経済なんでも研究会

激動する経済を斬新な視点で斬るブログ。学生さんの就職準備に最適、若手の営業マンが読めば、周囲の人と差が付きます。

個人消費に 黄信号 / アメリカ

2023-11-29 07:26:30 | アメリカ
◇ 引き締め効果が表われてきた = アメリカでは先週24日から、恒例の年末商戦が始まった。しかし、すべり出しはやや低調。昨年ほどの活気はない。全米小売業協会は「年末商戦の売上高は前年比3-4%の増加」と予測しているが、これだと物価高を勘案すれば「ほぼ横ばい」ということになる。旅行やレジャーなどへの予約も低調。ガソリンも買い控えの傾向が強く、需要期なのに価格が上がらない。

理由はいろいろ。コロナ対策としての各種補助金が、すべて打ち切られた。コロナ禍で蓄積されていた、いわゆるリベンジ需要が一巡した。なかでも物価高で、家計の過剰な支出が続いたことが大きい。たとえばニューヨーク連銀の調査によると、7-9月のクレジット・カード債務残高は1兆0790億ドルで過去最大。前年比では17%もの増加となった。延滞率も12年ぶりの高さとなっている。

消費の鈍化傾向は、ほかにも表れている。主要500社の7-9月期の決算は純利益が4%の増加で順調だったが、10-12月期の予想については6割の企業が悪化すると予想。業種別でみると、全11業種中7業種の予想が切り下げられた。また主要小売業の8-10月期決算では、売上高を減少させた企業が目立っている。

株式市場はこれまで「景気が悪いとFRBの金融引き締めが遠のく」と考えて、むしろ悪化を示す指標を歓迎してきた。しかし企業の業績悪化は、直ちに株価の低下につながってしまう。その意味で株式市場にとって、年末商戦の不調は新たな対応を迫られる問題となっている。別の見方をすると、金融引き締め政策がやっと実体経済面で効果を発揮し始めたのかもしれない。

        ≪29日の日経平均 = 下げ -87.17円≫

        ≪30日の日経平均は? 予想 = 上げ
  

ウクライナ支援予算を削除 : アメリカ議会

2023-10-03 07:44:49 | アメリカ
◇ 土壇場で‟つなぎ予算”は成立したが = アメリカの上下両院は30日夜、48日分の暫定予算を可決した。これにより政府による支払い不能や一部政府機関の閉鎖は、土壇場で回避された。バイデン大統領も「不必要な危機を免れることが出来た」と評価。ウオール街も一息ついた形。しかし、この暫定予算ではウクライナ支援のための予算がすべて削除された。その影響は、想像以上に大きいかもしれない。

アメリカの議会は、いわゆる‟ねじれ議会”。上院は与党の民主党だが、下院は野党の共和党が過半数を占める。このため10月1日から始まる新年度の予算審議が難航。成立が危ぶまれたことから、与野党は暫定予算を編成することで合意していた。ところが下院の超保守派といわれる21人の議員が造反。この予算にも反対したため、政府資金の枯渇が心配されていた。

共和党のマッカーシー下院議長はぎりぎりの30日夜、新しい妥協案を提示。超保守派も合意して、暫定予算が成立した。しかし超保守派を納得させるため、この妥協案にはウクライナ支援のための予算が全く含まれていない。バイデン政権はこれまで439億ドル(6兆5000億円)の資金を予算に計上、この10-12月にも240億ドルを要求していた。

専門家によると、当面は使い残しの予算もあることから、大きな支障は出ないという。しかし11月17日になれば、再び同じことが起こるだろう。今回の造反で味を占めた超保守派は、同じ行動を繰り返すに違いない。また本予算の内容についても、影響が及ぶ公算は大きい。その後ろには、トランプ前大統領の影も見え隠れする。ウクライナ戦争や世界秩序の行く方をも左右する、大きな問題に発展するかもしれない。

        ≪2日の日経平均 = 下げ -97.74円≫

        ≪3日の日経平均は? 予想 = 下げ≫

バイデン大統領の困惑 : 自動車スト

2023-09-20 07:05:19 | アメリカ
◇ 政策非難への発展が怖い = アメリカのUAW(全米自動車労組)が15日から、ビッグ3の工場でストライキに入った。GM、クライスラー、フォードから1工場ずつを選んでストに突入。今後は対象を拡大する戦術だという。かつては毎年のようにストを展開していたUAWだが、近年の大規模ストは珍しい。もしストが長引けば、アメリカ経済に大きな悪影響が及ぶことは確実。労使交渉の行く方に注目が集まっている。

UAWは4年間に36%の賃上げを要求。会社側は20%の賃上げを回答したが、折り合わなかった。またUAWは「EV(電気自動車)の製造が進んでも雇用を維持すること」を強く要求している。会社側にとっては36%の賃上げも呑みにくいが、それ以上に雇用の維持は難しい。というのもEVの製造に要する人員は、ガソリン車の7割以下にとどまるからだ。

バイデン大統領はストが始まるとすぐ「記録的な利益が労働者に公平に分配されていない」と発言、会社側に圧力をかけた。UAWの組合員は15万人、民主党の支持者が多い。来年の大統領選挙を考えると、ここで組合側を支援しておく必要があった。ところがバイデン氏の心配は尽きない。というのもバイデン政権は多額の補助金を使って、EV化の促進を図っているからだ。

