経済なんでも研究会

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福井・沖縄・石川は東京より高い : 食料費

2022-08-26 07:34:25 | 物価
◇ 自給率が低いと輸送費が高くなる = 「全国で食料費がいちばん高いのは東京」と、ずっと思い込んできた。ところが日経新聞の調査によると、この思い込みは間違い。21年の消費者物価から計算すると、全国でいちばん食料費が高いのは福井県。次いで沖縄県、石川県の順。東京都はこの3県に続く4番目だった。ちなみに食料費がいちばん安いのは長野県、次いで宮崎県、奈良県。福井県と長野県では、8-9%ほどの差があった。

東京都に続いて食料費が高い県は、山口・山形・島根・徳島の順。大阪府は29番目で、全国平均を下回っている。、京都府は13番目だった。こうみてくると、食料費が高そうに思える大都市がそれほどでもなく、安そうにみえる地方の県がけっこう高い。このような一般常識を覆すような結果が出たのは、なぜだろう。

日経新聞は2つの理由を挙げている。1つは生産額ベースの食料自給率。20年度の統計でみると、福井県は54%、沖縄県も64%と低かった。自給率が低ければ、県外あるいは海外からの輸入が増える。その輸送費や円安の影響が加算されることになる。もう1つは、大型スーパーの数が少なく競争原理が働きにくいこと。たしかに言われてみれば、納得がゆく。

ただし家計の支出は、食料品に限らない。光熱費や交通費、さらには医療費や教育費まで含めた‟生活のしやすさ”は、どんな順番になるのだろうか。住宅費まで入れたら、東京都が一番高くなることは間違いない。やっぱり、東京がいちばん住みにくい?

        ≪25日の日経平均 = 上げ +165.54円≫

        ≪26日の日経平均は? 予想 = 上げ≫

岸田さん、それダメ!

2022-06-24 07:42:04 | 物価
◇ あなたの発言は矛盾している = 参院選では、物価の問題が論争のマトになっている。この物価騰貴について、岸田さんは「適切な対策を打ったから、日本の物価上昇率は欧米よりずっと低い」と、たびたび発言した。自民党の選挙公約にも「政府の緊急対策で、日本の物価上昇は欧米の4分の1程度に収まっている」と書いてあるから、自民党幹部の一致した考え方でもあるのだろう。だが、この考え方は間違っている。

たしかに直近の消費者物価上昇率をみると、アメリカの8.6%に対して日本は2.5%にとどまっている。しかし、これは政府の対策が効果を挙げたからではない。政府の対策はガソリンに補助金を出したぐらい。これでは物価指数を0.1%も下げられなかったろう。物価の上昇が抑えられた原因は、景気が悪いために高騰した輸入物価を小売り段階に転嫁できないことにある。

日銀の集計によると、5月の企業物価は前年比9.1%の上昇。うち輸入物価は43.3%も上昇した。だが、これを急速に転嫁できないため、消費者物価が2%台の上昇に抑えられていることは明かだ。おかしなことに岸田さんも自民党も、この価格転嫁の問題はよく認識しているようだ。たとえば選挙公約でも「労務費、原材料費、エネルギーコストの上昇分について、中小企業の取引価格の転嫁対策を徹底する」と書いている。

一方で「物価上昇の低さ」を自慢しながら、他方ではその原因である「転嫁の遅れ」をなくそうとする。どう考えても、論理の矛盾としか言いようがない。価格転嫁を促進して消費者物価が欧米並みに上昇すれば、岸田さんも自民党も大いに困ることになることは明かだ。優秀な自民党の幹部諸氏は、そんなことは十分に認識しているに違いない。にもかかわらず「物価は抑えられている」と強調するのは、選挙対策としか考えられない。だが矛盾した論理はダメである。

        ≪23日の日経平均 = 上げ +21.70円≫

        ≪24日の日経平均は? 予想 = 上げ≫

物価上昇2%の 衝撃 (下)

2022-05-26 07:57:57 | 物価
◇ 実感は2%どころじゃない物価高 = 景気が悪いから、日本の消費者物価は2%程度の上昇にとどまっている。しかし企業物価は10%も上昇した。これはウクライナ戦争や中国の都市封鎖で、エネルギー・資源・食料品の国際価格が急騰したためである。それに円安の影響が加わった。4月の輸入価格をみると、円ベースの価格は前年比44.6%の上昇。契約通貨ベースでは29.7%の上昇だったから、円安で輸入価格は15%ほど余計に上昇したことになる。

この弊害を避けるためには、日銀がゼロ金利政策を止めて金利を引き上げるしかない。ところが金利を上げれば景気はもっと悪化しかねないから、日銀は動けない。黒田総裁は「全体としてみれば円安はプラスだ」とか「物価の上昇は一時的だ」とか、苦しい言い訳に終始している。政府も金利が上がれば国債の利子負担が増加するので、静かに見守るだけ。

