経済なんでも研究会

激動する経済を斬新な視点で斬るブログ。学生さんの就職準備に最適、若手の営業マンが読めば、周囲の人と差が付きます。

エネルギー無策を露呈 : G7会議 (下)

2023-04-21 07:05:48 | エネルギー
◇ 原発にみる各国の基本的な考え方 = G7気候・エネルギー・環境相会合は、原発と再生可能エネルギーについてはきわめて現実的に対応した。閣僚声明では、ドイツとイタリアを除く5か国が「原発は安価で低炭素のエネルギーとなる可能性を認識する」と書き込んでいる。これはヨーロッパ各国が、原発に対する基本的な考え方を明確にしているからに他ならない。

たとえばドイツは15日、最後に残った3基の原発を運転停止。17基あった原発を完全に廃棄する。福島第1原発の事故を受けて、当時のメルケル首相が脱原発を決断。内閣が変わっても、この方針を貫いた。今後は風力を中心とした再生エネルギーによる発電を拡大して行く。またイタリアも脱原発の方針を決めている。

これに対してイギリスとフランスは、原発を増やして脱炭素を進める方針。このように姿勢がはっきりしているので、共同声明も異例な形になった。だが日本はどうだろう。岸田首相は「原発は最大限活用する」と、しばしば言明している。これを受けて、政府部内には「次世代型の原発を新設する案」も浮上しているのが現状。だが原発による発電比率をどこまで高めようとしているのか、全く不明。だから現実的な計画とは、言うことが出来ない。

原発の占める大きさが不明だから、太陽光や風力など再生エネルギーの比重もよく判らない。もちろんドイツのように原発をゼロにすると宣言する必要はないし、フランスのように可能な限り原発を増やすと決める必要もない。だが将来を見据えた実現可能な電源計画を持つことは、何より重要だ。それがないから、G7会合で日本は防戦一方になってしまった。

        ≪20日の日経平均 = 上げ +50.81円≫

        ≪21日の日経平均は? 予想 = 下げ≫

エネルギー無策を露呈 : G7会議 (上)

2023-04-20 08:04:31 | エネルギー
◇ 議長国・日本がぶち壊し役に = 札幌市で開かれたG7(主要7か国)気候・エネルギー・環境相会合は16日、閣僚声明を発表して閉幕した。ところが、この声明の内容は迫力ゼロ。実質的には、ほとんど意味がないものになっている。出席した欧米の閣僚たちは、口々に「議長国の日本が多くの問題で水を差した」と恨み節。確固たるエネルギー計画を持たない日本の欠点が、思わぬところで露呈してしまった。

最大の関心事である化石燃料の扱い。声明は「CO₂排出削減対策のない化石燃料の使用を段階的に停止する」と書いた。CO₂排出削減対策というのは、CO₂を回収して地下に貯蔵する措置など。これまでも段階的に停止することは合意されていたので、今回はその対象に天然ガスを含めたことだけが新しい。また「世界の温室ガス排出量を、35年までに19年比で60%削減することの緊急性が高まっている」とも書かれているが、これは国連の政府間パネルが3月に発表した文面と全く同じだ。

石炭火力発電の問題。ヨーロッパ各国とカナダが、廃止時期の明示を強く主張した。しかし日本の反対で、明示はせず。声明には「段階的な廃止を目指す」とだけ書き込まれた。これは昨年のG7会合で発表された閣僚声明と全く同じ内容。何も進歩がなかったことを意味している。当然、各国代表からは失望の声が上がった。

当面の関心事である排ガス自動車の販売規制。アメリカやイギリスは明確な日時の設定を強く主張したが、日本は反対。その結果、声明には「35年までに00年比で50%削減する可能性に留意する」という、全く意味不明な文章が書き込まれた。また欧米各国が要望したEV(電気自動車)の導入目標については、全く触れられなかった。

                        (続きは明日)

        ≪19日の日経平均 = 下げ -52.07円≫

        ≪20日の日経平均は? 予想 = 下げ≫

原油価格は もう下がらない! (下)

2023-04-08 07:03:39 | エネルギー
◇ アメリカの中東に対する影響力が低下 = 世界各国間の政治・経済的な力学が大きく変動したきっかけは、アメリカがシェール石油の増産に成功したことだ。これでアメリカは石油の純輸出国となり、中東産原油に頼る必要がなくなった。産油国側にとっても、アメリカは‟上客”ではなくなった。こうした間隙を突いて、中国がサウジアラビアとイランの関係を修復。この結果、サウジアラビアはロシアとの関係を深めることになった。OPECプラスの結束は強化されたと言えるだろう。

さらに産油国は、ここ数年で多くのことを学習した。価格の引き上げを目指して減産し過ぎると、一部の産油国は収入の減少に耐えられなくなる。また先進国の景気が悪化して、原油の需要を減らしてしまう。だから大幅な減産はしないし、減産できる国だけで減産すればいい。国際価格が70ドルに近付けば減産を強化し、80ドル台に引き上げる。先進国の景気が回復すれば100ドル以上も可能。--これが最近のOPECプラスの戦略のようだ。

今回の産油8か国による自主減産をみても、5月からの総減産量は世界需要の約4%にとどめている。かつてのように1割とか2割といった大幅な減産は避けている。OPECプラスはこうした巧妙な戦略で、原油の国際価格を通じて世界経済をコントロールしようとしているかのようだ。したがって原油の国際価格は、70ドル以下には下がりにくくなっている。

