経済なんでも研究会

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景気低迷の元凶は 貿易の大赤字 (上)

2023-01-26 08:08:25 | 貿易
◇ 年間20兆円のおカネが海外へ流出 = 財務省は先週、22年の貿易統計を発表した。それによると、輸出は98兆1860億円で前年比18.2%の増加。一方、輸入は118兆1573億円で39.2%の増加だった。輸出入額とも過去最大。輸出も健闘したが輸入が4割近くも増えたため、貿易収支は19兆9913億円の大赤字となっている。つまり昨年は、日本から差し引き20兆円のおカネが海外に支払われたわけだ。

東日本大震災によって、日本は深刻なエネルギー不足に見舞われた。このため燃料の輸入が急増。14年の貿易収支は12兆8165億円の赤字となっている。昨年の赤字額は、それよりはるかに大きい。言うまでもなく、ウクライナ戦争の影響でエネルギー・資源・食料の国際価格が急騰。それに円安の影響が加わったことが原因だ。

特に大きく増えたのが、エネルギーの輸入。原油や天然ガスなど鉱物性燃料の輸入額は33兆4755億円で、前年比は96.8%の増加。ほぼ2倍に急拡大した。輸入額全体の28.3%を占めている。このうち原油の平均輸入価格は1キロ・リットル=8万4728円、前年より76.5%高かった。その他の燃料も、同様に高騰している。

貿易赤字の20兆円は、企業や家計が値上がりしたモノやサービスを購入するという形で負担している。それだけ国内の購買力が海外に流出したと考えてもいい。それだけ景気を押し上げる力が減少したとも言えるわけだ。でも「日本はエネルギーも食料も自給できない。だから仕方がないのでは」と考える人は多い。政府も日銀もそう考えているようだが、果たしてそれでいいのだろうか。

                      (続きは明日)

        ≪25日の日経平均 = 上げ +95.82円≫

        ≪26日の日経平均は? 予想 = 下げ≫

11兆4000億円の 貿易赤字

2022-08-19 07:18:31 | 貿易
◇ これでは景気はよくならない = 財務省は17日、7月の貿易統計を発表した。それによると、輸出は8兆7528億円で前年比19.0%の増加。輸入は10兆1896億円で47.2%の増加だった。その結果、貿易収支は1兆4368億円の赤字となっている。原油・LNG(液化天然ガス)・石炭などエネルギーの価格急騰に円安の影響が加わって、輸入額が異常に膨張した。

貿易収支の赤字は、これで12か月連続。かつて東日本大震災で、すべての原発が停止したとき以来の記録である。このときと同様に今回も鉱物性燃料の輸入増加が、大赤字の原因。ただ7月の場合をみると、輸入数量はやや減ったが、価格が高騰して輸入額を膨張させた。たとえば原粗油の価格は1キロリットル=9万9667円で、昨年の約2倍となっている。

貿易収支の赤字は、昨年8月から続いている。その間の赤字額を合計してみると、11兆4224億円にのぼる。1か月平均で約1兆円だ。これだけのおカネが電気・ガス料金やガソリン代の値上がりという経路を通じて、海外に支払われている。その金額は消費税の5%分を上回るから、国民は15%の消費税を払っているようなものだ。

日本は輸入エネルギーに頼らざるをえない。だから国民は、かなりの負担を覚悟しなければならない。だが、それにしてもコロナ禍にあって‟消費税5%分”の負担は痛い。この負担を少しでも和らげるためには、原発と再生エネルギーを活用するしか方法はない。ところが政府は、この点での努力を全く怠ってきた。その結果が11兆円にのぼる貿易赤字となって表われている、と考えるべきだろう。

        ≪18日の日経平均 = 下げ -280.63円≫

        ≪19日の日経平均は? 予想 = 上げ≫

不可解な RCEP報道の解説

2022-01-05 07:48:40 | 貿易
◇ 日本のメリットが最大でいいのか? =日本・中国・韓国とASEAN(東南アジア諸国連合)が参加するRCEP(東アジア地域包括的経済連携)協定が、元日に発効した。国と国とが互いに関税を軽減・撤廃して貿易量を増やそうとするのが、いわゆるFTA(自由貿易協定)。このFTAを15か国がいっぺんに結んだのが、RCEPだ。同様の多国間協定としては日本やオーストラリアを中軸とするTPP(環太平洋経済連携協定)もあるが、RCEPの方が規模は大きい。

なにしろ15か国の総人口は、およそ23億人。GDPの総合計は約26兆ドルで、いずれも世界全体の3分の1を占める。関税は即時に撤廃される品目と段階的に軽減される品目に分かれるが、工業製品の関税は91%の品目が即時撤廃あるいは段階的に軽減される。たとえば中国の輸入関税は現在8%だけの無関税品目が86%に拡大。韓国の無関税品目も19%から92%に拡大される見込み。

