経済なんでも研究会

激動する経済を斬新な視点で斬るブログ。学生さんの就職準備に最適、若手の営業マンが読めば、周囲の人と差が付きます。

大変だ! 人手不足⑤ 介護職員

2023-10-13 07:35:20 | 人手不足
◇ 要介護者の増加に追い付かない = 介護保険制度は2000年に発足した。当時の介護職員は55万人。それが現在は230万人に増えている。常に不足気味だが、なんとか伸びてきた。ところが、これからが大変。25年には団塊の世代が、全員75歳以上に達する。このため厚労省によると、介護職員は32万人も不足する。これが介護の「2025年問題」だ。さらに40年には69万人が不足する見通しだが、それが埋まる見込みはほとんどない。

労働条件は、決していいとは言えない。力仕事も多く、精神的にも気を使う。労働時間も長くなりがちだ。そのうえ22年の平均賃金は月額29万3000円で、全産業の平均より6万円少ない。賃金の原資は国や自治体の支出もあるが、大半は40歳以上の人が収める保険料とサービスの利用者が支払う料金。この両方ともかなり高い水準にまで引き上げられているので、政治的にも大幅な増額は困難な情勢だ。

介護職員の不足は、直ちにサービスの低下につながる。訪問看護やデイサービスの回数が減ったり、利用者一人ひとりに対する気配りも粗くなりやすい。対応策としては介助ロボットの導入、外国人の招聘など。しかし外国人は国家試験のカベが高く、なかなか増えてこない。また日本の賃金水準が低く、円安の問題もあって、最近では希望者が減少し始めた。

22年度の有効求人倍率は3.79倍ときわめて高く、求人難が続いている。政府は①離職した介護人材の呼び戻し②新規参入の促進③離職阻止・定着促進--を掲げ、たとえば再就職者に20万円を給付、2年勤めたら返済免除などの措置も講じている。しかし結局は賃金の問題に帰着する。来年は3年に1度の介護報酬改定が実施されるが、大幅な賃上げがないと見通しはますます悪化するだろう。

                             (続きは明日)

        ≪12日の日経平均 = 上げ +558.15円≫

        ≪13日の日経平均は? 予想 = 下げ≫  

大変だ! 人手不足④ 建設業界

2023-10-12 07:26:55 | 人手不足
◇ 大阪万博は象徴的な出来事 = 建設業界の人手不足も深刻だ。総務省によると、建設業の従業員数は22年で479万人。ピークだった97年に比べると、3割以上も減少した。人手が足りないと、工期が遅れる。人手を増やせば、人件費が増える。どっちにしてもコストは上がってしまう。そこへ来年4月からは、残業時間が年720時間に制限される。いま大阪万博の建築契約が進まず問題となっているが、この傾向は全国に広がり始めている。

昔は3K(きつい、汚い、危険)と言って嫌われた建設業。その労働環境は、ずいぶんと改善された。しかし労働条件はまだ悪い。総務省によると、22年の年間労働時間は平均1886時間。全産業の平均より268時間も長かった。しかも年間の賃金は、全産業の平均より55万円少ない。だから若い人が、なかなか入ってこない。そのうえ高齢化ガ進み、55歳以上の従業員が35%以上を占めている。

業界は懸命に対策を講じている。まずは重機械の投入による省力化。従業員に対しては「4週8休」、つまり週休2日の徹底を呼び掛けている。しかし現状は、公共工事でさえ3割程度しか週休2日を達成していない。さらに人手不足が深刻になるにつれて、労働時間が逆に長引く傾向さえみられる。この業界は下請けの重層構造、下へ行くほど労働条件の改善は進みにくくなっているようだ。

資材と人件費の上昇で、建設コストはうなぎ登り。これが大阪万博の建築契約を困難にしているが、一般のマンションや一戸建て住宅の建設費も急騰してきた。たとえば東京都の住宅建設費をみると、この5-7月は前年比5%の増加となっている。ゼネコンは受注を絞ったり、資材の共同管理などコストの引き下げに努力しているが、大きな効果はない。来年4月からの残業規制で、建設業界の人手不足がさらに進むことは避けられない。

                        (続きは明日)

        ≪11日の日経平均 = 上げ +189.98円≫

        ≪12日の日経平均は? 予想 = 上げ≫

大変だ! 人手不足③ バス・タクシー業界

2023-10-07 07:22:09 | 人手不足
◇ バスもタクシーもどんどん減る = 日本バス協会によると、全国のバス運転手はいま約11万6000人。この10年間で1万3000人以上も減少した。来年4月からの残業規制で8000人分が不足する。さらに30年度には9万3000人まで減って、3万6000人が不足する見通しだという。このため路線バスの廃止や減便、あるいは値上げなどが相次いでいるのが現状。トラック業界との運転手の奪い合いも激しくなっている。

国土交通省の統計によると、全国の路線バスは10年度―21年度の間に総計1万5332キロも縮小した。また値上げは21年度には1件だったものが、ことしは1-6月間で20件に達している。やはり労働条件が悪く、若い人や女性が入ってこない。厚労省によると、22年の年間収入は平均399万円、全産業平均を98万円も下回っている。バス会社によっては、外国人の採用を検討しているところもあるという。

