経済なんでも研究会

激動する経済を斬新な視点で斬るブログ。学生さんの就職準備に最適、若手の営業マンが読めば、周囲の人と差が付きます。

パン・めん・お菓子  また値上げ

2022-04-07 08:21:25 | 物価
◇ ウクライナ紛争で小麦が高騰 = 農林水産省は1日、輸入小麦の売り渡し価格を17.3%引き上げた。これにより現在の在庫がなくなる7月ごろから、パン・めん・お菓子など多くの食品が値上げされる。このところの値上げラッシュに拍車をかける形だ。原因はウクライナ紛争による小麦の供給不足。なにしろロシアとウクライナの両国で世界の小麦輸出の約3割を占めるから、影響はきわめて大きい。

日本では価格の安定を図るため、政府が輸入小麦の全量を買い取っている。ただ輸入先はアメリカ・カナダ・オーストラリアなどで、ロシアとウクライナ産の輸入はない。しかし世界的な供給不足で価格が高騰、やむなく売り渡し価格も引き上げることになった。ただ、ここで疑問が1つ。政府はガソリン価格の高騰には補助金を出して抑制しようとしているが、小麦はそのまま値上げ。さて国民にとって、ガソリンとパンはどっちが大事?

ロシアとウクライナ産の小麦は、主として中東やアフリカに輸出されている。たとえばイラク・レバノン・チュニジア・エジプトなど。これらの国では主食になっており、供給不足と値上がりは大問題だ。現に2010年、チュニジアに端を発した民主化運動‟アラブの春”は、パンの値上がりに怒った民衆のデモが火種となった。

戦火に荒れるウクライナでは、小麦の作付けどころではないだろう。したがって来年も生産・輸出が激減しそうだ。またロシア産も西側諸国が買い入れるようになるかどうか判らない。このため世界の小麦不足と価格の高騰は、まだ続く可能性が大きい。原油や資源の高騰だけでなく、いま世界は食料品の高騰にも悩まされ始めた。日本政府に、そういう認識はあるのだろうか。

        ≪6日の日経平均 = 下げ -437.68円≫

        ≪7日の日経平均は? 予想 = 下げ≫

初めから影が薄い 緊急物価対策

2022-03-30 08:07:03 | 物価
◇ 岸田首相に危機感はあるのか = 岸田首相は29日の閣僚懇談会で「物価高騰に対処するための緊急対策」を作成するよう関係閣僚に指示した。その内容は①原油などのエネルギー対策②食料・飼料の安定供給策③中小企業への支援策④生活困窮者の支援策――の4本柱から成っている。財源は新年度予算の予備費から捻出、関係閣僚が4月末までに法案を作成することになった。

具体的には、ガソリン価格の高騰を抑えるため、ガソリン税の一時的な引き下げを実施するかどうか。食料・飼料の輸入先の拡大、中小企業の資金繰り援助、年金生活者などに一律5000円を給付する案などが検討されるという。だが内容として、新しいものは全くない。これで物価騰貴が収まるとは、全く考えられない。むしろ、こんな内容の対策を作るのに1か月もかかることに驚いてしまう。

岸田首相は本当に、いまの物価騰貴に危機感を持っているのだろうか。現在は非常時だという認識を持っているのだろうか。たとえば原子力規制委員会とも協議して、この非常事態が終わるまでは1基でも多くの原発を稼働させることが出来ないか。あるいはガソリンや電気・ガス料金にかかる消費税を一定の期間だけ停止できないか。こんなことを関係閣僚に検討させれば、大きなインパクトがあっただろう。

また日銀に対して、金利の上昇を容認するよう要請したらどうか。日銀は連日のように指し値オペを実施、長期金利を0.25%以下に抑え込んでいる。その結果は円安が進行し、輸入物価を2割以上も押し上げているのが現実だ。とにかく、いまは非常時。「政府は金融政策に口を出さない」などと言ってはいられない。そのくらいのことをやらなければ、物価の高騰は収まらない。

        ≪29日の日経平均 = 上げ +308.53円≫

        ≪30日の日経平均は? 予想 = 上げ≫

実感とかけ離れた 物価指数

2022-03-24 07:39:26 | 物価
◇ 上昇率がわずか0.9%にとどまる不思議 = スーパーやコンビニの棚に並ぶおびただしい数の商品。そのなかで「値上がりしていない品物は?」と問われたら、考え込んでしまうだろう。なにしろパンやうどん、バターや食用油、みそや醤油に至るまで、次々と値上がりした。さらに電気やガス代、ガソリンや灯油、とにかく値上げラッシュ。普通の人の感覚では、もうインフレがやってきている。

ところが総務省が発表した2月の消費者物価は、総合指数が前年比で0.9%しか上昇していない。価格変動が激しい生鮮食品を除く指数は0.6%の上昇にとどまっている。物価は1%も上がっていないのだ。費目別にみると、食料品は全体で2.8%の上昇、光熱・水道は15.3%も上がった。しかし価格が下がった費目もあるため、全体の物価指数はあまり上がらない。

