経済なんでも研究会

激動する経済を斬新な視点で斬るブログ。学生さんの就職準備に最適、若手の営業マンが読めば、周囲の人と差が付きます。

仮面を脱ぐ 外国人の就労制度 (上)

2024-02-15 07:52:55 | 人手不足
◇ ようやく‟人材確保”を前面に = 政府は先週9日の関係閣僚会議で、外国人技能実習制度に代わる新制度「育成就労制度」の創設を決めた。現行の技能実習制度は「発展途上国に技術を伝える国際貢献」を目的に、1993年に発足。昨年10月末時点で41万2000人が来日している。しかし実態は技術の移転ではなく、劣悪な環境で単純労働を強いられるケースが続出。22年には実習生9000人が失踪している。このため国際貢献といった仮面を脱ぎ捨て、本来の目的である「労働力不足の補充」を前面に打ち出すことになった。

政府は次の通常国会に、必要な関連法案を提出する方針。内容としては、まず転職を認めない期間を現行の3年から1-2年に短縮する。現行法では、過酷な労働を強いられても3年間は転職できない。だから失踪が増える。政府は1年への短縮を主張したが、自民党が「大都市へ集中してしまう」という理由から反対。結局は1-2年に落ち着いた。だが大都市への集中は、転職を認めない期間と関係するのかどうか。なんとなく、すっきりしない。

もう1つは転職の場合、非営利の監理団体や公共職業安定所だけが関与する規定。これは悪質ブローカーの介入を防ぐためで、必要な措置に違いない。しかし多くの地域にたくさんある監理団体がさらの仕事を増やし、お役人の天下り先になるのは困る。と言って、外国人労働者の不満が伝わらないようでも困る。どんな団体にするのかは、国会できっちり議論してもらいたい。

また3年間働いて一定の技術を取得すると、試験を受けて特定技能1号の資格が取れるようになる。さらにその先、特定技能2号の資格が取れれば、日本に永住したり、家族を呼び寄せることもできる。こうして「日本は行って働きたい国」だと、アジアの若者たちに考えてもらうようにしたい。政府が姿勢を変えたのは一歩前進だが、実際にどこまで効果があるかはやってみなければ判らないというのが本当のところだろう。

                        (続きは明日)

        ≪14日の日経平均 = 下げ -260.65円≫

        ≪15日の日経平均は? 予想 = 上げ≫
    
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大変だ! 人手不足⑨ 国家の危機

2023-10-20 07:26:02 | 人手不足
◇ 政府は鈍感すぎる = 機械化・ロボット化・AI化、女性と高齢者の活用、外国人の招聘、それに生産性の向上。--人手不足を解消するための方策は、これしかない。だから政府・自治体・企業・個人は、これらが進展するように地道な努力を重ねるしかない。たとえばロボット・AI化減税、リスキリング、年収のカベの撤廃、外国人労働者に対する優遇策、週休3日制の推進・・・。しかし、こうした努力を重ねたとしても、今後に予想される大量の人手不足を埋め切れるとはとても考えられない。

「同一労働同一賃金」の原則を徹底することも重要だ。いま非正規雇用というのはバイト・パート・派遣社員など、正規社員以外のすべてを指している。だが、このなかには希望して短時間労働をしている人と、正規社員と同じように働いている人が混在している。これをはっきり分けて、たとえば正規社員と同じように1年間働いたら、必ず正規社員に登用しなければならないようにする。人手不足が深刻になれば実現しやすいし、この措置で働きたい人も増えるだろう。

それでも人手不足の解消は、とてもムリ。人口減少の直接的な影響も、そろそろ出始める。労働需給のひっ迫が続けば、賃金は上がる。すでにことしの最低賃金は、多くの都道府県で国が提示した金額を上回っている。もっと賃金が上がらないと、優秀な外国人労働者も日本にはやってこない。したがって人件費の増加を原因とする物価騰貴は、覚悟しておく必要があるだろう。

大問題は、政府に危機感がないこと。先ごろ発表した「2024年問題対策」をみても、鉄道や船舶の輸送量を増やすほか、置き配にポイントを付ける程度。なんとも、お粗末だ。もっと広範な視点から将来を見通す姿勢が、まったく欠如している。人手不足の問題は一過性ではなく、国家の危機を招きかねない一大事なのに。

        ≪19日の日経平均 = 下げ -611.63円≫

        ≪20日の日経平均は? 予想 = 下げ≫
   
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大変だ! 人手不足⑧ 原因は労働時間の短縮

2023-10-19 07:09:50 | 人手不足
◇ 「働き方改革」で働く時間が減少 = 「人口が減っているのだから、人手不足はやむをえない」と考える人が多い。だが、これは間違い。たしかに日本の人口は減り始めたが、働く人は増えている。つまり遊んでいる人が少なくなったわけだ。たとえば労働力調査で就業者数をみると、13年には平均6311万人だったのが直近の4-6月期には6747万人に増えている。実に430万人以上も増加した。

この10年間、日本のGDPはあまり大きくなっていない。それなのに就業者がかなり増えても、人手不足なのはなぜだろう。その原因は2つ考えられる。1つはバイトやパートなどの非正規社員が増えたこと。非正規社員はこの10年間で、1906万人から2090万人へ184万人も増加した。これらの人たちは週3日とか、1日4時間しか働かない人が少なくない。したがって全体の労働時間が短くなってしまう。

