経済なんでも研究会

激動する経済を斬新な視点で斬るブログ。学生さんの就職準備に最適、若手の営業マンが読めば、周囲の人と差が付きます。

見せかけの インフレ鈍化

2023-03-30 07:59:03 | 物価
◇ 補助金は持続不可能性 = 総務省が発表した2月の消費者物価は、生鮮食品を除いた総合指数で前年比3.1%の上昇だった。この上昇率は1月の4.2%から大きく縮小しており、インフレの鈍化を歓迎する論評も少なくない。ただ、これは政府が2月徴収分から実施した電気・都市ガス代の補助金による効果。むしろ生鮮食品とエネルギーを除いた総合指数は3.5%の上昇で、1月の3.2%より上げ幅を拡大している。

政府の補助金は電気と都市ガス事業者に支給され、その分だけ料金が下げられる仕組み。標準世帯で毎月3700円の引き下げが見込める計算。期間は2月徴収分から10月徴収分まで。予算総額は約6兆円。政府はほかにもがガソリンや小麦にも補助金を出して、価格を下げている。いまや補助金満開の感すらあるが、その財源は税金と国債だ。

この物価高の世の中で、少しでも電気やガス代が安くなることは喜ばしい。しかし大問題なのは、政府が補助金にばかり頼っていて、物価高を抑えるための構造的な改革を怠っていることだ。たとえば原子力や再生可能エネルギーによる発電を増やして、原油や石炭の輸入を少しでも減らそうと努力しないのはなぜだろう。補助金は永久に出し続けることは出来ない。

消費者物価が発表されたのと同じ日、経済産業省は再生エネルギーの賦課金を3円45銭から1円49銭に引き下げると発表した。これは再生エネルギーの普及を図るため、電気料金に賦課金を上乗せ徴収している制度。これを引き下げることで、家庭の電気代は月820円安くなるという。だが、それだけ再生エネルギーの普及は阻害される。ここでも目先のことしか見ない政府の姿勢が、はっきりと表れた。

        ≪29日の日経平均 = 上げ +365.53円≫

        ≪30日の日経平均は? 予想 = 上げ≫

企業物価は 高止まり : 11月

2022-12-16 07:41:11 | 物価
◇ 石油・石炭の値下がりで一息ついたが = 日銀は12日、11月の企業物価を発表した。それによると、20年平均を100とした物価指数は118.5。前年比では9.3%の上昇だった。21か月連続で上昇している。このうち輸入物価は契約通貨ベースで8.6%の上昇、円ベースでは28.2%の上昇だった。まだ円安による輸入物価の押し上げが続いている。

品目別にみると、最も大きく値上がりしたのは電力・都市ガス・水道の49.7%上昇。次いで鉱産物が32.9%、鉄鋼が20.9%、紙・パルプが10.8%の上昇。飲食料品は7.2%の上昇だった。516品目中、438品目が上昇している。ただ、ここで注目されるのは石炭・石油製品の価格。前年比でわずか0.5%の上昇にとどまっている。この傾向が持続すれば、物価全体の上昇に歯止めがかかる。

企業物価の上昇が、いちばん激しかったのは9月。前年比で10.3%上昇した。それに比べれば、11月はちょうど1ポイント上昇率が縮小したことになる。ところが品目別に比べてみると、鉄鋼以外はみな11月の方が大きく上昇している。たとえば電力・都市ガス・水道の9月の上昇率は38.8%で、11月を下回っていた。飲食料品も、9月は6.4%の上昇だった。にもかかわらず11月の指数が9月を下回ったのは、石油・石炭製品の価格がほぼ横ばいとなったことが大きい。

エネルギーの国際価格は、ロシア産の供給に不安のある天然ガスが強含み。しかし原油や石炭は目立って下げた。それに加えて円相場が円高に振れたため、日本が輸入する石油・石炭製品も上げ止まったことになる。エネルギーの面からみる限り、これで一息つけたという感じが強い。ただ原油や石炭の国際価格が値下がりしたのは、世界経済に不況の影が忍び寄ったため。そういう意味では、喜んでばかりはいられない。

        ≪15日の日経平均 = 下げ -104.51円≫

        ≪16日の日経平均は? 予想 = 下げ≫

「物価は沈静へ」の予測が 心配

2022-10-25 06:59:50 | 物価
◇ 来年4-6月期には1%台に下がる? = 総務省は先週21日、9月の消費者物価を発表した。それによると、生鮮食品を除いた指数は前年比3.0%の上昇だった。この上昇率は消費増税時を除くと、91年8月以来31年ぶりの高さ。522品目が上昇、91品目が下落している。また生鮮食品を含む指数も、前年比は3.0%の上昇だった。

品目別にみると、生鮮食品を除く食料品が前年比4.6%の上昇。これは41年ぶりの高さ。またエネルギーは16.9%の上昇だった。エネルギーのうち都市ガスは25.5%、電気代は21.5%、ガソリンは補助金の効果もあって7.0%の上昇。さらに洗濯機やエアコンなど家庭用耐久財も、前年比11.3%の上昇だった。食品や電気代など生活に欠かせないモノやサービスに限定した基礎的支出でみると、前年比4.5%の上昇となっている。

