経済なんでも研究会

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「再生エネを30年までに3倍」 : G20宣言

2023-09-14 07:12:41 | エネルギー
◇ 日本は目標を大幅に上げられるのか = インドで開いたG20(主要20か国首脳会議)は10日、首脳宣言を採択して閉幕した。ウクライナ戦争を巡って激しく対立する各国が、一堂に会したこの会議。にもかかわらず首脳宣言をまとめられたのは、議長を務めたインドのモディ首相の功績だという評価が高い。首脳宣言ではロシアや中国への批判を避け、気候変動・食料・エネルギーなど人類が直面する大問題を列挙。各国の結束を訴えた。これなら反対する国は出ない。

問題の列挙にとどまったかと思いきや、ただ1か所だけ重要な政策目標を具体的に明示した点があった。それは気候変動に関する部分で「2030年までに再生エネルギー容量を、世界全体で3倍にする取り組みを追求する」という内容。世界の現状から判断すれば、実現は不可能に近い。きわめて野心的な目標の設定だと言える。

たとえば脱炭素に最も熱心なEU。ことし3月「30年の再生エネルギー比率を42.5%に引き上げる」ことを決めた。現状と比べて2倍以上の引き上げとなるが、それでも3倍からは程遠い。日本政府の計画は「19年度の発電量1853キロワット時を、30年度に3130キロワット時に増やす」という内容。これも3倍には、とても届かない。

モディ首相は、この首脳宣言について「すべての参加国が100パーセント合意した」と明言した。文字通り解釈すれば、会議に出席した岸田首相も同意したことになる。でも岸田首相は帰国後、こんな大事な合意点について何も触れていない。「世界中の国が不可能だと考えているから」「モディ議長が勝手に書いたものだから」と考えているのかしら。

        ≪13日の日経平均 = 下げ -69.85円≫

        ≪14日の日経平均は? = 下げ≫ 
 

またまた⇑ 原油の国際価格

2023-09-09 07:27:21 | エネルギー
◇ 燃料の輸入額は増えるばかり = 原油の国際価格が、またまた上昇し始めている。ニューヨーク市場のWTI(テキサス産軽質油)先物相場は5日、1バレル=88ドル台に上昇。およそ10か月ぶりの高値を付けた。この春80ドル台前半まで上昇したあと値を下げ、夏には70ドルを割り込んでいた。今回は円安の効果が重なって、輸入価格が大幅に上昇する。するとガソリン価格はすぐ上昇、しばらくして電気・ガス料金も引き上げられる。インフレの再燃が心配される状況となってきた。

値上がりの原因は、サウジアラビアとロシアが歩調を合わせて「自主減産を年末まで延長する」と発表したこと。この両国は原油価格を下支えするため、それぞれ日量100万バレルと30万バレルの減産を続けている。期限は9月までだったが、それを12月まで延長した。仮にアメリカや中国の景気が好転すれば、100ドルを超える可能性も十分に考えられる。そのうえ日本の場合は、円安の効果で輸入価格が上がる。円相場は6日、一時147円後半まで下落した。

政府はガソリン料金の高騰を抑えるため、石油元売り会社に対する補助金の支給を7日から再開した。電気・ガスに対する補助金も、再び実施するに違いない。「原油価格の高騰+円相場の下落⇒補助金の支出」という政策決定プロセスが、完全に出来上がってしまった。国民の側からみれば「いつか来た道」である。だが、そんな繰り返しをしているうちに、事態はどんどん悪化している。

財務省が発表した貿易統計によると、ことし1-6月期に輸入した鉱物性燃料は13兆9420億円に達した。ウクライナ戦争が始まる前の21年1-6月期は6兆9466億円だったから、ほぼ2倍に増加している。それだけ日本人の資産が流出しているわけである。この間、原油や天然ガスの価格は上昇した。円安も大幅に進行した。さらに日本の消費量も増えている。つまり日本のエネルギー海外依存体質は全く改善されていないどころか、むしろ大きく悪化した。。補助金内閣、最大の弱点である。

        ≪8日の日経平均 = 下げ -384.24円≫

        【今週の日経平均予想 = 3勝2敗】     

「ペロブスカイト」は 最後の命綱 (下)

2023-06-24 07:06:17 | エネルギー
◇ 小池さん、もっと上を向いて! = 東京都はペロブスカイト型太陽光発電の実証実験を始めた。都庁内に5台の装置を設置し、来年5月まで発電効率や費用対効果を調べる。だが、この際は実証実験の範囲をもっと拡大したらどうだろうか。たとえば建物のカベ、さらに高速道路などにもペロブスカイトを張り付ける。それには何社かのメーカーと契約しなければならないが、箇所を限ればそんなに費用はかからないだろう。

もともと東京都は、太陽光発電の普及に熱心だ。昨年12月には条例を改正し、大手の建設会社が手掛ける一戸建てを含む新築の建物には、リチウム型発電装置を設置するよう義務付けた。補正予算を組み、計301億円を補助する。30年までに100万㌔㍗の発電を目指すが、これは原発1基分、都内の家庭が消費する電力の約6%に当たる。

