経済なんでも研究会

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真剣味に欠けた 新・原発政策 (上)

2022-08-30 07:20:58 | 原発
◇ こんどの冬には間に合わない = 岸田首相は先週の記者会見で、原子力発電所に対する新しい方針を発表した。その骨子は①いま再稼働が可能な10基の原発に加えて、7基の再稼働を目指す②新増設や建て替え、さらに次世代型原子炉の開発について、年末までに結論を出す③最長60年の規制に関して、安全審査中の期間を除外する形で実質的に延長できるかどうか検討する--というもの。

これまで政府は「原発は出来る限り活用する」「新増設や建て替えは考えない」の方針を貫いてきた。したがって岸田首相のこの発言は、原発に関して政府が方針を大転換したことを意味する。しかし一般の受け取り方は、どちらかというと冷ややかだ。「なんで、いまごろになって」という感触が強い。

ウクライナ戦争の影響で、原油・天然ガス・石炭の国際価格が暴騰した。エネルギーの多くを輸入に頼る日本は「原発に対する依存度を高めるしかない」という主張は早くから聞こえていた。ところが政府は、これまでずっと口を閉ざしてきた。だから「いまごろになって」という感触が拭えない。そのうえ岸田首相の会見では、こんどの冬に予想される電力不足については全く触れられなかった。

経済産業省は「新たに目指す7基の再稼働は、来年夏以降のことだ」と説明している。だから岸田首相の新方針は方向性は正しいとしても、喫緊の問題である冬の対策には間に合わない。早めに原発対策を講じたイギリスやフランスに比べると、日本の対応は少なくとも1年以上は遅れることになる。そして岸田首相の会見には、まだ抜け落ちた点がいろいろ・・・。

                            (続きは明日)

        ≪29日の日経平均 = 下げ -762.42円≫

        ≪30日の日経平均は? 予想 = 上げ≫

東京電力の 愚策 : 処理水の処理法

2021-09-03 07:41:14 | 原発
◇ 小型タンカーで運んだら = 直径2.5メートルの海底トンネルを、沖合1キロまで掘り進める。そこへ処理水を流し込み、海中に放出する。--東京電力がまとめた処理水の処理法である。福島第1原発で発生した汚染水から、トリチウム以外を除去したものが処理水。現在、原発の敷地内に設置された1000基以上のタンクに保管されている。政府と東電はことし4月、この処理水を海洋に放出することを決めた。

トリチウムは三重水素と呼ばれ、水の性質と近いため現在の技術では分離が難しい。原発を運転すると必ず微量のトリチウムが発生するため、世界中の原発がこのトリチウムを含んだ処理水を海洋に放出している。ところが福島県では風評被害を恐れる漁業者が海洋放出に反対、東電は沖合1キロでの放出で風評被害を軽減できると考えた。

それはいい。しかし海底トンネルを掘る必要があるのだろうか。処理水を押し出す装置も含めると大工事で、相当な費用がかかる。それよりは簡単な岸壁を造り、小型のタンカーで運んだらどうだろう。費用がずっと安くなるうえ、放出する地点も自由に選択できる。1か所で放出するより、トリチウムを分散処理できるに違いない。

福島第1原発の廃炉には、膨大な費用がかかる。その費用は、税金の投入と電気料金の値上げで賄うしかない。ならば処理水の海洋放出に多少の費用がかかっても、心配することはない。東京電力の処理案には、こんな考え方が見え隠れする。原子力規制委員会が最終チェックするようだが、なぜタンカーではダメなのかを明らかにしてもらいたい。

        ≪2日の日経平均 = 上げ +92.49円≫

        ≪3日の日経平均は? 予想 = 上げ≫

100倍に薄めよう : 汚染水の海洋放出 (下)

2020-10-23 07:21:59 | 原発
◇ 徹底的な安全対策を = 原発敷地内の海岸沿いに、巨大なプールを建設する。ここへ処理水を移し、海水を注入。トリチウムを国際的に安全とされる濃度の40倍にまで薄める。よく撹拌したあと、ホースで海中に流す。――政府が考えている処理水の海洋放出は、こんな方式になるようだ。世界中の原発が海に放出している処理水の40倍も安全。だから風評被害も起こりにくいというわけだ。

でも念には念を入れたら、どうだろう。思い切って100倍に薄める。海水を使うだけだから、コストはほとんど変わらない。さらにプールではなく岸壁を造って、小型のタンカーを横付けする。そこで処理水の100倍希釈も行えばいい。タンカーは黒潮の先まで航行して、処理水を放出する。こうすれば、風評被害は激減するだろう。