注目されることは、こうした物価高は間もなく沈静するという予測。たとえば日経センターが36人のエコノミストに聞いたところ、予測の平均値は10-12月期が2.84%。さらに来年1-3月期は2.47%、4-6月期は1%台になるという。欧米諸国はインフレを抑制するため、いま懸命に金融を引き締めている。日本は超金融緩和政策を続けているのに、物価が下がるというから奇妙だ。

物価が沈静に向かうという予測の根拠の1つは、資源高が収まるという見通し。しかしウクライナ戦争は長期化しそうだし、世界経済が回復に転じれば、資源や食料の奪い合いが始まるかもしれない。もっと大きなもう1つの予測の根拠は、日本がデフレ状態から抜け出せないという見通し。こちらの方が実現性は高そうだから、いまから心配になってしまう。

        ≪24日の日経平均 = 上げ +84.32円≫

        ≪25日の日経平均は? 予想 = 上げ≫

31年ぶりの 上昇率 : 消費者物価

2022-09-22 08:20:57 | 物価
◇ 本当はもっと上がっている? = 総務省は20日、8月の消費者物価を発表した。それによると、総合指数は前年比3.0%の上昇。変動の激しい生鮮食料品を除いた総合指数は2.8%の上昇。ともに1991年の秋以来ほぼ31年ぶりの高い上昇率となっている。5か月連続で2%を超え、522品目中372品目が値上がりした。値下がりしたのは110品目にとどまっている。

項目別にみると、電気代が21.5%の上昇、都市ガスは26.4%の上昇。エネルギー関連の上昇率が突出して大きい。食料品は4.7%の上昇で、生鮮食料品を除くと4.1%の上昇だった。食パンが15.0%、チョコレートが9.3%、食用油は38.3%値上がりしている。世界的にインフレが進行、アメリカは8.3%、ユーロ圏は9.1%の上昇だった。これらに比べれば、日本の物価上昇率は極端に低い。

その理由は日本の場合、小売り段階での消費需要が弱く、価格転嫁が遅れているからだと説明されている。たとえば8月の企業物価は、前年比9.0%も上昇した。つまり卸売り段階では欧米並みに物価が上昇しているのに、小売り段階への価格転嫁がなかなか進まない。このため消費者物価は3%程度の上昇にとどまっているという説明だ。

この説明は、決して間違ってはいない。しかし消費者の実感からすると、物価はもっと上がっているように思われる。そこで疑問なのは、物価指数を構成する品目のウエート付け。たとえば電気代が全品目に占めるウエートは3.41%、食料品は26.26%となっているが、感覚的には低すぎる。仮にこの2品目のウエートがもっと高ければ、消費者物価指数はもっと上がる。

        ≪22日の日経平均 = 下げ -159.30円≫ 

       【今週の日経平均予想 = 3勝0敗】

輸入物価上昇の半分は 円安の影響

2022-09-14 07:31:10 | 物価
◇ 8月の企業物価は前年比9.0%の上昇 = 日銀が13日発表した8月の国内企業物価は、前年比で9.0%の上昇だった。7月と同じ上昇率。これで18か月連続の前年比プラスになった。物価の水準は過去最高。ウクライナ戦争などの影響でエネルギー・資源・食料品の国際価格が高騰、それに円安の影響が加わった。小売り段階での値上げラッシュも止まりそうにない。

調査の対象になった515品目のうち、約8割の431品目が上昇した。品目別にみると、電力・都市ガス・水道が33.4%、鉱産物が26.6%、鉄鋼が26.1%値上がりした。また飲食料品は5.6%、木材・木製品は20.2%の上昇だった。やはりエネルギー関連の上昇率が大きい。一方、値下がりしたのは農林水産物とスクラップ類の2品目だけだった。

このうち輸入品の物価だけを取り出してみると、全体では前年比42.5%の上昇。7月の49.1%上昇から、やや上昇幅が縮小した。品目別では、飲食料品が27.9%上昇している。注目されるのは、契約通貨ベースでみた輸入物価は21.7%の上昇にとどまっていること。要するに輸入物価の上昇率の約半分は円安の影響だったことが判る。

企業物価は企業の間で取引されるモノの値段。いわば卸売り段階の価格と言っていい。通常ならこの段階で価格が上がると、すぐに小売り段階に転嫁される。ところが現在は消費需要が弱いために転嫁が遅れ、たとえば7月の消費者物価は前年比2.6%の上昇にとどまっている。しかし転嫁は少しずつでも進むから、小売り段階での値上げラッシュは止まらない。

        ≪13日の日経平均 = 上げ +72.52円≫

        ≪14日の日経平均は? 予想 = 下げ≫

Zenback

<script type="text/javascript">!function(d,i){if(!d.getElementById(i)){var r=Math.ceil((new Date()*1)*Math.random());var j=d.createElement("script");j.id=i;j.async=true;j.src="//w.zenback.jp/v1/?base_uri=http%3A//blog.goo.ne.jp/prince1933&nsid=145264987596674218%3A%3A145266740748618910&rand="+r;d.body.appendChild(j);}}(document,"zenback-widget-js");</script>