経済なんでも研究会

激動する経済を斬新な視点で斬るブログ。学生さんの就職準備に最適、若手の営業マンが読めば、周囲の人と差が付きます。

最低賃金引き上げの 賭け (上)

2022-08-03 07:29:08 | 賃金
◇ 時給は全国平均961円に = 厚生労働省の諮問機関である中央最低賃金審議会は1日、22年度の最低賃金の目安を「全国平均で時給961円」とすることを決めた。前年度比では31円の引き上げで過去最大、上昇率は3.3%となっている。都道府県の審議会がこの目安をもとに、それぞれの実額を決定。10月ごろから実施される見込み。

現在の全国平均は時給930円。これが961円に引き上げられる。このうち東京都・大阪府・京都府など17都府県は31円、また北海道・福岡県など30道県は30円の引き上げになる見通し。すでに東京都と神奈川県の時給は1000円に達しているが、こんどの改定で大阪府も最低時給が1000円を超す。

中央審議会では労働者側が大幅な引き上げを要求、使用者側は原材料などの値上がりで企業の経営は圧迫されていると述べて引き上げの抑制を主張。大揉めに揉めたが、最後は公益委員側が提案した31円の引き上げで決着した。やはり光熱費や食料品の値上げラッシュが続く現状に、押し切られたと言えるだろう。

この改定で、ある労働者の時給が30円上がったと仮定してみよう。1週間に40時間働いたとすれば、週給は1200円増加する。1年にすれば約6万円。労働者の生活はそれだけ楽になり、会社側の人件費負担はそれだけ重くなるはずだ。これが経済全体に、どんな影響を与えることになるか。考え方はいろいろあるが、結局はよく判らないというのが真実だろう。

                          (続きは明日)

        ≪2日の日経平均 = 下げ -398.62円≫

        ≪3日の日経平均は? 予想 = 上げ≫

愚策! 賃上げ促進税制

2021-12-09 08:00:09 | 賃金
◇ 単年度の措置では効果なし = 大幅な賃上げが実現すれば、消費が増えて経済が上向く。つまり‟分配”を増やすことによって、経済は‟成長”する。--岸田首相の持論である。先日の所信表明演説でも「給与を引き上げた企業を支援するための税制を抜本的に強化する」と強調していた。その具体的な内容が固まり、22年度の税制改正大綱に明記される。だが、その効果はきわめて疑わしい。

大企業については、継続して雇用する人の給与総額を3%以上引き上げる企業が対象。まず給与増加分の15%を法人税から差し引く。さらに4%以上引き上げた場合には、25%相当分を差し引く。加えて教育訓練費を20%以上増やせば、5%を上乗せして差し引く。したがって大企業の場合は、最大で給与増額分の30%が法人税から差し引かれることになる。

中小企業については、まず1.5%以上の賃上げで給与増額分の15%を減税。さらに2.5%以上の賃上げなら、30%を減税。加えて教育訓練費を10%以上増やせば、減税分が10%増える。つまり中小企業の場合は、最大で給与増額分の40%が法人税から差し引かれることになる。ただ中小企業は、赤字で約6割の企業が法人税を払っていない。こうした企業が賃上げした場合は、ものづくり補助金などを増額して対応する。

一見すると、魅力的な政策のように思える。しかし最大の欠点は、この優遇税制が22年度だけに適用されること。企業にしてみれば、23年度になったら賃下げするというわけにはいかない。だから飛びつく企業は、ほとんどないのでは。それよりも政府は企業が賃上げできるように、景気を良くすることを考えた方がいい。やはり「分配⇒成長」ではなく、「成長⇒分配」なのではないか。

        ≪8日の日経平均 = 上げ +405.02円≫

        ≪9日の日経平均は? 予想 = 下げ≫

賃金は6年前より 15%減った

2021-11-12 07:40:50 | 賃金
◇ 岸田首相の促進策は有効なのか = 厚生労働省は9日、9月の毎月勤労統計を発表した。それによると、1人当たりの現金給与総額は27万0019円。前年に比べて0.2%増加した。このうち基準内賃金に当たる所定内給与は0.1%の増加、残業料に当たる所定外給与は4.4%の増加だった。所定外給与が伸びたのは、コロナの影響で昨年9月は残業が著しく減ったことの反動。残業時間は、昨年より3.4%増えた。

一般労働者の現金給与総額は34万8845円で、前年比0.8%の増加。またパートタイム労働者は9万6261円で、前年比1.8%の減少だった。最低賃金の引き上げでパートの時間当たり給与は平均1229円となったが、現金給与総額は減少した。最低賃金引き上げと関係があるのかどうか、精査してみる必要があるだろう。

問題は長い目で見ると、賃金がかなり下落していること。2015年=100の指数で現金給与総額をみると、9月は85.6。一般労働者は85.0、パート労働者は98.3となっている。つまり給与はこの6年間で15%ほど減少したことになる。また、これを実質賃金でみると、9月の指数は82.8だった。