原油価格の高止まりは、日本経済に大きな悪影響を及ぼす。物価の高騰と大幅な貿易赤字。これによって国民の生活は苦しくなり、景気はよくならない。にもかかわらず、政府は抜本的な対策を何も打たない。原油の中東依存度は95%と、むしろ上昇してしまった。少しずつでも原油の輸入量を減らして行く政策を、もっと真剣に考えるべきである。

        ≪7日の日経平均 = 上げ +45.68円≫

        【今週の日経平均予想 = 4勝1敗】     

原油価格は もう下がらない! (上)

2023-04-07 07:29:14 | エネルギー
◇ 電気値上げ圧縮は空振りか? = 大手電力6社は、家庭向け規制料金の値上げ幅を圧縮して再申請した。経済産業省の要請に従い、原油や天然ガスの輸入価格が低下した昨年11月-本年1月を積算の根拠とすることで圧縮が可能となった。たとえば東京電力の場合、当初は29.3%の値上げを申請していたが、再申請では17.1%に縮小されている。経産省は値上げ申請のあった北海道・東北・東京・北陸・中国・四国・沖縄の7社に圧縮を要請したが、北陸電力だけは応じなかった。

話は飛ぶが、OPEC(石油輸出国機構)プラスと呼ばれる産油国連合のうちの8か国が2日、5月から自主減産することで合意した。サウジアラビア・イラク・アラブ首長国連邦・クウェート・カザフスタン・アルジェリア・オマーン・ガボンの8か国で、日量116万バレルを減産する。またOPECプラスは、昨年10月から続けている日量200万バレルの減産も再確認。このうちロシアは日量50万バレルの減産を継続する。

この合意を受けて、原油の国際価格は急騰。ニューヨーク取引所のWTI(テキサス産軽質油)の先物相場は、1バレル=70ドル強から81ドル台にまで急上昇した。この相場はこの冬60ドル台に落ち込んでおり、経産省はその水準を土台に値上げ申請をやり直すよう指導したわけ。それがホッとする間もなく、国際価格は80ドルに乗せてしまった。運が悪かったと言うしかない。

原油の国際価格は、これまでも大きな変動を繰り返してきた。世界経済が上向いて需要が増えれば上昇、需要が減って価格が下がれば産油国が減産して支えるという構図だった。だから今回も「しばらくすれば、また下がる」と見る人は多い。しかし、この1-2年で世界各国間の政治・経済的な力学は、大きく変動した。その結果、原油の国際価格は下がりにくくなったと考えられる。その状況を、もう少し掘り下げてみると・・・。

                     (続きは明日)

        ≪6日の日経平均 = 下げ -340.63円≫

        ≪7日の日経平均は? 予想 = 上げ≫

木を見て森を見ない 新・原発政策 (下)

2023-03-02 08:04:18 | エネルギー
◇ エネルギー計画も作らない杜撰さ = いま日本は年間およそ1兆㌔㍗時の電力を生産し、消費している。その電力をどんなエネルギー源で生産するかを決めるのが、エネルギー計画の中核となる電源構成。21年度の実績は、再生可能エネルギー20.3%、原子力6.9%、火力72.9%となっている。このうち火力発電に使う原油・石炭・天然ガスなどの輸入価格が暴騰した。だから「原発を最大限活用する」という考え方は、必ずしも間違いではない。

だが太陽光や風力など再生エネルギーの活用も、きわめて重要だ。ところが今回の新・原発政策には、その視点が全くない。原発の新増設だけに、マトを絞ってしまった。これは明らかに経産省の跳ね上がりすぎ。このため唐突な感じは否めず、反対論を強める結果につながった。岸田首相も「これでは具合が悪いかな」と感じたのだろう。

福島原発の大事故によって、多くの日本人が原発アレルギーを持ったことは事実だろう。そんなところへ、突如という感じで「古い原発の60年を超す運転、次世代型原発の新設」という新政策を突き付けられた。心配や反対の声が上がるのは、むしろ当然かもしれない。ただ国民の多くは、必ずしも「原発、絶対反対」ではない。「無くて済むなら、それに越したことはない」と考える人が大半だろう。

原油・石炭・天然ガスの輸入量を減らすために、「まず再生可能エネルギーによる発電を増やす。政府は補助金を出して、太陽光や風力発電の普及を推進する。それでも不足する分は、原発に頼らざるをえない。だから古い原発の寿命を延ばし、次世代原発の新設にも取り組む。その結果、10年後の電源構成はこうなる」--こんな新エネルギー計画ならば、国民の多くは理解してくれるはずだ。岸田さん、森を見よう。

        ≪1日の日経平均 = 上げ +70.97円≫

        ≪2日の日経平均は? 予想 = 上げ≫

Zenback

<script type="text/javascript">!function(d,i){if(!d.getElementById(i)){var r=Math.ceil((new Date()*1)*Math.random());var j=d.createElement("script");j.id=i;j.async=true;j.src="//w.zenback.jp/v1/?base_uri=http%3A//blog.goo.ne.jp/prince1933&nsid=145264987596674218%3A%3A145266740748618910&rand="+r;d.body.appendChild(j);}}(document,"zenback-widget-js");</script>