労使の交渉がもつれた挙句、UAWの矛先がこのEV促進政策に向けられたら大変だ。さらにストが長期化して景気が悪化すると、大統領選挙では苦戦を強いられる。だからバイデン大統領としてはEV化を進めながら、UAWを支援する姿勢をとりつつ、ストを早急に終結させなければいけない。かなり苦しい道のりになるだろう。

        ≪19日の日経平均 = 下げ -290.50円≫

        ≪20日の日経平均は? 予想 = 下げ≫

パウエル発言の 真意を読む

2023-08-29 08:01:45 | アメリカ
◇ 少なくとも9月は利上げする? = 「パウエルFRB議長は、いったい何を言いたかったのだろうか」--ニューヨーク市場では、まだ頭をひねっている人たちが多い。別に金融技術用語を並べ立てて、難解だったわけではない。逆に平易な言葉で常識的すぎる説明をしたために、真意が汲み取りにくくなってしまった。パウエル議長は「適切ならば、さらに利上げする用意がある」と述べる一方で「景気動向も慎重に見極めて行く」とも言明した。金融引き締めを継続するのか、それとも早めの解除を考えているのか。

ジャクソンホールで25日に行なったパウエル議長の講演。内容が伝えられたとき、ダウ平均株価は大きく値を下げた。しかし株価はすぐに反発。終り値では250ドル近く上昇した。これは市場が最初は「引き締めの継続」と受け取り、そのあとは「そうでもない」と解釈したことを示している。だが、その迷いは今週になっても続いているようだ。

パウエル議長は「インフレ率はいぜんとして高すぎる」「引き締め的な金融政策が、ますます重要な役割を演ずる」とも述べている。こうした発言からみれば、やはり引き締めの継続を市場に伝えたかったのではないか。すると少なくとも9月の利上げは避けられない。年内の利下げは完全に消滅した。こうした見方が、市場では強まって行きそうだ。

このため当面は、株価も調整色を強める。あるいはすぐに織り込んで、再び上昇軌道に乗る。そのどちらが優勢になるかは、物価と雇用の動向、企業の業績が決めることになるだろう。ジャクソンホール会議でECB(ヨーロッパ中央銀行)のラガルド総裁は「まだインフレに勝てていない」と言い切った。パウエル議長もそう言いたかったが、優しくオブラートに包んで表現したと解釈しておきたい。

        ≪28日の日経平均 = 上げ +545.71円≫

        ≪29日の日経平均は? 予想 = 上げ≫

「インフレを克服」は 時期尚早?

2023-08-15 08:17:49 | アメリカ
◇ サービス価格の上昇は続く = 米労働省の発表によると、7月の消費者物価は前年比3.2%の上昇だった。6月の3.0%上昇より、やや上昇率が拡大している。アメリカの物価は昨年6月の9.1%上昇から順調に鈍化してきたが、13か月ぶりに上昇率が広がった。ただ市場では「この小さな反騰は一時的なもの。インフレは克服された」という見方がいぜん大勢を占めている。しかし「インフレ圧力はまだ強い。インフレ克服説は時期尚早」という慎重論も少なくない。

慎重論の根拠の1つは、エネルギーと食料品を除いたコア指数が4.7%上昇とまだ高いこと。ガソリン価格は大幅に下がったが、それを除くと物価はまだ高水準。さらに人手不足から人件費が高騰しており、特にサービス価格は今後も上昇が続く。要するに現在の状況は、コロナ禍やウクライナ戦争による当初の衝撃から回復しただけだ。したがってインフレ対策はまだ必要だし、これが9月の利上げ説にもつながってくる。

ヨーロッパでは、もっと状況がはっきりしている。EU統計局の発表によると、ユーロ圏の7月の消費者物価は前年比5.3%の上昇だった。ここでも物価の上昇率は順調に縮小しているが、それでもECB(ヨーロッパ中央銀行)は9回目の利上げに踏み切った。コア指数は5.5%上昇と高く、アメリカのような「インフレ克服説」は全く聞かれない。

さて、日本の場合はどうか。総務省の発表によると、6月の生鮮食品を除いた消費者物価は前年比3.3%の上昇だった。数字の上からみる限り、日本の物価の方がアメリカよりも高くなっている。ところが不思議なことに、日本ではインフレ警戒感が全くない。経済全体がデフレ体質から抜け出せないためなのだろう。しかし日本でも人手不足から人件費は上がる方向。これに原油価格の高騰が加わったら、インフレ問題が一気に噴き出すのではないか。

        ≪14日の日経平均 = 下げ -413.74円≫

        ≪15日の日経平均は? 予想 = 上げ≫

Zenback

<script type="text/javascript">!function(d,i){if(!d.getElementById(i)){var r=Math.ceil((new Date()*1)*Math.random());var j=d.createElement("script");j.id=i;j.async=true;j.src="//w.zenback.jp/v1/?base_uri=http%3A//blog.goo.ne.jp/prince1933&nsid=145264987596674218%3A%3A145266740748618910&rand="+r;d.body.appendChild(j);}}(document,"zenback-widget-js");</script>