もっと大きな原因は、正社員の労働時間も減少していること。労働力調査によると、正規労働者の男性の年間就業時間は13ー22年の間に6.7%減った。これは大企業については19年4月、中小企業については20年4月から、年間の時間外労働が原則360時間以内に規制されたことが影響している。

ここで注目されるのは、若手の社員ほど労働時間が減っていること。22年の就業時間を13年と比べてみると、45-54歳が5.7%、35-44歳が7.9%なのに対して、25-34歳は8.6%。若い人ほど働く時間が減少した。これは若い社員ほど、有給休暇や育児休暇などを取得した結果だと考えれる。働き方が改善されたことは結構だが、それが人手不足の大きな原因となっていることも事実なのである。

                        (続きは明日)

        ≪18日の日経平均 = 上げ +1.96円≫

        ≪19日の日経平均は? 予想 = 下げ≫
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大変だ! 人手不足⑦ 見通しは真っ暗

2023-10-18 07:18:45 | 人手不足
◇ 35年には最大1190万人が不足 = これまで運輸・建設・介護・サービス業について人手不足の実情をみてきたが、他の多くの業種も人手が集まらずに苦しんでいる。たとえば医師・看護師、学校の先生や技師、消防士から官僚に至るまで。人が余っているのは、一部の事務系の職場と国会議員ぐらいなものではないか。しかも今後の見通しも、非常に厳しい。

三菱UFGコンサル&リサーチ社の推計。少子・高齢化の進行で、労働力人口は22年の6900万人が35年には6210万人に減少、就業者数も6700万人から6070万人に減る。人手不足は10年に30万人だったが、22年には130万人に増加した。その大きな原因は1人当たりの労働時間が減少したこと。この減少傾向が続くと、35年には最大1190万人が不足すると予測した。仮にそうなれば、日本経済がマイナス成長に陥ることは避けられないと結論している。

またパーソル総合研究所の推計。25年には505万人が不足。30年には7073万人の労働需要に対して、供給は6429万人にとどまる。したがって、人手不足は644万人に拡大するという予測。業種別では、サービス・医療福祉・卸小売り・製造・通信情報サービスの不足が大きいと分析した。これらの推計が当たるかどうかは判らないが、いずれにしても人手不足が容易ならぬ規模で発生することは示唆している。

過去の経験から考えると、仮に大きな不況がやってくれば人手不足は解消するかもしれない。だが人手不足が深刻になって、経済が下向きになる可能性もあるわけだ。その場合は賃金の上昇が原因となって、物価も押し上げられる。つまりインフレと不況が同時に起こるスタグフレーションを警戒しなければならない。どうして、こんなことになってしまったのか。

                       (続きは明日)

        ≪17日の日経平均 = 上げ +381.26円≫

        ≪18日の日経平均は? 予想 = 上げ≫
  
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大変だ! 人手不足⑥ サービス業

2023-10-14 07:51:03 | 人手不足
◇ 倒産に直結してしまう業種 = サービス業は基本的に、人手がなければ成り立たない業種だ。だから人手不足は命取り。倒産してしまう企業も多い。なかでも人手不足に苦しんでいるのは、飲食業と宿泊業。コロナ規制で離れて行った従業員が帰ってこない。高齢化が進む一方で、新規参入が少ない。この業種は季節や時間で繁忙期が異なるから、バイトやパートなどの非正規従業員は必要不可欠。その人たちも集まりにくくなっている。

総務省のデータによると、全国の飲食店は22年時点で約67万店。働く人は約437万人で、全体の約7%を占めていた。店舗数はピークだった1991年に比べると、14%も減っている。しかし従業員数はやや増加した。これは少人数で経営する店舗が淘汰され、大人数の店舗が増えた結果だと思われる。帝国データバンクの調査によると、22年時点で「非正規社員の不足」を訴える店舗は全体の71.3%に達し、全業種のなかで最高だった。

宿泊業の規模は22年時点で、ホテルと旅館を合わせて約5万施設。従業員は約68万人、このうち非正規職員が54%、女性が66%を占めている。コロナ不況で離職した人が、まだ戻り切っていない。労働時間が長く低賃金のため、もともと離職率が高い業界だ。ホテルと旅館が、人手を奪い合っている状況。帝国データバンクの調査で「非正規社員の不足」を訴える施設は75.0%で、全業種中2位となっている。

小売り業は、デパート・スーパー・コンビニから専門店・個人商店まで幅広いが、どこでも人手が足りない。経産省の経済センサスによると、全国で約88万店舗、従業員は約754万人にのぼる。しかし長時間労働と低賃金で、離職率は高い。各種の調査によると、離職の理由は圧倒的に「賃金、賞与が少ないこと」だ。したがって待遇改善が最も必要だが、人口が減少して行くなかで市場は伸びにくい。競争も激化する一方なので、対応を怠ると倒産という滝つぼに引き寄せられる。

                      (続きは来週の予定)

        ≪13日の日経平均 = 下げ -178.67円≫

        【今週の日経平均予想 = 3勝1敗】     
 
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