経済なんでも研究会

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異端児イタリアの 正論 / EU (上)

2018-07-12 07:30:06 | EU
◇ コンテ首相の発言に大揺れ = 事件は6月10日、民間支援団体の船が地中海を漂流していた629人のアフリカ難民を救助したことから始まった。近くのイタリアに上陸させようとしたが、イタリア政府はこれを拒否。一時は海上で立ち往生したが、結局はスペインが受け入れた。EU内部ではこの事件を巡って賛否両論。フランスやスペインは激しくイタリアを非難したが、ポーランド・チェコ・ハンガリーなどの東欧諸国はイタリアの決断を称賛した。

EUはこの事件を重視、首脳会議を開いて協議した。この会議に出席したイタリアのコンテ首相は「難民の多くは地理的に近いギリシャとイタリアに到達し、この両国には過度の負担がかかっている」と強調。EU加盟国が公平に分担しないならば「通商政策や安全保障に関する合意にも同意しない」と息巻いた。

現在の規則によると、難民は最初に上陸した国で、受け入れ申請などの手続きをすることになっている。このため16年以降、ヨーロッパに到着した難民の約半数、31万人がイタリアで手続きを行った。この負担は、たしかに不公平だ。そこでEUも15年に他の加盟国が16万人分を引き受けるように決めたが、各国の反対もあってまだ3万5000人分しか実行されていない。

コンテ氏は法律学者で無派閥。難民受け入れに反対の「五つ星運動」と極右の「同盟」が連立し、この6月に首相に就任したばかり。それだけに「難民反対」といった極端な発言も予想されたが、首脳会議では正論を押し通した。このことがかえって、EU域内でも予想外の共感を呼んでいる。このままだと異端児の正論が域内に広まり、EUの方が異端になるかもしれない。EUの危機でもあるわけだ。

                               (続きは明日)

       ≪11日の日経平均 = 下げ -264.68円≫

       ≪12日の日経平均は? 予想 = 上げ≫   


EUに迫る 新たなる危機 (下)

2018-06-08 07:26:48 | EU
◇ 理想主義 vs ポピュリズム = ヨーロッパに反EU的な政権が誕生すると、どんな事態が起こるのだろうか。まずハンガリーは、EU本部が決める難民の受け入れを絶対に認めないだろう。またイタリアやスペインでも、EU本部が決める健全財政政策を承認しない可能性が大きい。すると市場では国債が暴落、財政危機が大きな問題となる。かつてギリシャが陥った経済不安と同じだ。仮にスペインがそうなれば、危機の大きさはギリシャの数倍。イタリアがそうなれば、スペインの数倍となりかねない。

EU本部が難民の受け入れや健全財政の実行を強引に迫れば、こんどは国民の不満がさらに膨れ上がる。政党はその声を吸い上げなければ議席を増やせないから、ポピュリズムはいっそう蔓延する。その裏では国内経済が不調に陥り、その影響は金融市場を通じて世界に拡散する。

もともとEUはヨーロッパ諸国を経済的に統合し、二度と戦争を起こさないという理想主義を基盤に結成された。難民の救済も、この理想主義から発生した。ところが経済成長が鈍く失業率の高い国では、人々が移民の急増で職を奪われたと感じ始めた。またEUの健全財政路線が、景気を悪くしていると考え始めた。この国民の不満に乗って議席を増やしたのがポピュリズム政党。それに極右政党が同調するという奇妙な関係が、広く流行しつつある。

EUのうちの大部分の国が、単一通貨であるユーロを使用している。ところが域内にはドイツのように輸出競争力の強い国と、ギリシャのように観光に依存している国が併存する。するとユーロの為替相場はドイツにとっては常に割安、ギリシャにとっては割高になってしまう。域内で格差が生じる大きな原因だ。だがEU本部は、この矛盾をどうすることもできない。いったん理想主義を引っ込めるかどうか、決断を迫られている。

       ≪7日の日経平均 = 上げ +197.53円≫

       ≪8日の日経平均は? 予想 = 下げ


EUに迫る 新たなる危機 (上)

2018-06-07 06:29:24 | EU
◇ 反対勢力を鎮静できるか = ヨーロッパ大陸で、反EUの動きが高まり広がっている。イタリア、スペイン、ハンガリーでは、反EU的な政権が誕生した。オーストリア、ポーランド、チェコでも、その傾向が強まっている。ドイツやフランスでさえも、総選挙ではEUに懐疑的な姿勢をみせる政党が議席を伸ばした。発足から26年、いまEUは最も困難な事態に直面していると言えるだろう。

イタリアでは先週、大学教授のコンテ氏を首相とする新内閣がやっと発足した。3月の総選挙で過半数を獲得した政党がなく、大統領による組閣工作は二転三転。第1党となったポピュリズム政党の「五つ星運動」と極右の「同盟」が手を組んだことから、政局はややこしくなった。コンテ氏は中立の立場だが、反EU的な「五つ星運動」からの入閣者が多く、EU離脱を主張する政治家も閣内に取り込まなければならなかった。