岸田首相は景気回復の切り札として、中間層の賃金アップを掲げている。その方策として、賃上げを実施した企業の法人税を減税するという。だが日本の企業の4割近くが、法人税を支払っていない。税金を払えるほどの利益を出していないからだ。そうして、こういう企業に働く人の賃金が、むしろ上がっていないはず。しっかり考えてくれないと、中間層の賃金を底上げすることは難しい。

        ≪11日の日経平均 = 上げ +171.08円≫

        ≪12日の日経平均は? 予想 = 下げ≫


労組と政府が結託 : 最低賃金上げ

2021-07-16 07:39:35 | 賃金
◇ もっと柔軟な設計も出来たはず = 中央最低賃金審議会は14日、21年度の最低賃金を全国平均で28円引き上げることを決定した。上げ幅は3.1%で、02年度以来の最大。労組側の代表は40円の引き上げを要求、企業側は据え置きを主張して大揉めに揉めたが、最後は政府側が引き上げに賛成して28円で決着した。この指針をもとに、各都道府県が実際の引き上げ額を決め、10月ごろから実施される。

現在の最低賃金は平均902円。これが930円に引き上げられる。もし全国で実施されると、最高の東京都は1041円に。最低の秋田・高知県などは820円となる計算。政府は安倍前政権のときから「賃上げ→消費増→景気回復」の好循環を意図しており、最低賃金の引き上げを支持した。企業側は「中小企業の経営が成り立たなくなる」と抵抗したが、結局は押し切られた。

政府は企業側の抵抗を抑えるため「賃金を引き上げた中小企業には補助金を出す」と約束した。だが援助期間は3か月だけ。苦しくなった企業が雇用者を減らす危険性は、否定できない。じっさい韓国では、その失敗を経験したばかり。いま東京に緊急事態宣言が発令されていることを考えると、28円の引き上げはやや強引過ぎたような気もする。

もっと柔軟な設計は、出来なかったのだろうか。たとえば10月以降、「全国の都道府県で緊急事態宣言やまん延防止等重点措置が解除された場合、その3か月後に最低賃金を30円引き上げる」というように。これならコロナ不況脱却のメドもつき、中小企業の心配もかなり軽減されるだろう。これから実際の引き上げ額の検討に入る都道府県では、ぜひ参考にしていただきたい。

        ≪15日の日経平均 = 下げ -329.40円≫

        ≪16日の日経平均は? 予想 = 下げ≫

8549円も減った : 平均賃金

2020-10-14 08:46:47 | 賃金
◇ コロナ不況の4-8月間に = 厚生労働省が発表した毎月勤労統計によると、8月の現金給与総額は平均27万3263円だった。前年同月に比べると1.3%の減少。所定内賃金は0.1%の減少だったが、残業などの所定外賃金は14.0%と大幅に減った。特に生活関連業は40.5%、飲食サービス業は31.9%も減少している。コロナ不況でお客が減り、残業どころではなかったのだろう。

現金給与総額というのは、労働者の平均賃金。業態別にみると、一般労働者は35万1378円、パート労働者は9万7447円で、その差は大きい。しかも8月は、一般労働者の数が前年比で1.8%増加したのに対し、パート労働者は1.3%減少した。経営が苦しくなった企業や店舗が、まず非正規雇用のパートタイマーから解雇し始めたことが見てとれる。

現金給与総額は、4月から5か月連続で減少している。そこで8月の数字を3月の実績と比べてみた。すると平均賃金は、この間に8549円も減少したことが判明した。一般労働者は1万5063円、パートタイム労働者は980円の減少だった。コロナ・ウイルスのせいだとはいえ、こんなに収入が減ったのではたまったものではない。消費支出も伸びないわけだ。

もう1つ考えさせられることは、これが平均賃金の推移だということ。コロナ不況でも利益を増大している企業は多く、そういう企業の賃金はもっと上がっているに違いない。と言うことは、逆に平均値を下回る賃金で生活を余儀なくされている労働者も少なくはないことになる。コロナ不況は、まだ長引きそうだ。政府は超低所得層への対策を、しっかり構築する必要がある。

       ≪13日の日経平均 = 上げ +43.09円≫

       ≪14日の日経平均は? 予想 = 上げ≫

Zenback

<script type="text/javascript">!function(d,i){if(!d.getElementById(i)){var r=Math.ceil((new Date()*1)*Math.random());var j=d.createElement("script");j.id=i;j.async=true;j.src="//w.zenback.jp/v1/?base_uri=http%3A//blog.goo.ne.jp/prince1933&nsid=145264987596674218%3A%3A145266740748618910&rand="+r;d.body.appendChild(j);}}(document,"zenback-widget-js");</script>