経済なんでも研究会

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100倍に薄めたら : 原発処理水 (上)

2019-12-26 07:50:58 | 原発
◇ 空中散布は問題を拡散させるだけ = 経済産業省は23日、福島第1原発で溜った処理水の廃棄案を初めて公表した。その内容は①薄めて海に放出する②蒸発させて大気中に放出する③その両方を併用する――の3案。有識者会議が6年にわたって検討してきた結果だが、実施時期については言及していない。風評被害を恐れる地元では、早くも3案すべてに反対する声が高まっている。

福島第1原発では、溶融した核燃料を冷却するために使った水に、大量の放射性物質が含まれる。これが汚染水。この汚染水から、化学的処理で放射性物質を除去した水を、処理水と呼んでいる。ただ放射性物質のうち、水素によく似た性質を持つトリチウムだけは、現在の技術では完全には除去できない。

このため福島原発では現在、敷地内に991基のタンクを造って処理水を貯め込んでいる。処理水は毎日170トンずつ増えており、貯蔵量は120万トンに及ぶ。タンクを増設するための敷地にも制約があり、東京電力では「22年夏ごろには限界になる」と予測している。つまり、この辺で何とかしないと処理水があふれ出す。そんなギリギりの状態になったために、やっと処理方法の具体案を公表したわけだ。

最大の難関は、地元の風評被害。これから地元を説得しなければ、処理水を減らすことはできない。その観点からみると、処理水を蒸発させる方法は農業者を巻き込むことになり、問題を拡散させるだけ。したがって、方法はやはり海に流すしかないと言える。では、どうしたら風評被害をなくし、漁業者にも納得してもらえるのだろうか。

                             (続きは明日)

       ≪25日の日経平均 = 下げ -47.71円≫

       ≪26日の日経平均は? 予想 = 下げ≫

「廃炉から国民を守る党」は いかが?

2019-08-31 07:37:45 | 原発
◇ 電気料金への上乗せを拒否しよう = 東京電力が福島第2原発1-4号機を、すべて廃炉にすることを正式に決めた。事故で放射能まみれになった第1原発1-6号機はすでに決定済みなので、これで福島県の原発は完全に姿を消すことになった。ただ廃炉の完了までには、40年以上の歳月を要する見込み。また第2原発4基の廃炉にかかる費用は、合計4100億円にのぼると試算されている。

東日本大震災が起こる前、日本では54基の原発が稼働していた。そのうち福島第2原発を入れて、これまでに廃炉と決まった原発は24基。残る30基のうち、原子力規制委員会の審査を受けて合格したのは9基だけ。あとの21基は審査待ちとなっているが、そのうちの半数ぐらいは老朽化のために廃炉となる可能性が高い。

東京電力は廃炉のための費用を積み立ててきたが、まだ1900億円以上が不足。これを10年にわたって分割、償却する方針だ。しかし財源を捻出できず、結局は電気料金に上乗せすることになるとみられている。廃炉費用が見積もりを上回れば、その分も上乗せされるだろう。こうした状況は、廃炉にする原発を抱えた他の電力会社でも同じ。

「原発は安い電源」と宣伝し、大いに儲けてきた電力会社。それが「後始末のための費用は、消費者にお願いします」というのは、あまりにも身勝手だ。ここは一つ「NHKから国民を守る党」ではないが、「廃炉から国民を守る党」でも作ってもらいたいもの。そうでもしないと、燃料棒から放射性廃棄物の処理費まで、国民にツケが回ってきてしまう。

       ≪30日の日経平均 = 上げ +243.44円≫

       【今週の日経平均予想 = 4勝1敗】   

“原発の時代”は 終わった! (下)

2019-02-21 07:46:56 | 原発
◇ 原発のコストは高かった = かつて原発の新設が盛んだったころ「発電コストは原発がいちばん安い」というのが常識だった。電気事業連合会が03年に発表した資料では「1KW時の電力を造るコストは原子力が5.3円、石炭火力が5.7円、石油火力は10.7円など」となっている。ところが11年の東日本大震災で、このコスト計算は大幅な変更を迫られた。安全対策費などが急増したほか、廃炉の費用まで計上するようになったからである。

この結果、現在の原子力による発電コストは、石炭火力の1.5倍だと試算されている。さらに、まだ計上されていない放射性燃料の最終処分費を加えれば、コストはずっと高くなるだろう。いま旧電力業界は16年に始まった自由化で、新規参入企業の攻勢を受けている。そんなときに、地域住民からも嫌われコストも高い原発は敬遠せざるをえない。それが廃炉のラッシュにつながった。