新聞各紙は、このような記事を大々的に掲載した。だが不可解なのは、その解説記事。各紙とも「日本が最も大きな利益を享受する」と説明している。おそらくは外務省や経済産業省のレクチャーを、そのまま伝えたのだろう。その裏付けとして、UNCTAD(国連貿易開発会議)の試算を掲載した新聞もあった。その内容は「この協定で域内貿易額は420億ドル増加し、日本の輸出額は19年比で5.5%増える」というもの。

たしかに日本の輸出先としては中国が最大、韓国は第3位だ。しかし日本と中国、韓国との関係はいま必ずしも良好とは言えない。その中国や韓国が「日本が最大のメリットを受ける」協定を、よく承認したものだと思う。東南アジア諸国にしても、日本有利の協定に反発しなかったのだろうか。もしかすると、裏で無償援助などの取り引きがあったのでは、と勘ぐってしまう。余計な心配なら、いいんだが・・・。

        ≪4日の日経平均 = 上げ +510.08円≫

        ≪5日の日経平均は? 予想 = 下げ≫

コロナで染まった 貿易統計 : 20年度

2021-04-22 07:44:07 | 貿易
◇ 中国向け輸出だけが大幅増加 = 財務省が発表した20年度の貿易統計には、コロナの影響がすみずみにまで現われている。輸出額は69兆4873億円で、前年度比8.4%の減少。リーマン・ショック後の09年度に次ぐ大幅な落ち込みで、世界がコロナ不況に陥ったことを如実に反映している。一方、輸入額は68兆1803億円で11.6%の減少。日本国内の需要がコロナで縮小したためだった。この結果、貿易収支は1兆3070億円の黒字となっている。

輸出を相手国別にみると、大きく伸びたのは中国だけ。輸出額は15兆8937億円で、前年度比9.6%の増加だった。アメリカ向けは12兆4416億円で16.5%の減少。EU向けも12.5%減少した。国別でもコロナの被害が大きかったイギリス、スペイン向けが大幅に減少している。いち早くコロナの制圧に成功した中国、その影響が日本の貿易面にも大きく表れた。

商品別では、自動車の減退が著しい。前年度比では19.0%の減少だった。コロナの巣ごもりでパソコンやスマホの需要が増加、そのあおりで半導体が不足し、自動車の生産が抑えられたことも響いている。一方、輸入面では原粗油が49.2%も減少した。これは世界的なコロナ不況で需要が減り価格が下がったうえ、日本国内でも経済活動が抑制されたためである。

日本の貿易動向は、今後も世界のコロナ情勢を反映することになるだろう。たとえば現時点でみる限り、アメリカとイギリスはコロナ制圧にメドが付いた。ブラジルを初めとする南米諸国やインドは、なお最悪の状態から抜け切れない。結局はワクチンの接種率が高い国への輸出が伸びそうだ。そういう視点からみると、日本の輸入はあまり伸びない?

       ≪21日の日経平均 = 下げ -591.83円≫

       ≪22日の日経平均は? 予想 = 上げ≫

百戦錬磨の イギリス : TPPに参入

2021-02-04 08:18:40 | 貿易
◇ 問われる日本の交渉力 = イギリスは1日、TPP(環太平洋経済連携協定)への参加を正式に申請した。イギリスの参加が認められれば、加盟国は現在の11か国から12か国へ。世界全体のGDPに占める加盟国合計のGDPは、13%から16%に上昇する。またTPPは名前からも判る通り、日本やカナダ、オーストラリアなど、太平洋の沿岸国ばかり。そこへヨーロッパの大国が参加する意義は、きわめて大きい。

イギリスは昨年末、移行期間も終えてEUから完全に離脱。単一国家として、各国との間でFTA(自由貿易協定)を結び直している。日本とのFTAも昨年末に発効した。イギリスとTPP加盟11か国の貿易額は年間約16兆円。自由貿易が出来る相手国を増やせば、スコットランドや北アイルランドの独立機運を鎮めることにも役立つものと思われる。

TPP11か国は直ちに作業部会を設立、イギリス側と交渉を始める。関係筋によると、交渉は1年ほども続き、イギリスの参加は来年になる見通しだという。何が重要な議題になるのかはまだ不明だが、すでに根回しの段階で対立点は明らかになっている模様。とにかく、相手はEUとの離脱交渉でも粘り腰を見せたイギリスだ。甘い相手ではない。

関税率や貿易ルールなどの交渉で、イギリスがどれだけ得点を稼げるか。TPPへの参加を狙っている中国、台湾、タイなど。あるいは途中で離脱したアメリカも、その結果に大きな関心を寄せている。この交渉で、日本はイギリスの要求を聞きながら、加盟国の意見をまとめる役割を担わなければならない。日本の外交センス、交渉力が問われている。

       ≪3日の日経平均 = 上げ +284.33円≫

       ≪4日の日経平均は? 予想 = 下げ≫

Zenback

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