いちばん大きな問題は、2%という物価上昇率が、消費者の実感と大きくかけ離れていることだろう。電気料金やガソリン代はもとより、スーパーへ行っても値上がりしていない商品を探す方が難しい。なぜ物価統計と実感が、こんなに相違するのだろうか。その1つの原因は、購入頻度の問題。食料品や生活用品は毎日のように買うが、自動車や冷蔵庫は数年に1度しか購入しない。

そこで専門家が「2か月に1回以上購入する品目」だけの物価上昇率を試算したところ、5.9%上昇という結果が出た。こうした購入頻度の高い品目は、若者よりも高齢者によって買われる割合が大きい。したがって高齢者が感じる物価上昇率は、もっと高いとも言えそうだ。つまり消費者物価の平均上昇率は2%であっても、多くの人にとっての上昇率は6%以上である公算が大きい。この意味では、すでに消費者の段階でもインフレなのだ。

        ≪25日の日経平均 = 下げ -70.34円≫

        ≪26日の日経平均は? 予想 = 上げ≫

物価上昇2%の 衝撃 (上)

2022-05-25 08:05:47 | 物価
◇ 価格転嫁が進まない日本 = 総務省が20日発表した4月の消費者物価は、前年比2.1%の上昇だった。上昇幅が2%を上回ったのは、消費税が8%に引き上げられた15年7月以来7年10か月ぶりのこと。生鮮食品を除く552品目中351品目が上昇した。特にエネルギーと食料品の値上がりが目立つ。たとえば電気料金は21.0%、ガソリンは15.7%、食用油は31.5%の上昇だった。

日銀が16日発表した4月の企業物価は、前年比10.0%の上昇だった。2ケタの上昇は41年ぶりのこと。ウクライナ戦争の影響で、エネルギーと資源の価格が大幅に上昇した。たとえば石油・石炭は前年比30.9%、鉄鋼は25.0%、木材・木製品は56.4%、飲食料品は3.7%上昇している。744品目中533品目が値上がりした。企業物価というのは、企業間で取引されるモノの値段。企業段階でみる限り、インフレ状態だと言っていい。

この2つの物価統計をみてすぐ判るのは、両者の上昇率が大きくかけ離れていること。この上昇率の差を、物価ギャップと呼んでいる。本来なら企業段階で物価が上がれば、小売り段階の物価も上がる。ところが3月の物価ギャップは8.5ポイント、4月も7.9ポイントと広がったまま。これは小売り段階での需要が弱く、いわゆる価格転嫁がなかなか進まないことを表している。

欧米諸国の場合は、価格転嫁が順調に進んでいる。たとえばアメリカをみると、4月の生産者物価は11.0%の上昇、消費者物価は8.3%の上昇で、物価ギャップは2.7ポイントだった。日本で価格転嫁が進まないのは、景気が悪いために他ならない。専門家は今後も消費者物価は2%台の上昇にとどまると予測しているが、これは景気が良くならないと言っているのと同じである。

                     (続きは明日)

        ≪24日の日経平均 = 下げ -253.38円≫

        ≪25日の日経平均は? 予想 = 上げ≫

異なる インフレの色合い

2022-04-15 07:12:33 | 物価
◇ 消費者物価の高騰はアメリカだけ = 日銀が12日に発表した3月の企業物価は、前年比9.5%の上昇だった。品目別では木材・木製品が58.9%、電力・都市ガス・水道が30.3%、鉄鋼が27.7%、石油・石炭製品が27.5%と大きく値上がりした。コロナとウクライナ戦争で原油や資源の国際価格が急騰、それに円安の影響も加わっている。企業物価は企業間で取引されるモノの価格。卸売り段階では、すでにインフレが進行していると考えていい。

ところが消費者段階ではまだデフレの色が濃く、2月の消費者物価はわずか0.9%しか上昇していない。企業物価との上昇率の差は、実に8.6ポイントもある。これは景気の低迷で消費需要が弱く、小売り段階への価格転嫁がしにくいためだと考えられている。このように「川上はインフレ、川下はデフレ」の状態は、実は日本だけではない。

日経新聞の試算によると、川上と川下の物価上昇率の差は、ユーロ圏では25.5ポイントもある。また中国でも、6.8ポイントの差があるという。ヨーロッパや中国も景気が悪く、価格転嫁が遅れているわけだ。これに対してアメリカの場合は、3月の消費者物価が8.5%の上昇。生産者物価の上昇率とは、ほとんど差がない。景気が上向きで、完全雇用の状態を反映したものと考えられる。

川上での物価上昇は、いずれ川下にも転嫁される。その時間が長引くと、それだけ企業の経営は苦しくなる。倒産が増えるなど、景気はさらに悪化するだろう。だが転嫁が進めば、消費が圧迫される。どちらに転んでも景気は下降するから、タチが悪い。いまのところ景気がいいのはアメリカだけだが、その最大の原因はエネルギーの自給度だろう。エネルギーに乏しい日本は、どうすればよいのか。もっと真剣に考える必要がある。

        ≪14日の日経平均 = 上げ +328.51円≫

        ≪15日の日経平均は? 予想 = 下げ≫

Zenback

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