経済なんでも研究会

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‟新しい資本主義”の末路 (上)

2022-12-07 07:55:23 | 予算
◇ 裏切られた国民の期待 = 今年度の第2次補正予算が2日夜、国会を通過して成立した。総額は28兆9222億円、このうち22兆8520億円は国債を発行して賄う。22年度は当初予算が107兆5964億円、さらに第1次補正予算が2兆7009億円。これらを合計すると、なんと140兆円近くになる。コロナによる被害を救済する必要があったとしても、実に巨額の出費である。国債も大幅に増発され、財政事情はまた一段と悪化した。

第2次補正予算は、5つの部門から成り立っている。①物価高騰・賃上げへの取り組み、予算額=7兆8200億円②円安の活用=3兆4900億円③新しい資本主義=5兆4900億円④防災・減災、国土強靭化、外交、安全保障=7兆5500億円⑤予備費=4兆7400億円--という内容。岸田首相が声高に叫んでいた「新しい資本主義」が、ここでようやく予算化された。

そこで5兆円を超す「新しい資本主義」の中身をみると、人材育成のためのリスキリング(再教育)やNISA(少額投資非課税制度)の改善、重要技術の育成、脱炭素化投資の促進など、いろいろな項目が並んではいる。しかし全体として各省庁からの要求が雑然と並べられた感じ。予算も分散化してしまっている。これでは「新しい資本主義」が、なにを目指しているのか、これによって将来の日本がどう変わるのか。全く見当が付かない。

岸田首相は昨年12月に行なった所信表明演説のなかで、「新しい資本主義」について「明治維新、戦後高度成長、日本は幾多の奇跡を実現してきました。『新しい資本主義』という数世代に一度の歴史的挑戦においても、日本の底力を示そうではありませんか」と高らかに訴えた。この演説を聞いた多くの国民は、これで何かが大きく変わることを期待したはずである。それから1年たったいま、補正予算となって現われた「新しい資本主義」は、全くの期待外れとなってしまった。

                    (続きは明日)

       ≪6日の日経平均 = 上げ +65.47円≫

       ≪7日の日経平均は? 予想 = 下げ≫

「?」 が多すぎる 補正予算

2022-06-01 07:55:24 | 予算
◇ やっぱり選挙前のバラマキとしか思えない = 22年度の補正予算案が、きのう31日の国会で成立した。歳出規模は2兆7000億円、全額を赤字国債の発行で賄う。使途は原油高騰対策に1兆1739億円、4月に先行支出した分の補てんに1兆5200億円。これでガソリン・軽油・灯油・重油・航空機燃料に対する補助金の累計額は、1兆8822億円に達することになる。

だが、この補正予算には疑問点が多すぎる。なぜ燃料類に対してだけ、補助金を出すのか。電気料金やガス代は、上がり続けても構わないのか。政府が一括輸入して卸売りする小麦に、なぜ補助金を出さないのか。原油価格の高騰が続いた場合、政府はまた補正予算を編成して燃料類に補助金を出し続けるのか。

22年度の当初予算は、歳出規模が107兆6000億円で過去最大。成立したばかりで、予備費もまだ使われていない。ふつう補正予算は年度の後半、予算が足りなくなって編成される。それなのに、なぜこんな早い時期に、補正が必要なのか。いまでなければ、選挙に有効ではない。燃料に集中することで、票を集められるという計算ではないのか。

燃料費が値上がりすると、その消費が抑制される。逆に言うと、燃料に対する補助金は‟脱炭素”に逆行するのではないか。現に欧米諸国では「補助金など、とんでもない」というのが常識。その結果、年初からのガソリン値上がり率はアメリカが24%、ドイツが25%なのに対して、日本は補助金のおかげで4%にとどまっている。これを善政と言えるかどうか、はなはだ疑問である。

        ≪31日の日経平均 = 下げ -89.63円≫

        ≪1日の日経平均は? 予想 = 下げ≫

史上最大107兆円予算案の 弱点 (下)

2021-12-29 08:16:15 | 予算
◇ 税収見積もりと国債費にも危うさ = 22年度予算案で、政府は税収総額を65兆2350億円と見積もった。21年度当初予算の見積もりより7兆7870億円も多い。コロナ収束後の景気回復と大型の財政支出で、達成は可能だと説明している。また、その理論的根拠として、来年度の名目成長率が3.6%になるという試算を公表した。しかし日本はこの10年間、そんなに高い成長を遂げたことはない。本当に大丈夫なのだろうか。

成長する項目として、政府は個人消費が4.0%、企業の設備投資が5.1%増加すると試算した。だが、その大前提はコロナが収束することにある。また1人10万円などの支給金が、貯蓄に回らず消費に使われなければならない。その実現性は危ういのではないか。むしろ目いっぱいの税収が見込めるように、成長率を無理して高く見積もった感じさえする。