値下がりした費目をみると、家具・家事用品が0.8%の下落。大きいのは通信で、なんと33.8%も下がっている。これは菅前首相が携帯電話の通信料金を大幅に下げさせたため。これだけで、消費者物価指数を1.5ポイントも押し下げた。ただし、この押し下げ効果は4月から消滅する。この結果、4月以降の物価指数は2%を超す上昇になるとみられている。

だが、それにしても庶民感覚とのかい離は大きすぎる。その1つの原因は、たとえば食料品の10000分の2626、光熱・水道の10000分の693というウエイトの付け方にあるのでは。また毎日のように消費する食料やエネルギーと、金額は大きいが支出頻度が極めて低い住宅や自動車の取り扱い。改善の余地はないのだろうか。

        ≪23日の日経平均 = 上げ +816.05円≫
 
        ≪24日の日経平均は? 予想 = 下げ≫
          

インフレは避けられない : 企業物価

2022-03-11 07:39:25 | 物価
◇ 黙り込んだ日本銀行 = 日銀は10日、2月の企業物価を発表した。それによると、前年比の物価水準は9.3%の上昇。1月の8.9%から、さらに上昇幅を広げている。この上昇幅は石油ショックの後遺症が残っていた1980年以来の大きさ。これで12か月連続で前年比プラスを記録した。原油や資源の高騰に加え、円安が輸入物価を上昇させている。ウクライナ情勢が悪化したため、3月はさらに上昇幅が拡大しそうだ。  

品目別にみると、最も上昇したのは木材・木製品で前年比58.0%の上昇。次いで石油・石炭製品が34.2%、非鉄が24.9%、鉄鋼が24.5%の上昇だった。また電力・ガス・水道は27.5%の上昇となっている。円安が進んだために、輸入物価は全体として34.0%の上昇。品目では、石油・石炭・天然ガスが84.8%も値上がりした。

企業物価というのは、企業間で取引されるモノの価格。ここからモノは小売り段階へと流れるから、消費者物価もしだいに上昇する。ただ1月の消費者物価は、まだ前年比0.2%の上昇にとどまっている。これはコロナ不況の影響で、価格の転嫁が遅れているためだ。しかし時間がたてば小売り段階でも物価が上昇、インフレ傾向が強まって行くことは避けられない。

日銀は依然として「物価が2%上昇するまでは、現在の超金融緩和政策を続ける」と言い続けている。これは「景気が回復して物価が2%程度は上昇するまで」という意味だ。ところが企業物価の動向から判断すると、消費者物価はそう遠くないうちに2%上昇するかもしれない。そうなったら、日銀はどうするのか。緩和政策を続ければ、インフレは進行するだろう。と言って金融を引き締めれば、景気が悪くなる。この点について、日銀はダンマリを決め込んでいる。

        ≪10日の日経平均 = 上げ +972.87円≫

        ≪11日の日経平均は? 予想 = 下げ≫ 

まだ上がる! 電気・ガス・ガソリン代 (下)

2022-03-03 07:49:29 | 物価
◇ 原油150ドル説も飛び交う = ロシアはエネルギー大国である。原油は世界生産量の約1割、LNG(液化天然ガス)は2割弱を産出する。その輸出額は20年で3800億ドルにのぼった。EUはLNG需要の3分の1をロシアに依存、日本もLNG輸入の8.8%はロシア産だ。SWIFT(国際銀行間通信協会)からロシアを排除したため、その決済が非常に難しくなり、ロシア産エネルギーの輸出が止まってしまう危険性が大きい。

こうした心配から、ヨーロッパではロシア軍がウクライナ侵攻を開始した24日、LNGの価格が4割も急騰した。戦争が長引けば、原油相場も急騰することは避けられない。ニューヨーク市場のWTI先物相場は08年夏、供給不足のなかでイスラエル・イランの緊張をきっかけに、1バレル=147ドルの史上最高値を付けた。今回もそこまで上がるという観測が出ており、ムーディー社は150ドルという予測を発表した。

貿易統計でみると、日本は昨年、原油・LNG・石炭などの鉱物性燃料の輸入に17兆円の代金を支払った。ことしは20兆円を超えるに違いない。それだけ日本の消費者や企業は、購買力を流出させたことになる。仮に輸入量を5兆円減らせれば、その多くを消費や設備投資あるいは賃金に使えるはず。経済成長率はそれだけ伸びる。

そのためには、原発や再生可能エネルギーの拡大が必要だ。しかし歴代政府は、原発に触れる勇気がなかった。再生可能エネルギーは強制買い取り価格をいじくり回し、結局は発育不全の状態にしてしまった。成長率が伸びない大きな原因の一つが、ここにあることを政府が認識していない。ガソリン高騰に対する補助金などの対症療法だけでなく、将来を見据えたエネルギー政策の確立が肝要なのである。

        ≪2日の日経平均 = 下げ -451.69円≫

        ≪3日の日経平均は? 予想 = 上げ≫

Zenback

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