではないか。そして、それがアポ電詐欺に狙われる。仮に1年定期預金の金利が3%だとすると、年間の利息収入は税抜きで24万円近くになる。これならアポ電詐欺のターゲットは大幅に減るのではないか。

金利を引き上げて、預金金利を3%にしてみよう。その結果、個人の利子収入が増えれば、消費支出も活発になるだろう。高齢者にとっても、生活設計がぐんと楽になるはずだ。困るのはローンを借りている個人や中小企業だが、それは減税などの方策で補えばいい。財務省も国債の利子負担は増えるが、消費の増加で景気がよくなれば税収が増えるだろう。

       ≪29日の日経平均 = 上げ +172.05円≫

       【今週の日経平均予想 = 4勝1敗】   

貯蓄に走る サラリーマン

2018-08-18 07:23:54 | 家計
◇ 賃上げしても増えない消費 = 厚生労働省が発表した6月の毎月勤労統計によると、勤労者1人平均の現金給与総額は44万8919円で前年を3.6%上回った。この伸び率は21年5か月ぶりの大きさ。人手不足で賃上げが中小企業にまで浸透した結果だ、と分析されている。ところが総務省が発表した6月の家計調査をみると、家庭の消費支出は5か月連続で減少した。

この2つの調査がたまたま同じ日に発表されたため、新聞やテレビは「賃金は伸びたが、消費は減った」と報道したところが多い。だが、どうして消費が伸びないのかについての解説は、あまり見られなかった。そこで家計調査をもう少し掘り下げてみると、サラリーマン世帯の貯蓄率が異常に高くなっていることが判る。

たとえば4-6月期のサラリーマン世帯の実収入は、平均で51万0423円だった。そこから税金や健康・年金保険料などを差し引いた可処分所得は40万5559円。ところが消費支出は26万7127円しかない。その差14万円ほどは、借金の返済や貯蓄に充てられたと考えられる。消費支出は可処分所得の66%だが、この比率は4年前には74%だった。

安倍首相は「賃上げが進んで消費が伸びれば、経済の好循環が始まる」と期待している。しかし働く人が貯蓄に走れば、この好循環は起こりにくい。なぜ人々が貯蓄を増やすのか。その答えが「年金や介護の将来に不安を感じるから」だとすれば、政府の政策自体が“経済の好循環”を阻んでいることになる。

       ≪17日の日経平均 = 上げ +78.34円≫

       【今週の日経平均予想 = 5勝0敗≫   

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