スペインでは1日、下院でラホイ首相に対する不信任案が成立。7年間続いたラホイ内閣は総辞職した。後任には中道左派「社会労働党」のサンチェス書記長が就任したが、「社会労働党」は少数与党。いくつかの政党と組まなければならない。そうした政党のなかには反EU的な政策を掲げているところも多い。サンチェス氏自身も、EUの緊縮財政路線には反対している。まだ組閣中だが、いずれにしてもラホイ内閣よりは反EU的になるとみられている。

ハンガリーの場合は強烈だ。4月の総選挙で圧勝したのは「連合」で、オルバン党首が首相に再任された。ところが、この政党は選挙中「移民の排斥」しか公約しなかった。EU離脱には慎重なようだが、移民反対だけで選挙に圧勝したことに専門家は驚きを隠せない。東欧圏ではオーストリアが難民問題に厳しい「国民党」が第1党に。またチェコでも、ポピュリズム政党が勝利を収めている。

                             (続きは明日)

       ≪6日の日経平均 = 上げ +86.19円≫

       ≪7日の日経平均は? 予想 = 上げ


ユーロ圏も 量的金融緩和を卒業

2017-10-31 08:07:15 | EU
◇ 日銀にみえる“忖度”の影 = ECB(ヨーロッパ中央銀行)は先週26日の理事会で、量的金融緩和政策の縮小と停止を正式に決定した。ECBは現在、ユーロ圏各国の国債や社債などを毎月600億ユーロ(約8兆円)買い入れている。これを来年1月からは300億ユーロに半減、さらに来年9月末には買い入れを停止する。ユーロ圏は過去4年以上にわたってプラス成長を達成、失業率も徐々に下がってきた。ただ物価は、ECBが目標としてきた2%上昇に届いていない。

アメリカはいち早く量的緩和政策を終了、一昨年末からは政策金利の引き上げを始めている。雇用の増大など景気の着実な回復が進んでいるためだ。ただしアメリカでも物価上昇は、FRBが目指した2%に達していない。それでもECBやFRBが量的緩和の停止に踏み切った理由は2つ。量的緩和で市場の機能が阻害され始めたこと。それに次の景気下降に備えて、金融緩和の余地を広げておくことである。

欧米の中央銀行が量的緩和政策を停止することにより、先進国のなかで量的緩和にしがみついているのは日本だけとなった。世界同時好況の影響を受けて、最近は景気もはっきり上向いている。だが日銀には量的緩和を停止するどころか、縮小する気配さえ全くない。黒田総裁は相変わらず「物価上昇が2%に達するまで、金融緩和を続ける」と息巻いている。

日本でも、量的金融緩和が市場機能を阻害していることは強く指摘されている。にもかかわらず日銀が緩和政策に固執するのは、なぜだろう。仮に緩和政策を変更すれば、株価が下落したり、景気が変調するかもしれない。そうなればアベノミックスに傷を付けかねない。それが心配だから、緩和政策を続けるしかない。そこには日銀の安倍首相に対する忖度の影がちらつく。

      ≪30日の日経平均 = 上げ +3.22円≫

      ≪31日の日経平均は? 予想 = 下げ

EUとの自由貿易協定が 決着へ

2017-06-29 07:34:59 | EU
◇ 6年越しの交渉がやっと = 日本とEU(ヨーロッパ連合)のFTA(自由貿易協定)締結交渉が、ようやく決着しそうだ。安倍首相は来週ヨーロッパを訪問、その際にトゥスク欧州理事会議長らとともに大筋合意を発表する公算が強い。この交渉は11年5月に始まり、6年がかりの長丁場。成立すれば、アメリカがTPP(太平洋経済連携協定)を一方的に離脱したあと、初めての大型貿易協定となる。

皮肉なことに、この交渉が最近になって急速に進んだのは、TPPの影響が大きい。日本はTPPで、相手国からの輸入について全9018品目のうち8575品目の関税を撤廃することで合意した。また農産物の輸入についても、品目ごとの関税引き下げを決めている。これらの措置については、国内関連業界の同意も取り付けた。

したがってEUとの交渉では、TPPの水準を上回らない範囲で自由化すればよいことになった。EU側もこの原則を理解したため、交渉が加速されたという。結果として、工業製品については日本もEUも関税をほぼ撤廃。農産物については、EUからのチーズ輸入関税だけが未決着という報道も流れている。

16年の実績でみると、日本の対EU向け輸出額は8兆円。輸入額は8兆6000億円だった。日本側の輸出品目は自動車、電機、一般機械など。また輸入品目は医薬品、自動車、電機、食料品の順に多い。日本の輸出先としてはアメリカ、中国、ASEAN(東南アジア諸国)に次いで4番目。輸入先では中国、ASEANに次いで3番目となっている。

      ≪28日の日経平均 = 下げ -94.68円≫

      ≪29日の日経平均は? 予想 = 上げ


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