経済なんでも研究会

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FRB議長の 微妙な発言

2023-07-28 07:54:37 | アメリカ
◇ 「景気後退なし」はさらなる利上げの布石? = FRBは25-26日に開いたFOMC(公開市場委員会)で、政策金利の0.25%引き上げを決定した。これで政策金利は5.25%に。リーマン前のピークを上回り、22年ぶりの高水準となった。前回は金利を据え置いたFRBだが、いぜんとして強いインフレ圧力を重視、物価の安定を最優先する姿勢を貫いたことになる。

パウエル議長は記者会見で「今後の動向は経済データしだい」と、予想通りの発言。ただアメリカ経済の現状について「雇用は引き締まった状態が続いており、経済は堅調。景気後退の予測はしていない」と強調した。金融引き締めが景気の悪化をもたらすという心配を払拭するためとも考えられるが、さらなる利上げの布石と受け取れないこともない。

ただ市場はきわめて冷静に評価し、この日のダウ平均は82ドルの上昇。36年ぶりの13日間連騰という記録を達成している。また今後の見通しについても「次回9月は利上げしない。来年の早い時期に利下げ」という観測を崩していない。一方、外国為替市場ではドルが各国通貨に対して値下がり。円の対ドル相場も139円台に上昇した。

こうした状況のもとで日銀はきょう28日午後、政策決定会合の結果を発表する。注目点は、長期金利に対して許容する変動幅を現在の0.5%から広げるかどうか。仮に1%に広げれば、実質的にそれだけ利上げすることになる。もし現状維持ということになれば、日米間の金利差が拡大するので理論上は円安となりやすい。だがアメリカの利上げはドルを下落させているから、現実にはどんな動きになるのか。外国人による国債売りは増えるかもしれない。

        ≪27日の日経平均 = 上げ +222.82円≫

        ≪28日の日経平均は? 予想 = 下げ≫

読めない 雇用統計 / アメリカ

2023-07-11 07:18:31 | アメリカ
◇ 市場の解釈も真っ二つに = アメリカ労働省は7日、注目された6月の雇用統計を発表した。それによると、農業を除く雇用者数は前月より20万9000人の増加。失業率は3.6%で、前月より0.1ポイントの低下。また平均時給は前月比12セント、0.4%の上昇だった。こうした数字が景気の下降を示しているのかどうか。それによって、FRBの金融政策も変わってくるだろう。だから市場は、この発表をきわめて重視していた。

もし景気の下降が示されれば、FRBは7月で利上げを打ち止めにするだろう。年内に利下げの可能性も出てくるかもしれない。その反対に景気の堅調が示されれば、FRBの金融引き締めは長引くことになる。さあ、どちらかということだったが、結果は「どちらもあり」という解釈になったようだ。要するに解釈は2分されたわけである。

まず、この統計が景気の鈍化を示すとみる根拠は非農雇用者の増加数。これで、ことし1-6月の月平均増加数は27万8000人に下がってきた。昨年の平均39万9000人に比べると、明確に減少している。反対に景気はまだ堅調だとみる根拠は、失業率と平均時給。失業率は昨年3月から、3.4%-3.7%の間を行き来している。平均時給も前年比では4.4%の上昇で、5月の4.3%上昇を上回った。

こうして株式市場では景気堅調説がやや上回り、7日のダウ平均は200ドル近く下落した。ところが為替市場では逆に景気下降説がやや上回り、ドル安・円高に振れている。今週は①この2分した見方が継続する②どちらかにサヤ寄せする③足して2で割る形になる--の3つの可能性。どういうことになるのだろうか。

        ≪10日の日経平均 = 下げ -198.69円≫

        ≪11日の日経平均は? 予想 = 上げ≫

少数民族になる 白人 / アメリカ

2023-07-08 08:14:37 | アメリカ
◇ 最高裁の異常な判決も、これで理解できる = 多くの大学が1960年代から導入している「入学選考に一部の人種を優遇するワクを設ける制度は、憲法違反」--アメリカの最高裁判所がこんな判決を出して賛否両論が噴出、大騒ぎとなっている。バイデン大統領までが、この判決を厳しく非難。いったい三権分立は、どうなっているのか。とにかく日本人には、解りにくい問題だ。そこで、ある事実を・・・。

20年の国勢調査によると、アメリカの総人口は3億3145万人。前回10年前に比べて7.4%増加した。ところが白人の人口は10年前に比べて2.6%減少している。少子高齢化の進行によるもので、減少したのは初めてのこと。全人口に占める割合も57.8%に低下、初めて6割を下回った。一方、アジア系の人口は35%も増えている。国勢調査局では「白人の人口は40年代半ばに50%を割る」という予測を公表した。