太陽光発電とは別の話だが、東京都はいま銀座の街を囲むように走る「東京高速道路KK線」を、遊歩道に造り替える計画を進めている。ほかにも高速道路の改修計画は数多い。こうした道路や学校・病院など、ペロブスカイトを張り付けられるところには、どんどん張って行く。その結果100万㌔㍗の発電が出来れば、東京都は原発2基を所有することになる。

もちろん送電線や大型蓄電池の整備など、国の関与も必要だ。それを東京都が先導して行けば、他の都市にもペロブスカイト発電は広がって行くだろう。成功すれば、日本の燃料輸入量を大幅に減らすことが出来、ペロブスカイトを輸出の主柱に据えることも出来る。リチウム型のように普及段階で、海外勢に負けたらもうアトがない。小池さん、目を大きく開けて上を向いて走ろう!

         ≪23日の日経平均 = 下げ -483.34円≫

         【今週の日経平均予想 = 1勝4敗】     

「ペロブスカイト」は 最後の命綱 (上)

2023-06-23 08:04:58 | エネルギー
◇ これに負けたら、もうアトがない = このタイトルを見て理解できる読者は、かなりのエネルギー通だろう。名前が小難しいこともあって、まだ一般には浸透していない。しかし4月に日本で開催されたG7(主要7か国)気候・エネルギー・環境相会議で採択された共同声明には「ぺロブスカイト太陽電池などの革新的な技術の開発を促進する」と、わざわざ固有名詞が書き込まれた。世界でも、その覇権をめぐる競争が激化している。

いま普及している太陽光発電装置は、ほとんどがリチウム・イオン型。住宅の屋根に乗っている、あの形だ。これに対してぺロブスカイト太陽電池は、特殊な結晶構造を持つぺロブスカイトと呼ばれる物質を塗って乾かすだけ。きわめて薄く、重量はシリコン型の1割。自由に折り曲げられるので、建物の壁や車の屋根などにも簡単に張り付けられる。弱い光でも発電可能、製造コストもシリコン型の半分という、いいことずくめ。

しかも、このペロブスカイトは09年に、桐蔭横浜大学の宮坂力特任教授が発明した。日本発の新製品である。さらにこの物質の主原料はヨウ素だが、これは日本が世界で2番目の生産国。条件も全く整っている。ところが不思議なことに、日本のメーカーはぺロブスカイトの実用化・普及にはあまり熱心でない。政府の姿勢もぺロブスカイトに集中しているとは思えない。中国やポーランドの企業が、すでに大量生産を始めているというのに。

嫌な思い出は、シリコン電池の大失敗。日本は00年代に開発・実用化で先行、世界シェアは50%を超えていた。それが普及で失敗、現在は中国製品が世界の80%を占めている。ぺロブスカイト電池は日本のエネルギー事情を大幅に改善、日本経済に革命を起こす可能性がきわめて強い。これを逃せば、もうアトがないと考えるべきではないか。

                           (続きは明日)

        ≪22日の日経平均 = 下げ -310.26円≫

        ≪23日の日経平均は? 予想 = 上げ≫

原油価格は 上がる? 下がる?

2023-06-10 07:34:57 | エネルギー
◇ 産油国は100万バレルを追加減産 = OPEC(石油輸出国機構)とロシアなどの産油国は4日、オーストリアのウイーンで閣僚級会合を開き、現在の減産体制を24年末まで継続することを決めた。またサウジアラビアは独自で、7月あるいはそれ以降も日量100万バレルを減産する。現行の減産量は366万バレル、サウジの新たな減産を加えると計466万バレル。世界消費量の4.6%に当たる。

こうした減産量の拡大は、言うまでもなく原油の国際価格を押し上げることが目的。たとえばニューヨーク市場のWTI〈テキサス産軽質油)先物価格は、ウクライナ戦争が始まった直後の昨年3月には1バレル=130ドルにまで高騰した。しかし、その後はずっと下げ基調で、最近は70ドルを割り込む場面もあった。今回の決定で75ドルまで上昇したが、すぐに70ドル近辺へ反落している。というのも今回の会合では減産に反対する国が多く、結局はサウジアラビアが独自の減産で体面を保った形になったからだ。

今後の原油価格は上がるのか、それとも下がるのか。まず供給面からみると、産油国側がこれ以上の減産をすることは、多くの国が反対していてかなり難しい。次に需要面での要因は、アメリカと中国の景気動向ということになる。そのアメリカは、これから景気後退に入るという見方が強い。また中国の景気回復も、いまの足取りはきわめて鈍い。

したがってWTI価格は、年内60-80ドル程度で推移する公算が大きい。日本にとっては、一息つける状況だろう。しかし電気料金やガソリン代に対する補助金は、間もなく終了する。政府はまた補助金の延長を考えるのだろうか。もっと根本的なエネルギー対策が必須だと考えられるが、決定したばかりの“骨太の方針”をみても、そんな影は見当たらない。

        ≪9日の日経平均 = 上げ +623.90円≫

        【今週の日経平均予想 = 2勝3敗】    

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