将来のことも考えておきたい。巨大なプールを造っても、役割が終われば再利用する可能性はない。一方、岸壁ならば、今後も資材の搬入や廃材の搬出に役立てることが出来る。またタンカーの数を増やせば、処理水の処分スピードを上げることは容易だ。100倍に薄めた処理水ならば、外洋で投棄しても国際的に非難されることはないだろう。

もう1つ、漁業関係者の反対について、政府は補償を考えているとも伝えられる。これまでも原発関係では、政府や電力会社が使ってきた“奥の手”だ。しかし今後は原発の廃炉などに伴い、数々の放射性廃棄物を処理しなければならない。ここでは悪しき前例を作らないように努力すべきだろう。もちろん実際に風評被害が起こったら、補償は必要だ。事前にカネで解決しようとするのは、止めようという意味である。
      
       ≪22日の日経平均 = 下げ -165.19円≫

       ≪23日の日経平均は? 予想 = 上げ≫

100倍に薄めよう : 汚染水の海洋放出 (上)

2020-10-22 07:41:19 | 原発
◇ 政府がようやく決断へ = 福島第1原発の敷地内に林立するタンク。なかには放射性物質を含んだ処理水が貯蔵されている。処理水というのは、原発事故で冷却に使われた水や、炉心溶融が起きた建屋に地下水や雨水が流入して発生した放射性物質を含んだ汚染水を、一応は浄化した水。この水をどう処分するか。長いこと議論を続けてきたが、政府はやっと近く関係閣僚会議を開いて、海へ放出することを決める。

林立するタンクの数は約1000基。貯蔵されている処理水は約120万トンで、1日に約180トン増加している。この調子で増え続けると、2年後にはタンクを増設する敷地がなくなる見込みだ。その処分方法については専門家会議が、蒸発させる案と海に放出する案を提示。政府は最終的に海洋放出案を採用することになった。

実は汚染水を浄化装置にかけても、トリチウムという放射性物質だけは取り除けない。三重水素と呼ばれるこの物質は水の分子と結合しやすく、分離が難しいからだ。ただトリチウムは自然界にも存在しており、微量なら人体への悪影響はない。現に日本をはじめ世界各国が、原発から出るトリチウムを含んだ浄化処理水を海に放出している。

ところが福島県の場合は、原発事故による風評被害が収まりつつあるところ。ここでトリチウムを含む処理水を海中に流せば、また風評被害が起こりかねない。この心配があるため、漁業関係者は強く反対している。政府はどのようにして風評被害の再燃を抑え、漁業者を説得しようとしているのか。

                               (続きは明日)

       ≪21日の日経平均 = 上げ +72.42円≫

       ≪22日の日経平均は? 予想 = 下げ≫

100倍に薄めたら : 原発処理水 (下)

2019-12-27 07:48:18 | 原発
◇ ≪10万分の1≫にして海に流す = 福島第1原発の敷地内に林立するタンクに貯め込まれた120万トンの処理水。そこに含まれる放射性物質トリチウムの量は、ごく微量だ。大気中に自然に含まれているトリチウムの濃度の1000分の1だという。だから国際的にも海に流すことが認められており、世界中の原発や日本国内の原発も、同様の処理水を海に放出している。

しかし地元の漁業者は、この程度の説明では納得しない。原発事故のあとの風評被害で、魚が全く売れなくなった。最近になって、ようやく売り上げも回復してきた。そこへ処理水を海に流せば、再び風評被害に見舞われるのではないか。漁業者たちの心配も、よく理解できる。そこで解決策を――。

海岸に大きなプールを作り、そこで処理水に海水を加えて100倍に希釈する。つまりトリチウムの濃度を、自然濃度の10万分の1にまで薄めるわけだ。これを少しずつ海に流す。さらに総理大臣とまでは言わないが、経済産業相や環境相は幹部を引き連れて現地をたびたび訪れ、獲れた海産物を食ってみると約束する。

これから日本中で 老朽化した原発の廃炉作業が始まる。汚染水どころか、放射能にまみれた汚染物質、さらには使用済みの燃料棒などが大量に出てくることは明らかだ。政府は困難なコトを先送りすることを止め、もっと毅然とした行動をとらなければ、問題の解決は覚束ない。福島原発の処理水を処理する方策に6年の歳月をかけているようでは、全く先が思いやられる。

       ≪26日の日経平均 = 上げ +142.05円≫

       ≪27日の日経平均は? 予想 = 上げ≫

Zenback

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