移民の流入が多いカリフォルニア州では、すでに白人の人口比は35%となっている。「白人は少数民族になる」「アメリカは白人社会ではなくなる」--こういう事実が、ますます現実味を帯びてきた。そういう流れに乗って出現したのが、共和党のトランプ前大統領。カベを造って移民の流入を阻止し、最高裁に3人の保守派判事を送り込んだ。これで最高裁は9人の判事中6人が保守派に。昨年は人工妊娠中絶の権利を否定している。

アメリカでは、大学に続いて企業もヤリ玉にあがるのではないかと心配されている。一部の保守主義者が企業の役員会や採用試験についての人種優遇策を訴え、これが最高裁にまで上がると違憲判決が出されるかもしれない。こうしてアメリカの社会はますます分断の度を強めて行くが、その根底には「白人の少数民族化」という明確な事実が存在することを理解しておこう。

        ≪7日の日経平均 = 下げ -384.60円≫

        【今週の日経平均予想 = 5勝0敗】     

苦渋の 金融政策 : FRB

2023-06-16 08:16:39 | アメリカ
◇ 利上げは見送り、重石を2つ置いた = FRBは13-14日に開いたFOMC(公開市場委員会)で、政策金利の引き上げを見送ることを決めた。昨年3月に金融政策を引き締めに転じてから、10回の会合すべてで利上げを決定してきたが、今回はじめて金利を5.25%に据え置いた。ところが今後の見通しとしては、年内に0.5%の引き上げもありうると示唆。このため発表を受けて、ダウ平均は230ドルほど下落した。

FRBが利上げ見送りを決めた最大の要因は、直前に発表された5月の消費者物価だったろう。前年比で4.0%上昇にまで落ち着き、昨年1月の記録9.1%上昇の半分以下に鈍化した。たとえば雇用統計では非農業雇用者が予想以上に増加する一方、失業率は上昇。景気の強さを測り切れなかった。だが物価がここまで落ち着けば、引き締めを強化する必要はない。しかし利上げを見送ると、株価は急騰するかもしれない。FRBとしては、株価バブルも好ましくない。

そこで考え出したのが「年内0.5%の利上げもありうる」という重石である。現状では1回0.5%の利上げはありえないから、0.25%の利上げが2回。FOMCは8月がお休みだから、7月と9月ということになる。こうして重石は2つになり、年内の利下げ期待にも水をかけた。なかなか巧妙な作戦であり、市場もびっくりしたことは確か。

だが量的引き締め政策がまだ不十分で、カネ余り状態は解消していない。したがって市場はすぐに元気を取り戻すに違いない。その証拠に14日のニューヨーク市場でナスダックは下落せず、15日の東京市場でも株価はほとんど下落していない。株価バブルは、物価上昇を促進する原因になりかねない。FRBと市場との駆け引きはまだ続く。

        ≪15日の日経平均 = 下げ -16.93円≫

        ≪16日の日経平均は? 予想 = 上げ≫

政府がデフォルト? / アメリカ (下)

2023-05-17 08:18:32 | アメリカ
◇ 金融不安の残り火に油を注ぐ危険性も = バイデン政権は、政府の債務上限を1兆5000億ドル引き上げるよう要求している。これに対して共和党は、財政支出を4兆5000億ドル削減する独自の法案を下院で可決してしまった。この削減にはバイデン大統領が最重要としている気候変動対策も含まれる。だから双方ともに、引っ込みがつかない。来年の大統領選挙の前哨戦ともなりつつある。

オバマ政権のときの対立とは、異なる要素が2つ。その1つは、共和党のリーダーがマッカーシー下院議長であること。この人はトランプ前大統領を超える保守主義者として知られ、財政緊縮派の最先鋒となっている。共和党内の妥協派も、いまのところは口が出せない。もう1つは、金融不安の存在だ。シリコン・バレー銀行に端を発した預金流出騒ぎは、いまだにくすぶり続けている。

いまバイデン政権は金融機関が経営難に陥った場合、預金の全額を保護する方針を打ち出している。しかし政府がデフォルトに陥ると、その資金を支出できなくなる。こうした不安が一般に広がると、銀行からの預金流出が加速する危険性もあるわけだ。また国債の格下げで価格が下落すると、金融機関に大きな含み損が発生する。

与野党にとっては、国民の怒りがいちばん怖い。選挙に響くからである。すでに市場は警戒し始め、株価は下落傾向だ。世論調査でも「議会に対する批判」が強まってきた。それでも今回は、6月半ばまで混乱が続くという見方が強い。実体経済にある程度の悪影響を及ぼしそうだ。これが民主主義なのかもしれないが、アメリカはこんなことをやっていては中国に勝てないぞ!

        ≪16日の日経平均 = 上げ +216.65円≫

        ≪17日の日経平均は? 予想 = 上げ≫

Zenback

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