22年度予算では、新規国債を36兆9260億円発行する。国債発行残高は来年3月末には990兆円になる見込み。したがって発行残高は、間もなく1000兆円を突破する。その利子を支払うため、予算案では24兆3393億円もの国債費を計上した。だが、これは金利水準が大幅に上昇しないことを前提としている。

アメリカの中央銀行であるFRBは、来年4月には政策金利の引き上げを開始する予定だ。日本では日銀が国債を買い続ければ、金利の上昇を抑えられるかもしれない。しかし、その場合は円安が進行する。日本でも金利が上がれば、国債の利子負担が増大することは避けられない。仮に金利が1%上がれば、利子負担は10兆円も増加する。国債費が不足する可能性は大きく、ここにも危うさが存在する。

        ≪28日の日経平均 = 上げ +392.70円≫

        ≪29日の日経平均は? 予想 = 下げ≫

史上最大107兆円予算案の 弱点 (上)

2021-12-28 07:49:24 | 予算
◇ 経済成長を促す火種が見当たらない = 来年度予算の歳出規模は107兆5964億円、本年度の当初予算より1兆円ほど膨れ上がった。もちろん過去最大の金額。しかし予算案の内容をみると、いくつかの弱点が見付かる。その1つは、日本経済が長期的に元気を取り戻すための施策が見当たらないこと。たしかにコロナ対策など当面の施策も重要だが、これでは日本経済の将来像が少しも描けない。

予算案を費目別にみると、最も金額が大きいのは社会保障費で36兆2735億円。本年度より4400億円増えた。次は国債費で24兆3393億円、本年度より5808億円増えている。この2費目だけで約60兆円、全体の57%を占めた。あとは地方交付税交付金が15兆8825億円、公共事業費が6兆0575億円、文教・科学振興費が5兆3901億円、防衛費が5兆3687億円。それにコロナ対策の予備費として5兆円が計上された。

問題は科学振興費1兆3788億円の内容。新規事業分は4300億円程度しかなく、たとえば5Gの研究開発には100億円、デジタル田園都市構想には1000億円という具合で、みな小粒。脱炭素に向けた再生可能エネルギーや原発はどうなるのか、EV(電気自動車)やFCV(水素燃料電池車)の開発・普及は。半導体やロボットの研究開発は・・・何もわからない。

社会保障費の自然増などで、予算編成に余裕がないことは確かだ。しかし、これだけの財政支出をして、来年度の経済成長率が多少上向くだけというのでは、夢がなさすぎる。たとえば再生可能エネルギーを普及させるための電池、EV用の電池、FCV用の水素燃料電池・・・あらゆる電池の研究開発費に3兆円を使うという項目があれば、日本は電池の分野で世界一を目指す姿勢が明示される。こうした目標が示されれば、国民も夢を持てただろう。

                           (続きは明日)

        ≪27日の日経平均 = 下げ -106.13円≫

        ≪28日の日経平均は? 予想 = 上げ≫

国もカネ余り ⇒ 大型景気対策?

2021-07-28 07:22:41 | 予算
◇ 税収も予想を上回る = 財務省は20年度の決算作業を進めているが、なんと30兆円を超える膨大な予算が使い残しとなる見込み。コロナ対策として3度の補正予算を編成。20年度予算は総計175兆7000億円に達したが、使い切れなかった。無担保融資を行う金融機関への支援、GO TO トラベルなど、多くの費目で予算が余ったことになる。経験したことがないコロナ不況への対応だったとはいえ、これだけの予算未達は異常と言っていい。

一方、20年度の税収も予想を大きく上回った。財務省の発表によると、一般会計の税収は総額60兆8216億円。前年より4.1%増加した。コロナ不況にもかかわらず、過去最大の税収額となっている。最大の原因は、消費税の引き上げが年度を通じて寄与したこと。消費税収は20兆9714億円で、初めて最大の税収項目となった。

法人税収も予想以上に伸びた。総額は11兆2346億円で、前年比4.1%の増加。巣ごもり需要や輸出の増大で、主として大企業の納税額が伸長した。所得税収は19兆1898億円だが、前年比は0.1%の増加にとどまっている。法人税収の伸びに比べて、所得税収は増加しなかった。ここからも、企業が人件費を抑制したことが判る。なお相続税収は2兆3145億円で0.6%の増加だった。

予算の使い残しが30兆円以上。税収が予定を5兆7000億円も上回った。財務省にとっては、万々歳である。ところが与党は黙っていない。秋には総選挙があるから、このカネを使って「大型の景気対策を打て」という声が、早くも湧き上がってきた。本来ならば来年度予算で国債の発行を減らすことに使うべきだと主張する財務省だが、「泣く子と選挙には勝てない」とも言われる。はたして、どうなるのだろうか。

        ≪27日の日経平均 = 上げ +136.93円≫

        ≪28日の日経平均は? 予想 = 下げ≫

Zenback

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