廃炉のコストは、けっこう高い。小型の玄海2号機でも365億円かかる。高速増殖炉もんじゅは3750億円。日経新聞の集計によると、原子力施設すべての廃止には6兆7000億円が必要だという。このうち商業用原発は各電力会社が積み立てているが、研究用は準備がない。結局は料金と税金を通じて、消費者が負担することになる。

政府のエネルギー基本計画によると、30年の電源に占める原発の比率は20-22%となっている。現状からみると、この比率は達成できそうにない。その不足分は太陽光など再生可能エネルギーで埋めるのが理想的だが、政府はそのための施策をなにも講じていない。日本にとって最重要なエネルギー計画は、いま宙ぶらりんのままになっている。

       ≪20日の日経平均 = 上げ +128.84円≫

       ≪21日の日経平均は? 予想 = 上げ≫

“原発の時代”は 終わった! (上)

2019-02-20 08:11:05 | 原発
◇ 廃炉決定・検討中は26基に = 九州電力は先週、玄海原発2号機(佐賀県)を廃炉にすると発表した。玄海2号機の出力は55万9000KWと小型。1981年3月に稼働したが、東日本大震災後は運転を停止していた。廃炉にする理由は、震災後に強化された安全基準を守るための費用が掛かり過ぎるため。老朽年数を考えると、再稼働させても採算が取れないと判断した。九州電力によると、廃炉に必要な費用は365億円。

東日本大震災の前、日本には54基の商業用原発が存在した。そのうち福島第1原発を含め、玄海2号機までで計26基が廃炉を決定もしくは検討している。残りは28基だが、これまでに原子力規制委員会の審査に合格したものが15基。うち再稼働しているのは9基、残りの13基が審査待ちというのが原発の現状である。

日本には商業用原発のほかに、原子力開発研究機構などが保有する研究用の原発もある。たとえば高速増殖炉もんじゅ(福井県)や東海再処理施設(茨城県)など。これらも結果的に失敗したり、老朽化したりして、多くが廃炉の決定を下された。原子力技術の喪失を心配する声もあるが、後継機を造る計画はいまのところない。

原発の新設は、きわめて困難な情勢だ。したがって商業用原発で審査を待っている13基がすべて合格したとしても、日本の原発は最大限28基という計算になる。だが審査で不合格になったり、老朽化が進んだりして、実際に稼働する原発はもっと減るに違いない。原発に賛成・反対の議論を飛び越えて、現実は“原発の時代”の終わりを告げていると言えるだろう。

                           (続きは明日)

       ≪19日の日経平均 = 上げ +20.80円≫

       ≪20日の日経平均は? 予想 = 下げ≫

懲りない 立憲民主党の「原発ゼロ法案」 (下)

2018-03-01 07:55:46 | 原発
◇ 民主党時代からの悪いクセ = 国民感情に配慮して原発に対する依存度は、できるだけ下げたい。しかし必要な電力の供給は確保する必要がある。実は安倍内閣も、この問題では苦慮しているのが現状だ。当初は再生可能エネルギーの普及に期待したが、強制買い取り制度の運用で失敗を重ね、いまだに「エネルギー基本計画」の作成もできない状態にある。野党にとっては絶好の攻撃材料だが、対策が欠如した原発ゼロ法案などを公表すれば、お互いさま。迫力のある攻撃は不可能になってしまうだろう。

高い理想を掲げるが、実現は出来ない。これが民主党時代から引きずっている悪弊である。天下を取ったときも、民主党は沖縄の基地問題や消費税率の見直し、社会保障政策などで、この悪弊を露呈。結局は有権者に見放された。今回の原発ゼロ法案作成は、この失敗をまた繰り返しているように見受けられる。

“原発ゼロ”を掲げれば、他の与党との共闘がしやすくなるという思惑もあったに違いない。しかし理想では同調できても、具体論では一致できない。これまた民主党系の歴史が教えるところだろう。たとえば法案に書き込んだ「30%の電力節約」などは、選挙が近づけばすぐに党が分裂する根拠になる。

国民の大多数は「原発はない方がいい」と考えている。だが「耐乏生活を送っても原発はゼロがいい」と言う人は、そのうちのごく一部だ。多くの人は「生活のレベルを落とさずに、原発をゼロにする方法はないものか」と、政治家に期待をかけている。こうした国民の感情を理解できなければ、立憲民主党が政権をとることはないだろう。

      ≪28日の日経平均 = 下げ -321.62円≫

      ≪1日の日経平均は? 予想 = 下げ


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