タクシー会社も、運転手不足に悩まされている。業界団体によると、21年度の法人タクシー運転手は22万人。10年度比で12万人減少した。コロナの流行で、高齢者が一斉に退職したことが響いている。自民党内では菅元首相が中心となって、ライドシェア制度の実現を目指しているそうだ。ライドシェアと言えばカッコいいが、要は白タクの容認。タクシー不足は、そこまで来ているということだろう。

トラックの不足は、物流に大きな支障をもたらす。一方、バスやタクシーの不足は、国民の生活を脅かす。特に過疎地域に住む高齢者は、買い物や病院への行き来が困難になってしまう。地方自治体もいろいろ対策を考えているようだが、状況は改善しない。こうした交通関係の運転手不足は、政治的にも大問題になることは必至。岸田首相は、このことに気付いているのだろうか。

                  (続きは来週の予定)

        ≪6日の日経平均 = 下げ -80.69円≫

        【今週の日経平均予想 = 4勝1敗】     

大変だ! 人手不足② トラック業界

2023-10-06 08:11:16 | 人手不足
◇ 中継輸送は名案、スピードアップは愚策 = 多くの企業が、トラック運転手不足への対策を始めた。まずは協業。これまで競争関係にあった同業者が、1台のトラックに両社の製品を乗せて運ぶ。また異業種間での協業も、すでにいくつかが実現している。さらに同業他社に、荷物の一部を委託するケースも現れた。要するに厳しい人手不足という現実を前にして、トラック業界は競争よりも協調を選び始めた。

こうしたなかで業界が編み出した中継輸送方式は、なかなかの名案だ。たとえば東京から大阪へ向けて、運転手Aがトラックを走らせる。一方、大阪からはBが東京へ荷物を運ぶ。この両者を中間の静岡県で交代させるのが中継方式。AはBが運転してきたトラック、BはAが運転してきたトラックに乗って東京、大阪に帰る。これまでとは違って、AもBもその日のうちに自宅へ戻れる。労働条件が大幅に改善されるわけだ。

政府もこの方式を評価し、全国に数か所の中継基地を作る方針。だが政府が検討している対策のなかに、大型トラックの高速道路におけるスピード制限を緩和する案がある。現在80キロに制限している最高速度を100キロに引き上げ、それだけ輸送力を増強しようというわけだ。だが、これは安全性を度外視する全くの愚策。止めた方がいい。

トラックの代わりに、鉄道の利用を増やす傾向もみえている。新幹線で生鮮食品を運ぶ実験も始まった。しかし、これらの対策をすべて実行しても、トラック業界の人手不足が解消することはないだろう。その結果は、運賃の値上げと過剰サービスの廃止に向かう。たとえば宅配便の配達日指定などは、有料になるか廃止される可能性が強い。

                     (続きは明日)

        ≪5日の日経平均 = 上げ +548.48円≫

        ≪6日の日経平均は? 予想 = 下げ≫

大変だ! 人手不足① トラック業界

2023-10-05 07:18:20 | 人手不足
◇ 来年は輸送能力が4億トンも減る = 「人手が足りなーい!」という悲鳴が、多くの業界から聞こえてくる。人手不足は、日本経済が直面する最大の問題となりそうだ。大学や高校を卒業する若者たちは引っ張りダコ。有効求人倍率は1.3倍前後に張り付いている。その根底にあるのは、少子高齢化による労働人口の減少。それがコロナ禍で加速された。そのうえ来年4月からは、残業時間が法的に規制される。

働き方改革関連法に基づき、来年4月からは各業界の残業労働に対して上限が設定される。1年間の残業時間は原則360時間までだが、たとえば建設業は720時間、自動車運転業は960時間、医師は960時間まで認められた。しかし現状の残業時間はもっと長い。したがって残業が短くなるだけ、仕事量は減る。それを埋めるための人手が必要になるわけだ。これが。いわゆる‟2004年問題”である。最初に主な業界の実情をみてみよう。

まずはトラック業界。残業規制の影響で、来年の輸送能力は19年比で14.2%、4億トン分の減少となる。現在トラック運転手は84万人前後いるが、28年には28万人、30年には35%減少するという試算も。その原因は、第一に人手が集まらないこと。労働条件が厳しく、賃金も安いからだ。厚労省によると、大型トラック運転手の月当たり労働時間は平均212時間。賃金は年463万円で、全産業平均を26万円下回る。だから若者や女性が入ってこない。

その一方、仕事量は急増している。特にネット通販の拡大で、宅配の需要が増えた。20年度の宅配取扱量は47億8000万個、前年より5億個も増加している。だから1人当たりの扱い量が増えて、残業時間も増えざるをえない。ところが、そこへ残業規制。業界や各企業も対策を講じているが、‟2024年問題”の解決はきわめて難しい。

                    (続きは明日)

        ≪4日の日経平均 = 下げ -711.06円≫

        ≪5日の日経平均は? 予想 = 上げ≫

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